裁判例
Precedent
事案の概要
大手コンビニチェーンのフランチャイズ契約を締結した加盟店Xらが、本部Yに対し、違法な会計処理をしていること、不当な指導をしていること、高額な違約金によって契約を拘束していること(解約を制限していること)等を根拠に、フランチャイズ契約は無効であると主張して、損害賠償等の支払を求めた。
<判決の概要>
本部と加盟店とで締結されたフランチャイズ契約書において、加盟店がフランチャイズ契約を解除した場合には、それが「やむを得ない事由のない場合の中途解約」にあたるときは、平均チャージの6か月ないし10か月分といった中途解約金をしはらうこととされており、そうした違約金の定め方があることが、取得額の非常に低いあるいは赤字の加盟店が契約から離脱することを妨げる結果となる場合があることは想像に難くなく、この違約金を課すことによって守られる本部の利益と、違約金を課されることによって加盟店が被る損失とが著しく均衡を欠き、この規定にしたがって違約金の支払いを求めることが公序良俗に反する場合があることは否定できない。
しかしながら、加盟店が自由に廃業できるとなれば、本部が損害を被ることも事実であるから、安易な廃業の抑制という理由にも一定の合理性があり、かかる違約金の定めが直ちに公序良俗に反するということはできないし、違約金を課すことが公序良俗に反するとされる場合であっても、フランチャイズ契約自体がそのことによって直ちに無効となると解すべきでない。
まとめ
フランチャイズ契約には、相手方に債務不履行がなくても契約を中途解約することができるという内容の規定が置かれていることが通常です。
しかし、いつでも自由に中途解約をされてしまうと、解約される側にとっては、一定期間は契約関係を続けて、ロイヤリティの受領や本部の名義の下で商売をできたという期待が裏切られることになります。
そのため、中途解約する場合には、一定程度の金銭の支払いをしなければならない旨の規定(解約一時金、違約金)と一緒に、定められることが殆どです(ただし、契約書を作成するのはおおむね本部でしょうから、解約一時金の規定があるのは、加盟店が中途解約をする場合に限られている等、不平等な内容になっていることが殆どです)。
この解約一時金があまりにも高額になると、契約の中途解約が事実上制限され、中途解約を定めたことそのものが意味を失ってしまいますから、あまりに高額な解約一時金の請求は制限されます。
ただし、解約一時金の請求が制限されることと、そもそもこのような規定を置いたことによって契約自体が無効になることは別の話です。
本裁判例は、解約一時金の請求が制限されることはあっても、このことから直ちに契約自体が無効になるわけではないと述べており、解約一時金の定め(金額が高額であること)と、契約自体の有効性は別であることを示した裁判例です。