変形障害における労働能力喪失率とは?後遺障害についても解説

1.後遺障害とは

後遺障害とは、必要な治療を行ったにもかかわらず完治せずに残存してしまった障害のことです。

これらは、一般的に労働能力の喪失を伴うとされています。

たとえば、むちうち受傷後に頚部に根強い痛みが残ってしまった場合には、その痛みのせいで今後仕事に支障が生じるでしょう、という考え方です。

そして、これによって将来の収入にも影響が出るため、これを補填するものが逸失利益というものです。

2.労働能力喪失率について

交通事故による後遺障害を判断するのは、まずは自賠責保険になります。

自賠責保険は、労災保険の後遺障害等級を準用しており、この等級表には下図の通り、各等級に労働能力喪失率が定められています。

障害等級 労働能力喪失率
第1級 100%
第2級 100%
第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%

多くの場合、この表に記載されている労働能力喪失率を参考に損害額の認定がされることになりますが、後遺障害の内容によってはそうでない場合があります。

後遺障害等級には、各部位の変形障害が載っています。

たとえば、鎖骨骨折により曲がって癒合してしまった場合には、以下に該当する可能性があります

12級5号 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤に著しい変形を残すもの

また、背骨の圧迫骨折等の場合には、その変形の程度によって以下に該当する可能性があります。

6級5号 脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの
8級2号 脊柱に運動障害を残すもの(脊柱に中程度の変形を残すもの)
11級7号 脊柱に変形を残すもの

もっとも、これらに代表される変形障害は、必ずしも上記の等級表に対応する労働能力喪失を認められない場合があります。

これは、「変形しているだけであれば、仕事に支障がないのではないか」と考えられてしまうためです。

たとえば、8級2号に該当する場合、等級表上は45%の労働能力喪失があると考えられますが、加害者側保険会社は5%や14%など、著しく低い労働能力喪失率しか認めないと主張してくることが珍しくありません。

3.裁判例ではどのようになっているのか

この点の裁判所の考え方も様々です。

直近の裁判例に限ってみると、8級の場合でも20%から25%の労働能力喪失と認定している例が多いようです。

しかし、適切な主張と立証ができれば、等級どおりの能動能力喪失が認められる場合もあります。

さいたま地裁平成27年4月7日判決は、8級の脊柱変形障害について45%の労働能力喪失を認めました。

認定の骨子は以下の通りです。

「原告は、平成25年4月から平成26年4月まで、本件訴訟の準備等のため休学し、日本に戻り、平静25年6月から8月まで、週5日間、1日8時間、1時間に1回休みを取りながら、電話オペレーターの派遣従業員として働いた」

「原告は、留学中、アルバイトをし、カフェテリア等で働いたが、重いものを持つことができないこと等のため辞めて、現在は、週5日、1日に3、4時間、大学の図書館でアルバイトをしている」

「原告は、左半身の腰あたりから足の指先にかけてしびれ、胸椎の部分(背中)の鈍痛がある。同じ姿勢で座っているのは1時間程度が限界であり、大学の授業でも1時間程度経過したところで中座している。また、20分位立っていると愛が張った感じになる。自動車の運転は、40分程度で腰が痛くなる」

「原告は上記の認定のとおり、アルバイト及び大学での授業に支障を生じているのであり、胸椎圧迫骨折後の脊柱の変形が器質的以上により脊柱の支持性と運動性の機能を減少させ、局所等に疼痛を生じさせ得るものであることを考慮すると、原告の労働能力喪失率は、後遺障害8級に相当する労働能力喪失率45%と認めるのが相当である」

本件裁判例は、被害者である原告の、日常生活やアルバイト等における支障を細かく認定した上で、これらの支障が生じている以上、労働能力喪失率は低くないと判断し、45%が相当と判示しました。

これは、被害者側の立証活動が功を奏した例であり、非常に参考になる裁判例です。

まとめ

上記の通り、変形障害によって労働能力にどのような影響が出ているかは、事案によって様々です。

しかし、保険会社は一般に、具体的な事案に応じて柔軟な認定はしない傾向にあります。

変形障害は、画像上や外見上から判断がしやすいため、比較的認定されやすい後遺障害です。

しかし、認定された結果、適切な賠償の算定が受けられるかと言うと、かなり難しい障害といえます。

交通事故によって変形障害が残存してしまった場合には、適切な賠償を受けるために詳細な事実の主張・立証が必要となりますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

交通事故でこんなお悩みはありませんか?

交通事故に遭ってしまったけど、
保険会社・相手方とどんな風に対応
すればいいのかわからない・・・

後遺症があるためきちんと賠償を
受けたいけど、後遺障害認定申請や
示談交渉などさっぱりわからない・・・

  • ✓ 事故発生直後からのご相談・ご依頼に対応しています。どの段階の方でも安心してご相談いただけます。
  • ✓ 治療中のアドバイスから後遺障害認定申請、その後の示談交渉や訴訟対応までサポートいたします。