裁判例
Precedent
事案の概要
夫婦は長女をもうけたものの、約4年の婚姻期間を経て、別居に至った。
別居の原因は、夫が同窓会で再会した女性Aと交際していることが妻に発覚したことにある。別居後、夫は、妻に対し、自宅の家賃を支払えないのであれば退去するよう要求した。
<争点>
夫の経済的暴力は、不貞行為の慰謝料請求に影響を及ぼすか
<判決の内容>
夫が女性Aと不貞行為をし、妻及び長女と別居を開始するまでの婚姻期間の長さや、夫婦の間には子供がいたこと、前記認定説示のとおり、妻が夫との関係修復に向け努力していたにもかかわらず夫がこれに応じようとしなかったこと等の一切の事情を考慮すると、妻が夫と女性Aの不貞行為により被った精神的苦痛を慰謝するには、150万円が相当であるというべきである。
なお、妻は、夫が経済的暴力を振るったことも慰謝料額算定の一事由であるかのような主張をしているが、仮にこれが認められるとしても、その大部分は夫と女性Aの不貞行為と時期的に重なるから、それは妻が夫と女性Aの不貞行為により夫と離婚するに至ったことについての慰謝料額の算定により評価し尽くされているというべきである。
まとめ
配偶者の一方が不貞に及び、夫婦が別居に至ってしまった場合、二重の住居費がかかってしまう都合上、夫婦の家計は逼迫してしまいます。
このような状況に置かれた場合に、夫婦の家計が脅かされてしまうという不安感で、他方配偶者と不貞相手との間の感情的対立は一層深まってしまいます。
経済的暴力という法的な概念はありませんが、一方的な理由で生活に窮する状態を作ってしまった場合、慰謝料の増額が認められることがあります。
本件では、夫婦の不和や別居の原因が不貞行為それ自体に認められることから、経済的暴力による慰謝料の増額は認めませんでした。
そのため、経済的暴力の有無は、慰謝料額を定める場合の本質的要素とはならないといえます。
このように、夫婦の生活費でお困りのときでも、慰謝料の金額に大きな影響を及ぼさないことを考えると、婚姻費用にて夫婦できちんと話し合いを重ねるべきということになります。
ご相談いただければ、現在どのようなことでお困りになっているのか、その対処法は何かなど、詳しくお話をさせていただきます。