裁判例
Precedent
事案の概要
夫婦は、平成10年に婚姻した。
婚姻時、妻に連れ子がいたため、夫はその子と養子縁組した。
その後、妻は夫の暴力行為や女性関係に耐えかね、離婚について話し合いをした結果、夫婦は別居を開始することとなった。
妻は、東京家庭裁判所に夫との離婚及び夫と自身の連れ子の離縁を求める調停を申し立てたが、不成立となったため、訴訟を起こした。
<判決の内容>
妻の連れ子と夫との養親子関係が円滑ではなく、養子縁組の前提となった夫婦の婚姻関係が破綻していることは、既に認定、判断したとおりであり、妻の連れ子と夫との間には、民法814条1項3号に定める縁組を継続し難い重大な事由があると認められる。
したがって、夫との離縁を求める妻の連れ子の請求は理由がある。
既に認定した事実関係によれば、妻の連れ子と夫との養親子関係が円滑でなかったことについては、必ずしも夫に責任があったとは認められないが、養子縁組の前提となった妻との婚姻関係の破綻については、夫に責任があることは前記のとおりであるから、夫は、妻の連れ子に対し、離縁に伴う慰謝料を支払うべきである。
その額は、本件に顕れた一切の事情を勘案し、50万円と認めるのが相当である。
まとめ
夫婦の離婚時に、一方の連れ子の養育費を負担すべきかどうかは、養育費の支払義務のある者が、連れ子に対し、扶養義務を負うかどうかによって異なります。
そして、扶養義務を負うかどうかは、婚姻時に結んだ養子縁組を、離婚時に解消するか否かによって変わることになります。
本件では、離縁によって夫は妻の連れ子に対し、扶養義務がないことを前提に審理がされていますが、必ずしも離婚と離縁が同時になされなければいけないわけではありません。
また、夫に妻の連れ子に対する扶養義務はないとしても、妻は、養育費の支払いを求める代わりに、連れ子に対する慰謝料請求を求めていますので、実質的には、夫の連れ子に対する責任負担が認められた結果となっています。
このように、連れ子がいる場合の離婚と離縁は、それぞれ密接に関連し、主張と判断が共通する場合が多くあります。
連れ子への責任を問いたい方も、問われる方も、訴訟の進め方について、まずはご相談ください。