裁判例

Precedent

離婚問題
面会交流の条件について定めた裁判例②~子供の成長を写真で確認したい~

面会交渉の条件について定めた裁判例②

(東京家裁平成27年2月27日判決)

<事案の概要>

同居時、夫にDVが認められた。

夫から妻に対して面会交流を求めたものの、妻は、自らが監護する未成年の子ら(別居当時、長男は三歳、二男は一歳五か月)は、長年の離婚係争に疲弊し、うつ症状を発症している妻を目の当たりにし、夫に対するマイナスイメージを持っていること等を挙げ、夫に面会交流の機会を与えること自体が、子の福祉を害すると主張した。

<争点>

面会交流を認めるべきか、また、認めるとしてもどのような条件を付するべきか。

<判決の内容>

妻が未成年者らを連れて家を出て、夫と別居するに至っているが、別居当時、長男は三歳、二男は一歳五か月であり、別居から約三年六か月以上が経過しているため、そもそも二男については、夫を父として認識・記憶しているかどうかすら怪しく、また、長男については、夫に関する記憶があいまいなものになっている可能性があるほか、同居中の夫の妻に対する態度や物にあたる場面を目の当たりにしたことや、妻が、夫との長年にわたる裁判等のストレスにより、心的外傷後ストレス障害(心因反応)との診断を受け、現在も通院を続けている様子を間近に見ることなどによって、(妻が主張するように)長男が夫に対してマイナスイメージを有しているとしても不自然ではない。

妻の要望を拒絶し、妻を激しく非難する夫の姿勢は、同居中の夫の妻に対する姿勢とも重なるものであり、このような夫の姿勢が妻に強いストレスを与え、妻を心的外傷後ストレス障害(心因反応)による通院治療を要する状態に追い込んでいるということもできるのであって、夫がこのような姿勢を維持する現状において、妻に夫とのやりとりを前提とする面会交流に対する協力を求めることは無理を強いるものといわざるを得ない。

このような未成年者らの置かれている状況に照らしても、無理な面会交流の実施は避けるべきといわざるを得ない。

解説

本件では、夫のDVや妻の精神状態を考慮し、夫と子らの面会交流自体が認められるかという点が争点になりました。

子が年少であれば、監護をする妻の精神状態に影響を受けやすいことは容易に想像できることから、裁判所は、「子の福祉」を考慮し、夫を子に会わせるべきではないとの判断を下しました。

本件で特徴的なことは、家庭裁判所調査官が、“面会交流を実施すべきではないと判断するほどの未成年者側の事情は存在しない”と結論づけたにもかかわらず、裁判官が、面会交渉を実施すべきではないとの判断を下した点にあります。

このように、裁判所内部にあっても意見が分かれるほど、夫の妻に対する肉体的・精神的暴力が、子の発育に影響を与えるかという点は、曖昧で抽象的な総合的判断が求められるものといえます。

また、夫側からすると、直接の面会交渉が認められないにしても、間接的に子の成長を確認する、「子の写真の提供」という方法を勝ち取ることができる場合もあることがわかります。

関連した裁判例
離婚問題

不貞女性への報復と不法行為(東京地方裁判所平成27年6月3日判決)

不貞女性への報復と不法行為(東京地方裁判所平成27年6月3日判決)

不貞女性への報復と不法行...

離婚問題

離婚と生命保険~離婚後の生命保険金の行方~(東京地方裁判所平成28年7月21日判決)

離婚と生命保険~離婚後の生命保険金の行方~(東京地方裁判所平成28年7...

離婚と生命保険~離婚後の...

離婚問題

婚約破棄②~破棄の理由、損害額~(東京地方裁判所平成28年3月25日判決)

婚約破棄②~破棄の理由、損害額~(東京地方裁判所平成28年3月25日判...

婚約破棄②~破棄の理由、...