派遣・業務処理請負固有の問題について
1.派遣・業務処理請負の違いと共通点
現在、派遣や業務処理請負などの商取引を介した、他社が雇用する労働力を利用する形態が広がっています。
派遣は、派遣元が「自社」の労働力として雇用する派遣労働者を、「他社」にあたる派遣先が直接指揮命令して使用するものであるのに対して、請負は、請負企業が「自社」の雇用する労働者を、「自ら」指揮命令するものであって、注文主が直接請負企業の労働者に指揮命令することはできないという違いがあります。
もっとも、いずれの形態も、「他社」である派遣元ないし請負企業が雇用する労働力を利用する形態(間接雇用)という点で、共通しています。
間接雇用の場合、派遣元企業と派遣先企業(又は、請負企業と発注企業)の企業間の契約(商取引)が介在することから、企業間の契約(商取引)によっては、当該労働者が従事する業務が消滅する可能性があることや、業務を処理するうえでミスをした場合に、派遣先企業(又は、発注企業)といった取引先の業務に関するミスとなるため、企業間の契約(商取引)の解消につながるおそれがあるといった特徴があります。
2.派遣労働者の期間途中の解消
派遣法の規制の範囲内の利用であれば、期間満了によって当然に契約を解消して、派遣先企業は、派遣労働者との間の問題を回避できるようになります。
しかし、期間途中の解消は、期間の定めのある契約を当事者が一方的に中途解消することになるため、原則としてできません。
派遣先企業の都合による派遣契約の解除にあたっては、派遣労働者の新たな就業機会の確保、派遣元企業による派遣労働者に対する休業手当等の支払いに要する費用の負担その他雇用の安定を図るために必要な措置を採ることが義務付けられています(派遣法29条の2)。
また、行政も、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」において、派遣先は、派遣先の責めに帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも派遣元企業が派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を求めています。
3.業務処理請負契約の解消
業務処理請負では、請負企業の労働者が発注企業の事業所内で作業に従事することになりますが、発注企業と契約関係にあるのはあくまで請負企業ですから、発注企業と請負企業間の業務処理請負契約は、純粋な商取引として、原則はいつでも解消可能ということになり、解雇権濫用法理又は雇止め法理の適用の問題は生じません。
もっとも、一定の業務を前提に、契約を締結することになりますので、設備投資や教育研修に費用を投じているケースが多く、発注企業によって恣意的な業務処理請負契約の解消がなされると、損害賠償の問題が生じますので、注意が必要です。
4.個人事業主か労働者か
現在、就業形態は多様化しており、企業と雇用契約ではなく、委任、請負、業務委託等の形式で契約を締結し、個人事業主として、発注者等の指図にしたがって、自ら業務を行う形態があります。
個人事業主は、労働法の適用による保護を受けるか否かという問題があり、労基法9条、労働基準法研究会による報告書「労働基準法の「労働者」の判断基準について」(昭和60.12.19)及び下級審の裁判例によると、以下の要素が考慮されています。
(1)使用従属性に関する基準
#1:「指揮監督下の労働」に関する判断基準
イ 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
ロ 業務遂行上の指揮監督の有無
ハ 拘束性の有無
ニ 代替性の有無~指揮監督関係の判断を補強する要素~
#2:報酬の労務対償性に関する判断基準
(2)「労働者性」の判断を補強する要素
#1:事業者性の有無
イ 機械、器具の負担関係
ロ 報酬の額
ハ その他
#2:専属性の程度
#3:その他
もっとも、このような複雑な判断要素を逐一検討するよりも、企業としては、当該個人の「事業者性」について立証活動を行い、「事業者性」が明らかな場合には、「労働者」には該当しないとの主張の枠組みが簡便であるといえます。
現に、最高裁判例(最判平成8.11.28)は、まず事業者性を検討したうえで、労働者性を否定する判断枠組みを示唆しています。
なお、労働法の適用がない場合であっても、個人事業主は、商取引にあたって、独占禁止法や建設業法、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の適用による保護を受けることが考えられます。
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