高速道路上における事故について|ケース別に解説(その1)

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
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高速道路は、車両のみが走行可能な道路で、基本的に一方通行であり信号もありません。

ですので、一般道路と比べて事故が発生する確率は低いといえます。

しかし、高速道路ではスピードが上がっているため、事故が起きてしまったらその被害は大きくなります。

他の自動車も巻き込む大きな事故にもなりかねません。

そうすると、当事者の過失割合が賠償金額に大きく影響してきます。

1.高速道路と一般道路の違いとは

交通事故における過失割合は、道路交通法など法律上の義務に違反しているかどうかを基礎に考えられています。

そこで、まずは高速道路上における運転者の法律上の義務について、一般道路との違いにも触れながら説明します。

道路交通法は、高速自動車国道等における自動車の交通方法等の特例を定めており、高速自動車国道及び自動車専用道路(以下では、併せて「高速道路」といいます)における自動車の交通方法等について、一般道路とは異なった法規制をしています。

一般道路では、人や車両(自動車のほか自転車や台車も含みます)の混在が予定されており、高速走行を行うことのできる環境の維持よりは、むしろ、 人と車両又は車両同士の接触を回避することが中心に考えられています。

これに対して、高速道路では、一般道路とは異なって自動車のみの通行を予定する道路であり、一般道路よりも高速での走行が許容されているため、そのような走行を前提とした上で 高速道路における自動車の安全かつ円滑な走行を確保することが考えられており、以下のような特例が設けられています。

特例

  1. 最低速度を維持する義務(道路交通法75条の4)
  2. 横断・転回・後退の禁止(同法75条の5)
  3. 本線車道通行車の本線車道進入車に対する優先(同法75条の6)
  4. 本線車道出入時の加速車線・減速車線通行義務(同法75条の7)
  5. 駐停車の原則禁止(同法75条の8)
  6. 燃料・冷却水・オイルの量、貨物の積載状態を点検する義務(同法75条の9)
  7. 本線車道等に停止したときに停止表示を行う義務(同法75条の11第1項)
  8. 本線車道等において運転できなくなったときの退避義務(同法75条の11第2項)

そして、交通事故における過失割合の考え方については、これらの規制を考慮した上で、事故態様を一般化類型化して、基本的な過失割合が定められています。

もっとも、渋滞などで高速走行が不可能な道路状況下で発生した事故については、そのまま適用するのではなく、事案に応じて適宜修正する必要があります。

2.高速道路上の事故の過失割合について

では、具体的な事故態様から、高速道路上の事故の過失割合をいくつか見ていきましょう。

(1)合流地点における事故

A:B=30:70

高速道路においては、本線車道に入ろうとする自動車(合流車B)は、本線車道を通行する自動車(本線車A)の進行を妨害してはならいとされています(道路交通法75条の6)。

したがって、基本的には合流車の過失の方が大きくなります。

他方、本線車としても、合流地点では合流車が本線車道に入ってくることを当然に予想することができ、適宜減速等の措置をとることで合流車との衝突を回避することが可能であるので、本線車にも前方注視義務違反があると考えられています。

したがって、この場合の過失割合は、 A:B=30:70となります。

もっとも、合流車は加速車線において加速して合流しなければならないため、本線車によりも20km以上遅い速度で本線車道に入った場合などは、合流車にさらに1割から2割の過失が加算されます。

なお、合流車Aが自動二輪車だった場合はA:B=20:80、合流車Bが自動二輪車だった場合はA:B=40:60となります。

(2)進路変更に伴う事故

進路変更に伴う事故については、下記に分類されます。

進路変更に伴う事故の分類

  1. 走行車線から追越車線への進路変更
  2. 追越車線から走行車線への進路変更
  3. 走行車線から走行車線への進路変更(片側3車線の場合)

#1:走行車線から追越車線への進路変更

A:B=20:80

車両は、進路を変更した場合にその変更後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがある場合には、進路を変更してはなりません(道路交通法75条の2の3、26条の2第2項)。

そのおそれのある前車の進路変更は原則として許されないので、過失割合は、基本的に後続車に有利に考えられます。

他方、前方を走行する車両が進路変更を行うにあたって合図を行っている場合、後車としても、前車の進路変更を察知して適宜減速等の措置をとることにより衝突を回避することができます。

