裁判例

Precedent

フランチャイズ
加盟店が契約終了後に負う競業避止義務(平成27年1月13日横浜地裁判決)

事案の概要

X(加盟店)は、パソコン教室のフランチャイズチェーンを営むY(本部)とフランチャイズ契約を締結した。

Xは、フランチャイズ契約締結をしてパソコン教室を開いたが、約1年半営業した後閉店したが、その後、パソコン教室を経営する他の会社の取締役かつインストラクターとして従事した。

Xは、契約締結において、Yの利上げに関する情報提供義務違反を主張し、適切な情報提供を行わなかったために損害が生じたとして損害賠償の請求をした。

これに対し、Yは、Xがフランチャイズ契約に基づく競業避止義務に違反したとして、営業の差止め及び違約金支払いの請求をした。

<判決の概要>

Xは、フランチャイズ契約に基づいて営んでいたパソコン教室が閉店した後に設立された、パソコン教室を経営するA株式会社の取締役であり、同パソコン教室でインストラクターとして従事しているから、XY間のフランチャイズ契約に定める「その名義・態様の如何を問わず、直接または間接的に、本契約に定める事業と同種、または類似の営業ないし営業部類に属する取引」を行っていると認められる。

しかし、Xがパソコン教室の運営に関わるようになったのは、Yの情報提供義務に違反する勧誘行為が契機になっており、これによって多額の費用を投じていたため、原告としてはこれによって受けた損失を回収する機会が必要である。

一方、XY間のフランチャイズ契約で競業避止義務が定められた趣旨は、被告の商圏の確保にあると考えられるところ、B市内に出店した15教室全てが廃業等しており、現時点においてB市内で営業しているYの加盟店が存在するとは認められないから、Xの競業を禁止しなければ、Yの商圏が脅かされ、重大な不利益を受けるとは認められない。

そうすると、Xが形式的に競業避止義務に違反しているからといって、XY間のフランチャイズ契約に基づいて競業の禁止を求め、違約金を請求することは、信義則に反して許されない。

まとめ

本件は、フランチャイズ契約者の当事者間で締結した競業避止義務に基づいて営業の差止めや違約金を請求することを否定した裁判例です。

特に競業避止義務違反に当たるかどうかについて、競業避止義務が契約上定められた趣旨や元加盟店が競業行為を行うことでこの趣旨を害することになるかどうかを具体的に考慮したことに加え、元加盟店が競業行為を行ったきっかけが、本部側によるフランチャイズ契約時の情報提供不足により元加盟店に損害が発生している(多額の初期投資をしている)こと、この損害を回収する必要性がある点をも根拠としている点に特色があります。

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