裁判例
Precedent
事案の概要
5歳の子がいる夫婦であり、夫は運送業に従事し、妻は専業主婦である。
妻は、育児やしつけを怠らなかったが、夫婦は、ささいなことでの口論が多くなり、妻は、離婚したいと口にするようになった。夫は、子のために離婚したくないとの考えから、妻の人格を非難する言動を繰り返し、妻との夫婦関係を修復する具体的方策も持ち合わせていなかった。
妻は、夫に手紙を渡して別居を申し出て、子を連れて妻の実家に帰った。
妻は話合いのために夫の実家を訪れ、一時的に子を夫の両親に預けたものの、その後、夫に子の引渡しを拒否され続けた。ついには子の監護に関する処分の申立てや人身保護請求を経て、子の引き渡しをめぐり夫婦間の紛争は激化した。
<争点>
婚姻を継続し難い重大な事由があるか否か
<判決の内容>
夫婦の婚姻関係は、両者間の価値観の相違、性格の不一致により、回復することが困難なほどに破たんしていることが明らかであり、婚姻を継続し難い重大な事由があるというべきである。
なお、夫は、妻には虚言癖があり、情緒不安定であると主張するが、妻には、長女の養育に支障を生ずるような性格上の問題があると認めることはできない。
まとめ
性格の不一致のみにより、婚姻を継続し難い重大な事由があると判断されることはほとんどありません。
ただ、本件のように、性格の不一致を主たる原因として、婚姻を継続し難い重大な事由が認められる事例は存在します。
性格の不一致が離婚原因として取り上げられる場合、裁判所においては、性格がどのように異なるかということを審理するよりも、夫婦関係の修復の余地があるかどうかという点が重点的に審理される傾向があります。
本件でも、子の引き渡しをめぐって夫婦間の紛争が激化した経緯があります。
最終的に、裁判所は、子の引き渡しに関する紛争の経過も考慮し、夫は、子に対する愛情はあるが、妻に対する愛情はないとの判断を下しています。
性格の不一致が問題となる離婚裁判では、単に価値観や性格の相違が判断されるわけでなく、将来にわたって夫婦関係が修復される可能性があるかどうかという点に関する主張がとても重要です。
どのような事情が、判断に影響するものか、是非、離婚を切り出す前にご相談いただければと思います。