被害者本人以外が間接損害を受けた場合の賠償は認められるのか?
基本的に、交通事故によって直接損害を被るのは交通事故に遭った被害者本人ですので、事故の相手方に損害賠償を請求することができるのも、原則として被害者本人ということになります。
もっとも、被害者本人以外の第三者についても、本人が受傷、もしくは死亡したことによって、間接的に損害を被ってしまったと考えられる場合もあります。
そこで、今回は、交通事故による受傷によって、被害者本人の近親者や、その勤務先の企業が間接的に被った損害の賠償が認められるかについてご説明します。
1.近親者の損害について
(1)近親者の固有の慰謝料
死亡した被害者本人の父母や配偶者、子どもなどの近親者は、本人に発生した慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求権を相続することになりますが、これとは別に、民法711条で、本人が「生命」を「侵害」された(死亡した)ことによって、近親者自身が被った精神的な苦痛に対する慰謝料についても、賠償請求権が認められています。
また、被害者本人が死亡しなかったとしても、極めて重度の後遺障害が残存したような場合には、近親者は死亡の場合にも劣らないほどの精神的な苦痛を受けることはあると思います。
そのような場合について、最高裁昭和33年8月5日判決は、民法711条が、生命侵害以外の場合について近親者の慰謝料をすべて否定しているものとはいえず、民法711条が適用される死亡事故に類似するものとして、近親者の固有の慰謝料の請求を認めています。
(2)近親者が精神疾患に罹患した場合
被害者本人が死亡した精神的なショックで、近親者がPTSDなどの精神疾患に罹患した場合、理論上は、近親者の固有の慰謝料のみならず、精神疾患についての治療費や傷害慰謝料、休業損害、後遺障害慰謝料、後遺症による逸失利益などの損害の発生も考えられます。
しかし、これらの損害については、治療費などの実費を除き、一般的には交通事故との間の相当因果関係は認められないと判断される傾向にあります。
この点に関して判断した裁判例として、神戸地裁平成15年3月28日判決があります。この事案は、息子の死亡事故によって、母親が精神的なショックで、PTSDに罹患して、精神科にも通院していたというというものです。
この事案において、裁判所は、母親が賠償請求したPTSDに関する傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益について、母親が何らかの精神疾患に罹患していたとしても、それらの損害と息子の死亡事故との相当因果関係は認められないと判断しました。
もっとも、母親が精神科へ通院を継続しなければならないほどの大きな精神的苦痛を受けていることについては、母親の固有の慰謝料の算定に当たって十分に考慮しなければならないとして、精神疾患に罹患していない父親の固有の慰謝料よりも大幅に増額した慰謝料を認めています。
このほかの多くの裁判例でも、被害者本人の近親者が精神疾患に罹患した場合については、精神疾患により生じた損害そのものを認めるのではなく、近親者固有の慰謝料の増額事由として認められています。
2 企業損害について
(1)企業損害とは
企業の役員や従業員等が、交通事故によって死亡、もしくは傷害を受けたことによって企業の収益が減少した場合等に生じた損害を、企業損害といいます。
企業損害は、直接被害を受けた役員や従業員の損害ではなく、あくまでも企業に生じた損害となります。
(2)企業損害は認められるか
本人が死亡や受傷によって働けなくなった影響で、売り上げが減少してしまったことで生じた損害については、実務上、原則として企業の賠償請求は認められませんが、かなり限定的な場合にのみ、認められています。それがどのような場合かというと、企業と被害者である個人との間に経済的同一体の関係、つまり、企業といっても個人事業とほとんど変わらないような業態である場合です。
最高裁昭和43年11月15日判決は、このような考え方のもと、いわゆる個人会社で、被害者本人以外には、会社の機関として代わりとなるような人がおらず、企業と本人とが経済的に一体をなしている、つまり財布が共通しているような場合について、企業損害を認めました。
ただ、裁判例の傾向を見ると、企業損害の要件はかなり厳格に見られており、上記の最高裁の事案のような事情がなければ、企業損害はかなり認められにくいようです。
まとめ
以上のように、交通事故が起こった場合、被害者本人だけでなく、近親者や勤務先の企業の損害も認められる場合もありますが、具体的に、いかなる場合に請求が認められるのか、どれだけの損害が認められるのかなどを個人の方が判断するのは困難です。
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