定期金賠償のメリットデメリットを解説!一時金賠償方式との違いとは?

1.一時金賠償方式と定期金賠償方式とは

交通事故などの不法行為を理由とする損害賠償請求の多くは、被害者側が加害者側に対して、発生した損害の一括での支払いを求める形で請求が行われます。

基本的に、これに対応して加害者側も一括での支払を行う内容での示談に応じ、また裁判でも、加害者側に一括での支払を命令する内容の判決がなされます。

これが一時金賠償方式です。

他方で、被害者が植物状態となった場合や、介護を要するほどの手足の麻痺などの重度の後遺障害が残ってしまった場合については、一定の金額を確定した期間、または不確定の期間にわたって定期的に支払うというような内容の示談や、これを命じる内容の判決がなされることがあります。

これが定期金賠償方式と呼ばれるものです。

植物状態になってしまった被害者には、将来にわたって介護が必要になるため、将来の介護費用が賠償されなければなりませんが、何十年と介護が必要になることもあり、最終的にどのくらいの介護費用が発生するのかを予測しにくいという面があります。

このような場面で生じる不都合を避けるために用いられているのが定期金賠償です。

法律上、定期金賠償を定義した条文はありませんが、定期金賠償を前提とした条文は存在するため、被害者側から定期金賠償方式での損害賠償請求が行うことも可能であり、裁判実務でも実際に行われています。

2.定期金賠償のメリットについて

(1)現実に即した適切な賠償金が算定できる

上でも少し記載したように植物状態となった場合、長期間にわたって介護費用がかかることが予想されるとしても、被害者がいつまで生きることができるのか、言い換えれば介護費用が必要な期間が最終的にどれくらいなのかを、示談時や判決時に正確に予測することはほとんど不可能です。

また賠償金が支払われた後に、賠償金算定の基礎となった事情に大きな変動が生じた場合に対処することが難しくなるので、一時金賠償方式によると、どうしても平均余命や損害額の認定に無理が生じてしまいます。

余命に関してもう少し詳しく説明すると、示談や判決により一時金賠償を受けた場合に、被害者がその金額の算定の根拠となった余命年数よりも長生きをすると、それは喜ばしいことであります。

一方で、長く生きた分だけの介護費用が事実上被害者の負担となってしまい、全体的にみれば、適切な賠償額を受け取ることができなかったということになってしまいます(もちろん、平均余命よりも早く亡くなってしまったという場合は、逆に、適切な賠償額より多くの賠償を受けられることにはなりますが)。

これに対して、被害者が亡くなるまでの期間、一定の金額を支払うとの定期金賠償方式をとっていた場合であれば、被害者がどれだけ長く生きようとも亡くなるまでの介護費用の賠償を受けることができるため、一時金賠償の場合よりも現実に即した適切な賠償金を受け取ることができるという安心感があります。

また、定期金賠償判決後の事情変更については、民事訴訟法117条で、確定判決変更の訴えを提起することができるという手当もなされています。

(2)中間利息控除されない

一時金賠償の場合、将来にわたって発生する介護費用を、示談や判決に基づく支払のときに一括で受け取るということになりますが、将来発生するはずのものを前倒しでもらう分、利息分を差し引かなければいけないことになります。

これを中間利息控除といいます。

たとえば40年分の将来介護費が発生するという前提で計算するときには、「年間介護費用×40(年)」ではなく、「年間介護費用×17.1591(40年のライプニッツ係数)」という計算方法がとられます。

ライプニッツ係数は年5%の利息分を考慮した係数であり、上の計算式でもわかるとおり、40年分の介護費用でも、額面でいえばその半分以下になるため、かなりの金額が差し引かれることになってしまいます。

これに対して、定期金賠償の場合は、中間利息控除がなされないため、実際の年数分の金額で支払われることになり、全体的に見れば、一時金賠償の場合よりも高い金額になります。

(3)早期の費消リスクの回避

一時金賠償の場合、高額な賠償金が一括で支払われることになります。

きちんとした管理のもと、賠償額を介護費用に充てられれば良いのですが、計画的に費消されない結果、被害者が亡くなる前に介護費用が尽きてしまうというようなリスクがあります。

この点、定期金賠償は、定期的に支払われることになるため、このようなリスクは極力回避することができるというメリットがあります。

3.定期金賠償のデメリット

(1)支払義務者の資力悪化に対処できない

一時金賠償の場合は、支払いの時点での支払義務者(加害者側)の資力が十分であれば、一括払いで賠償金の支払いを受けることで、その後の支払義務者の資力を心配する必要はなくなります。

これに対して、定期金賠償の場合、支払義務者が、将来きちんと定期的に賠償金を支払っていくことができることが前提となりますが、資力が悪化して支払いが困難になるというリスクもあります。

支払義務者が保険会社である場合には、ほとんど心配はないものの、倒産のリスクはゼロではありません。

万が一保険会社が倒産してしまうという事態になると、それ以降の賠償金の支払いを受けることは事実上不可能になってしまうおそれがあります。

(2)紛争の終局的な解決ができない

定期金賠償の場合は、支払いが将来にわたって継続的に行われます。

そのため、被害者側に被害感情がいつまでも残ってしまい、被害者心理として、終局的な解決を図ることができないという点が挙げられます。

4.裁判で一時金賠償を求めたが、定期金賠償判決が行われる場合

上述のとおり、定期金賠償方式には、被害者にとってメリットがある一方で、デメリットもあります。

一時金賠償方式では、先に受け取れる金額は高額になるので、被害者側としては、重度の後遺障害のケースであっても、裁判において、定期金賠償ではなく、一時金賠償を命じる判決を求めることも1つの選択肢といえます。

もっとも、このような場合に裁判所が定期金賠償を命じる判決を出すことができるかという問題があります。

この点については、少し専門的な話になりますが、いかなる形式の審判を求めるかは、当事者の判断に委ねられているという「処分権主義」に反しないかという法律上の争点です。

最高裁昭和62年2月6日判決は、「損害賠償請求権者が訴訟上一時金による賠償の支払を求める旨の申立をしている場合に定期金による支払いを命じることはできないものと解することが相当である」と判示しています。

もっとも、それ以降の下級審裁判例では、定期金賠償判決を肯定する判決も否定する判決も出ています。

この点について、裁判例では、一時金賠償方式によるか定期金賠償方式によるかは、被害者側が一時金賠償を求める合理的理由、被害者の年齢による余命の確定の困難さ、介護状態の変更可能性、支払義務者の不履行の危険性等の事情を考慮されているようです。

まとめ

以上のように、賠償金の請求を、一時金賠償方式と定期金賠償方式のいずれによることとするのかは、慎重な検討が必要となります。

また、裁判で一時金賠償を求めたいという場合には、どのような点を主張していけばよいのか、個人で対応することは困難を伴います。

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