裁判例

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離婚問題
内縁関係②~誰が本妻なのか~(福岡家庭裁判所小倉支部平成52年2月28日審判)

事案の概要

内夫は本妻と婚姻し、二人の子をもうけた。

本妻は、入院療養を余儀なくされ、内夫は幼児の世話や店番のため内妻を雇った。

内妻は、内夫の下、住込みで働くようになり、家事や内夫と本妻の子の育児を行い、事実上の夫婦として同棲生活をするに至った。

その後、内夫と本妻は離婚したが、嫉妬深い内夫の性格もあって、内妻と内夫の関係は次第に希薄となっていった。

内妻は、内縁関係解消に伴い、内夫に対し、財産分与を求めた。

<争点>

「重婚的内縁関係」にあった期間に築いた財産の分与は認められるか

<審判の内容>

内妻と内夫との内縁関係は内夫と本妻との離婚までの間は、その動機理由本妻の感情如何にかかわらず社会通念上許されざる関係であり、法律的に内妻内夫双方にとつて法律上保護さるべき利益を肯定することはできないとするのが原則であろう。

しかし、ともかくも内妻の内夫とその子らに対する献身的努力と財産形成に対する大きな寄与の事実は否定することはできず、病気のためほとんど妻としてまた母親として内夫とその子らの面倒をみることができず同居もかなわなかつた本妻にしても内妻に一切を任せざるをえないやむをえない事情から内妻と内夫との関係を黙認していたばかりか、その状態に甘え内夫との夫婦としての正常な状態維持に積極的態度を示さなかったことが内妻をして内夫との関係を抜きさしならぬものへと進めてしまつたものともいえる。

内夫も、本妻との関係を維持しながら一方では内妻と夫婦関係を続け対外的には本妻よりも内妻の方が妻と認められる状態を作出したにもかかわらず些細なことから長年にわたる内妻との関係を断ち内妻を放置してかえりみない。

社会の許さない内縁関係であつたにしても本妻との離婚によって内妻との内縁関係はともかくも形式的にも許される状態になっていたし、内夫が内縁関係を続行することができないようにさせるについての合理的理由を肯認できない。

かくて現在内妻と内夫とが内縁関係を解消していることは明らかであり、その責任は内夫にあるものと認められる。

そして上記各事情を斟酌するときは、財産分与として、内妻に対しては土地を取得させるほか、内夫から内妻に対し金200万円をこの審判確定の日の翌日から支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を付して支払うを相当と認める。

まとめ

本件のように、一方で婚姻しながらも、他方で内縁関係にある別の異性もいるとうい状態を、内縁関係にある異性の立場から、「重婚的内縁関係」と呼びます。

あまり聞きなれない言葉ではありますが、「重婚的内縁関係」は、現実には至るところで散見されるように思えます。

このような「重婚的内縁関係」においては、一般的に、財産分与すべき財産(内縁関係中、お互いの協力をもって共同で築いた財産)は認められません。

本件は、内妻の家庭内・仕事上の両面での献身的な努力が認められ、内縁関係にあった男女間での財産分与が認められた異例の審判であるといえます。

内縁関係だから財産分与は得られないと諦めることなく、ご相談時に生活環境などを詳しくお聞かせください。

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