裁判例

Precedent

フランチャイズ
加盟店の商圏(営業エリア)の保護(平成18年5月15日東京地裁判決)

事案の概要

Yは、ゴルフ等のスポーツ用品の販売、レンタル、買取に関するフランチャイズチェーンを営む本部である。

Xは、Yと、フランチャイズ契約を締結し、ゴルフクラブの販売、買取等を行う店舗を出店した。

その後、YがXの店舗の近隣に、他の加盟店の出店を許したとして、XはYに対し、損害賠償を請求した。

<判決の概要>

Xは、Yから交付された立地診断報告書の記載を根拠に、商圏の範囲内で他の加盟店を出店させない義務を負うと主張するが、同報告書は、複数の要素を数値化することで店舗の立地を総合的に評価することを目的としたものであり、YがXの商圏の範囲内で他の加盟店を出店させない義務を負うものではない。

また、Yの営業戦略にとって重大な制約を課すことになる義務(Xの近隣に他の加盟店を出店させない義務)について、基本契約であるフランチャイズ契約の契約書に規定がないということは取引通念上考えにくく、フランチャイズ契約の付随的義務として上記義務が存在すると解することはできない。

(YがXの店舗の近隣に他の加盟店の出店を許すことでXの経営が悪化することを認識していたにもかかわらず、YがXに対して負う指導援助義務を怠ったとの主張について)Yは、Xの店舗の近隣に他の店舗が出店した後も研修を実施し、Xの店舗を訪問し、個別指導を行っていることから、一定の指導及び援助が行われており、その内容は一応の合理性を有する。

以上より、Xは、YがXの店舗の近隣に他の加盟店の出店を許したことを根拠に、損害賠償請求をすることはできない。

まとめ

本件は、加盟店が、自らの店舗の近くに他の加盟店を出店させることを許した本部に対し、①本部が加盟店の商圏を保護する義務や、②近隣への出店によって加盟店の売上が減少しないように指導援助する義務に違反するとして、損害賠償を求めたものです。

裁判所は、①については、加盟店の商圏を保護する内容の契約は本部の出店の自由を制約する重大なものであるから、通常契約書に記載されているはずであるがそれが記載されていないこと等を根拠に、そもそも本部がかかる義務を負わないと判断し、②については、一応の指導援助義務を履行しているとして、加盟店の請求をいずれも認めませんでした。

一般的に、加盟店の商圏を保護する内容が契約書に記載されていない以上、加盟店の近隣に、本部の直営店や他の加盟店が出店しないことが保障されるものではないと考えられており、この裁判例も、このような一般的な考えに沿った判断をしています。

加盟店の商圏の保護が十分になされていないことが示された例といえるでしょう。

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