交通事故で相手と因果関係について争いが生じてしまったときの対処法について
交通事故に遭ったときに、被害者は怪我を負ったり、車や車に積まれているものが破損したりして損害が生じますが、その損害が事故を原因とするものであるか否かについて、事故当事者間で争いが生じることがあります。
一般的な法律問題でも因果関係が争われることは稀ではありませんが、交通事故では、特に事故と損害との因果関係という点で、争いが生じることが多いです。
今回は、どのような場合に因果関係に争いが生じるのか、争いが生じるのを未然に防ぐ方法、実際に争いが生じてしまった場合などについてご説明いたします。
因果関係という言葉は、日常生活でも普通に使われますが、噛み砕いて言えば、あれ(原因)がなければこれ(結果)はなかったという関係のことをいいます。
交通事故でいえば、事故がなければ損害は生じなかったという関係です。
ただ、交通事故との関係があまりにも薄いと考えられるものも損害として認められるようですと、加害者に無限に賠償責任を負わせることになりかねないため、加害者の責任を限定する必要があるという見地から、加害者が賠償責任を負うのは、社会通念上、事故によって生じることが相当といえる損害に限られることとされています。
これが相当因果関係という考え方です。
裁判においては、事故と損害との因果関係は請求する被害者側で立証しなければならず、様々な証拠を提出して、裁判所に、被害者が受けた損害が、社会通念上、事故から発生することが相当といえるとの判断に至らせることが必要になります。
1.人的損害で問題になる因果関係
たとえば、歩行者が高速で走ってきた車に正面から衝突されて腕や足を骨折したなど、明らかに事故によって怪我が生じたといえるような場合には、事故とそれらの損害との因果関係が争われることはほとんどありません。
しかし、徐行している車にぶつけられて腕を骨折してしまったというような場合など、事故によって生じたといえるかが微妙な事案では、事故の相手やその加入する任意保険会社に事故と骨折との因果関係を否定されることがあります。
また、車同士の衝突事故で、首の痛みや違和感はあったものの、事故直後はそこまでひどい症状とは感じなかったため、特に病院にも通わずに我慢していたが、その後痛みが悪化し、手もしびれるという症状が現れたために、1週間以上経ってから病院に行ったというようなケースでは、首の痛みや手のしびれが事故とは別の原因による可能性があるとして、因果関係が否定されることが多いです。
前者の場合については因果関係が争われることを未然に防ぐことは難しいですが、後者については、事故直後にきちんと病院で治療を受けることで、容易に防ぐことができますので、たとえご自身では事故直後はそんなに症状が重くなさそうだと考えても、しっかりと病院で診察を受けるようにしましょう。
時間が空けば空くほど、事故以外の原因であるとされる可能性が高くなってしまいますので、遅くとも事故から2日以内には病院に行くことを推奨します。
次に、事故の相手の任意保険会社に事故と怪我や症状との因果関係が否定されて、治療費等の支払を拒否されてしまった場合ですが、まずは自賠責保険に対して被害者請求を行うことで、因果関係の有無の判断を仰ぎ、その結果、事故と怪我や症状との因果関係を認められれば、自賠責保険(厳密に言えば、自賠責損害調査事務所)でも因果関係を認めているとして、それを前提に任意保険会社と交渉することができます。
それでも任意保険会社が支払を拒否することもあり得ますが、少なくとも自賠責保険からは保険金が支払われますので、最低限の補償は確保することができます。
また、もし自賠責保険でも因果関係が認められなかった場合であっても、その結果に対しては、異議申立てという手続をすることができます。
その場合は、物損に関する資料やカルテ、医師の意見書などの資料をもとに、事故の態様や程度、症状の内容や経過等からすれば、事故と怪我や症状との因果関係は認められるべきであると主張して、その判断を覆すよう求めていきます。
それでも結論が変わらなければ、直接事故の相手に対して裁判を起こして、裁判手続の中で因果関係を争っていくことになるでしょう。
2.物的損害で問題になる因果関係
(1)事故と車の破損との因果関係
車同士の事故では、衝突部位の部品などの破損については事故との因果関係は容易に認められますが、事故後に車の各種の機能が正常に動作しなくなったというときに、その異常が事故によるものなのか、それとも事故以外の原因で生じたものなのかという争いが生じ得ます。
車は精密機械ですので、事故の衝撃によって内部構造に異常が生じるということは十分あり得るのですが、事故の相手の保険会社は、そう簡単にはそれらの異常について事故との因果関係を認めません。
特に新車として登録されてから期間が経過している車などは、経年による劣化で異常が生じている可能性が高いとして、因果関係を否定してくることが多いです。
車の破損については、相手の任意保険会社のアジャスターという物損に関する調査員が事故による損害かどうかの調査を行うのですが、外見上は明らかな異常が見られない内部構造の異常まで事故による損害として認められることはあまりないという印象です。
自賠責保険のある人的損害と異なり、物的損害については判断機関が存在しないため、因果関係を否定する任意保険会社との交渉で因果関係を認めさせることはかなり難しいといえます。
そのため、どうしても事故と損害との因果関係を認めさせたいということであれば、裁判を起こすという手段をとらざるを得ないでしょう。
(2)事故と車以外の物的損害との因果関係
車同士の事故では、ついつい車の破損についてのみ目が行きがちですが、事故によって車に積んでいた物が壊れてしまうという事態も起き得ます。
また、歩行者が車にぶつかったり、バイクに乗っていたところ車にぶつかられるなどして転倒した結果、着衣や所持品が破損してしまうということもあります。
このような物についても、事故による損害として相手に請求することができますが(ただし、購入時期によって減価償却は行われます)、事故から時間が経った後に、これらの物について損害が生じていたと相手やその保険会社に申告しても、他の機会に転んだり、落としたりして破損した可能性が否定できないとして因果関係が否定されることが多いです。
また、そもそも事故時にそれらを所持していたかどうか分からないとして因果関係を否定されてしまうこともあります。
そのため、被害者としては、事故に遭ったときはすぐに着衣や所持品に破損が生じていないかを確認して、破損が確認できた場合には、その破損が分かるように写真に残しておき、すぐに相手やその保険会社に申告しておくことが重要です。
また、腕時計など高価な物が破損してしまい、修理が必要となった場合には、すぐに修理の見積りをとっておきましょう。
時間が経ってから修理の見積りを取っても、修理が必要な破損部位が事故以外の原因で生じた可能性があるとして因果関係を否定されてしまうからです。
このように、一般的に事故から当然に生じるとはいえない物的損害については、初動が極めて重要です。たとえ相手やその保険会社からその損害額の支払を拒否されても、写真などの証拠として残しておくことで、裁判でも重要な証拠となります。
まとめ
以上のように、事故と損害との因果関係は、交通事故において様々な点で問題となりますが、実際に因果関係が争われた場合、証拠がなければこれを認めさせることはかなり大変です。
そのため、未然に争いを防止することのできるものについては、普段から気をつけておいていただきたいです。
それでも争いが生じてしまった場合や、未然には対処することができない因果関係に関する争いについては、ご自身で対応することは難しいと思いますので、弁護士に相談してみるのがよいと思います。
そのようなときは、まずは当事務所までお気軽にご連絡ください。
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