裁判例
Precedent
事案の概要
Yは、持ち帰り弁当の販売事業に関するフランチャイズチェーンを営む本部である。
Xは、Yと、一定のエリアで同業のフランチャイズチェーンを営むことを内容としてフランチャイズ契約を締結した。
XとYとの間の契約では、契約期間の定めがあったものの、その契約期間満了後も、更に期間を定めて契約が更新されていた。
しかし、Yが、Xに対し、更新拒絶の意思表示をしたため、Xはその更新拒絶の有効性を争った。
<判決の概要>
長期間にわたり取引関係を継続することが当初から予定されているフランチャイズ契約においては、その関係が更新の繰返しによって継続され、当事者もそれに基づいて人的物的に多大の投資を重ねて、事業を展開し、拡大を図るのが通常であり、このような契約においては、所定の契約期間が満了にするに当たり更新拒絶の意思表示がされた場合であっても、当事者の投資等を保護し、継続的に事業を展開することに対する期待についても一定の法的保護を図ることを要する。
したがって、更新拒絶の意思表示と期間の満了により当然に契約関係が終了するのではなく、信義誠実の原則による一定の制限があり、更新を拒絶することについて正当な事由がある場合に限り期間満了により契約関係が終了すると解するのが相当である。
そして、この場合の正当な事由の有無については、更新に関する約定の内容、従前の更新の経緯、契約の目的内容と実情、更新拒絶の経緯と利湯その他の諸事情を総合的に考慮して、信義則上の相当性の観点からこれを判断するのが相当である。
本件では、当初の契約期間は3年又は5年であるものの、自動更新する方法などの形式で更新が重ねられ、同一内容の契約関係が20年以上にもわたって継続されていた。
また、XとY間のフランチャイズ契約では、Yを本部、Xを加盟店とする通常のフランチャイズの側面があるとともに、Xは一定のエリアでフランチャイズを営むことを認められており、言い換えれば、Xは、一定のエリアにおいては、Xの本部としての権限と義務があるものとして取り扱うものであった。
そのため、XとYとの間において、Yのノウハウ等をXに提供するというYの本部としての役割が相対的に後退していた。
さらに、Xは、20年以上にわたって、一定のエリアにおける本部としてとしての地位にあり、事業に関する広範な裁量を認められていたことから、事業運営に関するノウハウの企画、開発、教育指導能力も、Yを凌駕するものがあった。
加えて、XはYの商標から派生する商標をYに協議しないまま商標出願して、Yに対してその使用料を請求する等の争いが生じていたことは、XとYとの間の信頼関係を破壊しかねないものであった。
以上のような状況を考慮すると、YがXに対して契約の更新拒絶をした時点では、既に両当事者の信頼関係は著しく破壊され、契約に基づいて共同して事業を継続的に推進していくことはもはや困難な状況となっており、そのような認識に基づく本件更新拒絶には信義則上正当な事由があったものと認めるのが相当である。
まとめ
本件は、フランチャイズ契約の更新拒絶に当たり、それが正当な事由に当たるものかどうかの判断基準を具体的に示したものです。
この他、ロイヤリティの支払遅滞や不払いが、契約の更新拒絶をする正当な事由に当たるかどうかが争われる例も多くありますが、ロイヤリティの短期間の支払遅滞や少額の不払いでは信頼関係の破壊がないとして更新拒絶が認められない例も多くあります。
更新拒絶を認めた例として、加盟店のロイヤリティの不払い等の債務不履行が3回にも及び、本部が業務改善を都度促したにもかかわらず5年間ロイヤリティを支払わず、不払いの合計が1700万円以上に及んだ場合―東京地裁平成18年2月21日判決-があります。