これらを考慮して、過失割合は、A:B=20:80となります。

なお、走行車線から追越車線に進路変更しようとする場合、追越車線を走行する自動車の方がより高速であるのが通常であるので、一層の注意を払うことが必要です。

そこで、以下のⅱ追越車線から走行車線への進路変更や、1.走行車線から走行車線への進路変更の場合と比べて進路変更車の過失が大きくなっています。

#2:走行車線から走行車線への進路変更と追越車線から走行車線への進路変更について

A:B=30:70

この場合も、上と同様、後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがある場合は進路変更が許されず、他方で後続車も前方の車両の進路変更を察知して減速等の措置をとるべきと考えられます。

したがって、過失割合は、A:B=30:70となります。

(3)追突事故

高速道路上の追突事故は、以下のように様々な状況により発生する場合があります。

高速道路による追突事故の発生状況

  1. 過失等により本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故
  2. 過失なく本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故
  3. 急ブレーキをかけた自動車に対する追突事故

高速道路においては、法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するため一時停止する場合のほか、原則として駐停車してはなりません。

故障その他の理由により駐停車することがやむを得ない場合に限って、十分な幅員のある路肩等に駐停車することが許されているにすぎません(道路交通法75条の8)。

また、本線車道において運転することができなくなったときは、速やかにその自動車を本線車道以外の場所に移動するため必要な措置をとらなければなりません。

したがって、本線車道に自動車を駐停車させた場合は、一般道路よりも事故発生の危険が高く、前車の過失が相当大きくなります。

他方、後車も、前方を注視していれば、駐停車中の自動車を発見することは必ずしも困難ではなく、追突を回避することが十分可能であると考えられます。

したがって、後車にも過失は認められます。

#1:過失等により本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故

A:B=60:40

①の駐停車した際の過失等とは、例えば、事前の整備不良によるガス欠・エンジントラブル、自己に過失のある先行事故等により運転に支障を来たして駐停車した場合をいいます。

また、退避措置や停止表示器材の措置が可能であったにもかかわらずこれを怠った過失があることを前提としています。

このように本線車道に自動車を駐停車させた場合は、一般道路よりも事故発生の危険が高く、前車の過失が相当大きくなります。

したがって、過失割合は、A:B=60:40となります。

#2:過失なく本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故

A:B=80:20(道路交通法75条の11違反あり)
A:B=100:0(道路交通法75条の11違反なし)

②は前者にそのような過失がない、例えば、自己に過失のない先行事故等によって本線車道に駐停車した場合です。

駐停車したこと自体については過失がないので、①の場合に比べて過失は小さくなります。

しかし、被追突車が退避または停止表示器材の設置を怠った場合、道路交通法75条の11に違反することになりその点について過失が認められます。

したがって、道路交通法75条の11違反がある場合の過失割合は、A:B=80:20となります。

他方、道路交通法75条の11の違反がない場合(ここでは、退避することが不可能で、かつ、停止表示器材を設置することができない状況で追突事故が発生した場合も想定しています)には、被追突車には駐停車したことについて過失はなく、駐停車後の対応にも過失はありません。

したがって、この場合の過失割合は、A:B=100:0となります。

#3:急ブレーキをかけた自動車に対する追突事故

A:B=50:50

高速道路においては、時速80kmを超える高速度の走行が許容される一方、本線車道での駐停車が原則として許されていないので、前者が危険防止の必要もないのに急ブレーキをかけた場合の危険は一般道路に比べてはるかに大きいといえます。

他後車にも十分な車間距離の保持と前方の注視が要求されますが、高速道路においては、車の流れに従った円滑な走行が一般道路よりも強く期待されるので、前者の予想外の急ブレーキが事故を引き起こす可能性は大きいです。

ですのでこの場合は、一般道路に比べて、前者の過失が重くなります。

したがって、過失割合は、A:B=50:50となります。

まとめ

高速道路上の交通事故は、合流地点の車線変更や急ブレーキによる追突など事故状況も様々です。また、一般道路にはない特別な規制があるため、過失割合の考え方も一般道路とは異なってきます。

高速道路ではスピードが上がっているため、事故の被害が大きくなりがちです。

賠償金額も大きくなることが多いですが、その分過失割合の影響も大きくなるでしょう。

高速道路上の事故に限りませんが、交通事故に遭い、過失割合で納得がいかない場合には、是非当事務所にご相談ください。

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
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