現場保存の重要性について解説!~適正な過失割合を定めるために~

交通事故による後遺症が残ったら?後遺障害等級の認定について解説

交通事故に遭った場合、「現場保存」は特に重要です。

もっとも、交通事故は、突発的に生じる非日常的な出来事ですので、動揺して冷静でいられないものですし、救急車で搬送され、すぐに現場を離れなければならないこともありますので、事故当日に行う「現場保存」は、可能な範囲で大丈夫です。

事故当日は、少なくとも「110番通報が必要になる。」と心得てください。

以下では、事故当日に行う「現場保存」の他に、後日ご自身でも実践できることを、広く「現場保存」の一環として、適正な過失割合を定めるために必要となる証拠とともにご紹介します。

1.客観的な証拠とはどんなものか

現場保存の対象となるもので、客観的な証拠に挙げられるものは、

客観的な証拠

  1. 映像(防犯カメラ、ドライブレコーダーなど)
  2. 道路状況(交差点か直進道路か)
  3. 交通規制(信号機や標識)
  4. 道路上の痕跡(ブレーキ痕や擦過傷、破損物の位置など)
  5. 事故車両
  6. 破損物(車両付属品や衣服など)
  7. 身体の状態(怪我をした部位)

①映像(防犯カメラ、ドライブレコーダーなど)は、事故状況を捉えたものであれば、決定的な証拠になります。

現場では、TAAMS(交通事故自動記録装置)が設置されている交差点か、コンビニエンスストアなど防犯カメラが設置されている場所がないか、周囲でドライブレコーダーを付けている車両はないかという点を確認できると良いでしょう。

②道路状況(交差点か直進道路か)や③交通規制(信号機や標識)は、数日経ってすぐに変化するものではありませんので、事故の当日に必ず写真に収めなくても大丈夫です。

しかしながら、後記の「人証」で、事故のときのご自身の認識と照らし合わせる必要がありますので、できる限り早期に思い返せるようにした方が良いでしょう。

④道路上の痕跡(ブレーキ痕や擦過傷、破損物の位置など)は、事故とは無関係の通行人や車両によって、意図せず消されてしまったり、他の痕跡と混在されてしまったりすることがありますので、現場での注意が特に必要になります。

⑤事故車両、⑥破損物(車両付属品や衣服など)などは、後日なるべく早期に、警察官や保険会社の調査員など、自分以外の方に見てもらうと安心です。

2.主観的な証拠とはどんなものか

主観的な証拠に挙げられるのは、

主観的な証拠

  1. 事故当事者の供述
  2. 目撃者の供述
  3. 警察官の供述

①事故当事者の供述は、適正な過失割合を定めるにあたっては基本となるものです。

ご自身の供述は、ただちに証拠となるようなものではなく、当初は「当事者の言い分」として取り扱われます。

その後、少しずつ客観的な証拠や、相手方の言い分が明らかになって、これらと整合する部分が、証拠に類するものと取り扱われるようになります。

そのため、事故当初に想像もできなかった点で、「当事者の言い分」に食い違いがあるということもしばしばあります。

後々決着が着くものと割り切って、事故当初には、ご自身の認識を淡々と警察官に対し説明するよう心がけましょう。

事故当日は、できる限り現場に居るうちに、警察官に対し説明をすることをお勧めします。

事故当日に説明できなかった場合でも、現場に行くことで当日の状況を思い出すことができますので、後日でもなるべく事故現場を訪れるのが良いでしょう。

①事故当事者の供述は、客観的な証拠や、相手方の言い分との整合性に着目しますので、警察官に対する説明では、記憶のあいまいなことは断定しないということを心がけましょう。

②目撃者の供述は、証拠の一つになります。もっとも、事故当事者と目撃者との間に利害関係がある場合は、決定的な証拠とまでは取り扱えないことがあります。

ご家族であるとか、同乗者であるとかというのが、典型例です。

事故当日、可能であれば、周囲の通行人や運転手に連絡先を伝えるなどして、協力を要請するのが良いです。

後日であっても、なるべく早い段階で、警察官に対し、立て看板の設置など、目撃者による情報提供を得られるような捜査をお願いすると良いでしょう。

③警察官の供述は、そもそも証拠とならないことが多いです。警察官は、人身事故の場合に事故態様を調べ、検察庁へ送致する仕事をしています。

そのため、民事事件に介入できず、当然、適正な過失割合を定めることもできません。警察官が過失割合について言及しても、「意見」として捉えるのが良いでしょう。

3.実況見分調書の取得について

人身事故での警察官の捜査では、実況見分調書が作成されます。

ご自身でも検察庁に赴いて、閲覧することが可能です。

もっとも、実況見分調書は、加害者の刑事責任の有無を判断するために必要となるものですので、加害者の刑事責任に関する処分が決するまでは、警察署や検察庁の内部資料として扱われ、閲覧できません。

実況見分調書を取得するには、警察署に照会の上、検察庁へ申請をする等、手順がありますので、弁護士にお任せいただくのが良いと思います。

4.実況見分調書で明らかになる事項と着眼点

実況見分調書は、民事事件においても重要な証拠となります。

実況見分調書は、「当事者の言い分」が記載されたものですが、事故当初の記憶が鮮明なうちに、第三者である警察官に対し説明したものであるので、証拠としての価値が高いと考えられています。

実況見分調書で、明らかになる事項は、

明らかになる事項

・道路状況(交差点か直進道路か)
・交通規制(信号機や標識)
・道路上の痕跡(ブレーキ痕や擦過傷、破損物の位置など)
・車両の進路
・衝突地点

このように、警察官立会いの下、実況見分調書が作成されていれば、客観的な事情はある程度明らかになりますので、ご安心下さい。

もっとも、実況見分調書には、事故当日のご自身の認識に限りなく近い事情が記載される必要がありますので、実況見分調書が作成される際には、十分な記憶喚起と、記憶のあいまいなことは断定しないという心がけが必要になります。

実況見分調書を見るときの着眼点は、下記の通りです。

実況見分調書を見る際の着眼点

・誰が立ち会って作成されたものか
・当事者間の位置関係とその推移
・相手方を最初に認識した地点
・危険を感じた地点
・ブレーキをかけた地点
・衝突した地点

上記のような着眼点を持って、事故状況が評価されることになりますので、実況見分調書が作成されるときには、可能な限りご自身のご記憶が正確に反映されるよう、努めていただくのがよろしいかと思います。

まとめ

本コラムをご覧になる方は、交通事故に遭って少し時間が経過したという方が多いと思います。

事故当日に、上記の認識をすべて持って、実践できることはありませんので安心して下さい。

しかしながら、警察官の捜査に頼って、後々十分な証拠が揃わなかったという例が数多く存在しますので、上記の点を広く「現場保存」の一環と捉えていただいて、ご自身で「できることはしておこう。」とお考えになる方が、少しでもおられればと願っています。

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