交通事故の対物賠償保険とは?補償範囲や利用する際の注意点

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「交通事故の対物賠償保険でどこまで補償してくれるのか」
「対物賠償保険と車両保険の違いって何なのか」

対物賠償保険について調べている方の中には、実際の補償範囲等について詳しく知りたいと思っている方もいるのではないでしょうか。

対物賠償保険を利用することで、自分が賠償責任を負う物的損害について保険会社が代わりに払ってくれます。

逆に、自分が被害者の場合には、加害者の対物賠償保険を利用して賠償を受けることになります。

本記事では、交通事故の対物賠償保険の補償範囲や主な利用ケース、注意点等について解説します。

1.対物賠償保険とは

対物賠償保険とは、契約者自身が加害者となって、他人が所有する物(車や積載物、電柱、道路標識など)を損壊させてしまった場合に、修理費や賠償金が補償される保険です。

支払われる金額は、契約時に設定した金額が上限であり、数百万円と定めることもできれば、無制限に設定することもできます。

保険料を抑えるために、対物賠償保険の上限額を低めに設定しているケースもありますが、例えば多くの荷物を積んでいる車両との衝突事故の場合など、物的損害が著しく高額になるケースもあります。

そのため、できるだけ上限を高く設定しておくとよいでしょう。

また、対物賠償保険を利用する場合、保険会社が示談代行サービスとして相手方との交渉を行ってくれることが一般的です。

2.車両保険との違い

対物賠償保険と似た制度に車両保険があります。

車両保険とは、その名のとおり、自身の車両の損害に対する保険となります。

つまり、相手に生じた損害を補償するのか、自分自身に生じた損害を補償するのかの違いがあります。

3.対物賠償保険の補償範囲

対物賠償保険の補償範囲は以下のように定まっていることがほとんどです。

交通事故に巻き込まれたときに、対物賠償保険を利用できるのは以下の人です。

対物賠償保険を利用できる人の範囲

  • 保険証券記載の被保険者(記名被保険者)
  • 契約時に特定した自動車(被保険自動車)を使用・管理中の次のいずれかに該当する者

   ・記名被保険者の配偶者

   ・記名被保険者またはその配偶者の同居の親族

   ・記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚(これまでに婚姻歴がないこと)の子

  • 記名被保険者の承諾を得て被保険自動車を使用・管理中の者
  • 記名被保険者の使用者

契約者本人だけでなく、その一部家族も被保険者に含まれています。

また、記名被保険者と使用関係にある者も含まれることがあるので、契約時に確認しておくことが大切です。

なお、以下のように賠償の相手が家族の場合は、上記の要件を満たす場合でも適用除外になります。

適用除外となる賠償の相手方

  • 記名被保険者
  • 被保険自動車を運転中の者、父母、配偶者もしくは子
  • 被保険者またはその父母、配偶者もしくは子

損壊させた物が家族の所有物である場合は、対物賠償保険を利用することはできませんので、注意が必要です。

4.対物賠償保険を利用すべきケース

過失割合を決めるときの注意点

ここまで見てきた通り、対物賠償保険というのは事故の相手方の損害を賠償するための保険です。

そのため、例えば追突された場合等、自身の過失割合が0の事故では利用する必要はありません。

他方、自分が加害者になってしまったり、自分にも過失割合が認められる場合には、相手の損害を賠償する責任が生じます。

このような場合には、対物賠償保険を利用するかを検討する必要があります。

対物賠償保険を利用するか否か決定する前に、どの程度の賠償義務を負うのかを確認しましょう。

例えば、相手の修理費用が低額で、賠償額が5万円程度の時には、あえて賠償保険を使わずに自身で支払ってしまった方がいいということもあります。

逆に、何十万円と賠償しなければいけないような場合には、後に説明する保険の等級ダウンがあったとしても賠償保険を利用した方がメリットがあるというケースも少なくありません。

そのため、どのような場合に対物賠償保険を利用した方が良いかという点については

賠償額>増額保険料

の場合と言えます。

5.対物賠償保険を利用する際の注意点

対物賠償保険を利用するときには、いくつか注意事項があります。

主な注意点は以下の3つです。

対物賠償保険を利用する際の注意点

  1. 免責事由に注意する
  2. 対物超過特約を付けているか確認する
  3. 等級が下がることで増額する保険料を確認する

順にご紹介します。

(1)免責事由に注意する

対物賠償保険にも、保険利用ができない場合である免責事由というものが設定されています。

前述したように、損壊させたものが家族の所有物であること以外にも、以下のようなケースがあります。

主な免責事由

  • 保険契約者や記名被保険者の故意によって発生した損害
  • 自然災害によって生じた損害 など

例えば、わざとぶつけた場合等は論外ですが、悪質な煽り運転などで事故を起こした場合も、故意によって発生した損害として保険利用を拒否されてしまう可能性があります。

この場合には、相手方へ与えた損害は全て自身が負担しなければならなくなります。

また、自然災害などの不可抗力で生じた損害の場合も、保険利用ができません。

もっとも、この場合にはそもそも賠償責任が発生しない可能性もありますから、問題が生じた場合には弁護士に相談してみましょう。

(2)対物超過特約を付けているか確認する

車両損害等の物損は原則として、時価額と修理金額の低い方が賠償の対象となります。

そのため、例えば修理金額が50万円という見積もりが出ていたとしても、時価額が20万円の場合には、20万円が賠償額となります。

これを経済的全損と言います。

20万円の価値しかない物に対して、50万円もかけて修理するのは不経済だという考え方です。

しかし、往々にしてこの点で争いが長引くことがあります。

法的には正しい対応だとしても、相手方がなかなか納得しないために、示談ができないということがあります。

そのようなときに便利なのが、「対物超過特約」というものです。

この特約を付けていると、設定した金額までは時価額を超えて賠償することができます。

法的には支払う必要のない可能性が高い部分ですが、示談がスムーズに行えるという意味では、とても便利な特約になりますので、自分が賠償責任を負う場合には付けているか確認してみましょう。

(3)等級が下がることで増額する保険料を確認する

交通事故によって対物賠償保険を利用すると等級が下がります。

一般的に、対物賠償保険などを利用した場合、3等級ダウンとなります。

そのため、それに応じて、保険料も増額してしまいます。

保険を利用して増額する保険料と、補償を受けられる賠償金の金額を比べて、保険を利用するべきかを決める必要があります。

例えば、相手の修理費用がそんなに高額でないような場合には、あえて保険を使わずに自身で賠償した方が将来的にはお得であるという場合もあり得ます。

まとめ

交通事故の対物賠償保険は、相手に対して支払うべき賠償金を代わりに払ってくれるもので、とても有益です。

もっとも、適用範囲の定めや上限額の定めがある場合もありますので、自身の事故で利用できるか注意しましょう。

もし対物賠償保険を利用すべきか迷ったときは、弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士法人みずきは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、対物賠償保険についてお困りの方はお気軽にご相談ください。

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