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フランチャイズ契約締結時に本部が説明すべき情報(リロケイト物件)(平成21年11月26日仙台地裁判決)

事案の概要

X(加盟店)らは、コンビニエンスストアをチェーン展開するY(本部)とフランチャイズ契約を締結したが、同契約締結時に、リロケイト物件店舗の売上予測について本部の説明義務違反があった(出店前に近隣地で閉店した旧店舗に関する情報を適切に提供しなかった)として、損害賠償を求めた。

※リロケイトとは、元ある店舗を閉店し、近隣で新規出店をすること。

<判決の内容>

(1)フランチャイズ契約においては、本部が経営ノウハウや出店する店舗に関する情報及び経済的基盤を保有する一方で、通常、加盟店になろうとする者は、経営に関する知識や経験が乏しいことに照らせば、本部は、フランチャイズ契約の締結に向けた交渉に入った時点で、加盟店になろうとする者に対し、フランチャイズ契約を締結するか否かを判断するために必要な情報を提供すべき信義則上の義務を負っている。

(2)加盟店になろうとする者に経営に関する知識、経験が乏しいことにかんがみれば、加盟店になろうとする者は、加盟店が作成・提示した店舗の売上予測を信頼するのが通常であると考えられる。

そうであれば、加盟店になろうとする者が契約を締結するか否かを判断するためには、本部が作成・提示する売上予測が、客観的に見て合理性を有する者である必要がある。

もっとも、売上予測の手法については、科学的な手法が確立されているわけではないから、その手法に本部の主観的判断が伴うことは避けられない。

また、売上予測は、本部に蓄積された経験やノウハウによる部分が大きいことからすれば、第一次的には本部の裁量を尊重する必要性も否定できない。

以上から、本部が作成、提示した売上予測は、売上予測の手法それ自体が虚偽ないし人為的操作が加わった不合理なものであり、または、売上予測の手法それ自体は合理的であったとしても、売上予測の前提とされた情報が虚偽ないし著しく不合理であるといえる場合に、客観的に見て合理性を有する情報ではないと判断されるべきである。

(3)本部が、リロケイト物件に関して勧誘を行う場合、加盟店になろうとする者からすれば、新店舗からわずかな距離しか離れていない旧店舗の売上実績は、新店舗が開店した後の売上と強い関連性を有すると考えるのが通常であることからすると、本部としては、加盟店になろうとする者に対し、旧店舗の売上実績や旧店舗と比較して新店舗の売上が改善すると判断した理由等、新店舗の売上予測が旧店舗の売上実績を踏まえてもなお合理的なものであるか否かを判断するための情報を提供するべきである。

したがって、本部は、加盟店になろうとする者に対し、リロケイトの理由、旧店舗の売上実績、新店舗の売上予測と旧店舗の売上実績の関係等の重要情報を説明すべきである。

まとめ

フランチャイズシステムに参加して事業を開始しようとする人は、経営の知識、経験に乏しいことも多く、フランチャイズシステムは、まさにそのような知識、経験を有する本部からノウハウを受けて事業を開始できるところにメリットがあります。

リロケイト物件は、元ある旧店舗を閉店し、その近隣地でより良い立地条件で新規に出店する物件をいいます。

リロケイト物件で新規出店をした場合に、どのような売上が予想されるかは、旧店舗と出店地域が近い又は同じであるために、旧店舗の売上と相応の関連性があると考えられます。

このような事情を踏まえ、本部がリロケイト物件のフランチャイズ契約を締結する場合には、新店舗の売上予測に際し、旧店舗の売上に関する情報も開示しなければならないことを示した裁判例として参考になるでしょう。

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