むちうちの逸失利益とは?算定の注意点や弁護士に依頼するメリット
「むちうちでも逸失利益ってもらえるのか」
「むちうちでもらえる逸失利益はどのくらいなのか」
交通事故によってむちうちの症状が残存し、後遺障害等級の認定を受けた方の中には、どのくらい逸失利益をもらえるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
逸失利益とは、後遺障害により労働能力が制限されるために生じる、将来の減収分のことをいいます。
逸失利益の金額は、後遺障害等級に応じて決められる労働能力喪失率や、労働能力喪失期間などの要素で計算することになります。
むちうちで後遺障害が残った場合にはその症状の性質から、特別な考慮がされることがあります。
本記事では、むちうちの逸失利益の算定方法についてご紹介します。
1.むちうちの逸失利益とは
逸失利益とは、後遺障害等によって労働能力が制限されることにより得られなくなった将来の収入のことをいいます。
交通事故により、何らかの後遺障害が残存してしまうと、それまでと同じように仕事を行うことができなくなり、収入の減少が生じる場合があります。
ただし、加害者側に逸失利益を請求するためには、後遺障害等級の認定を受けることが必要です。
むちうちの場合、6か月以上治療を続けても、痛み、手指のしびれ、めまい、耳鳴り、吐き気といった症状が残存することがあります。
この場合に認定される可能性がある後遺障害等級は12級13号か14級9号です。
症状を他覚的所見により医学的に証明できる場合は12級13号、証明ができなくとも治療経過等から症状を医学的に説明できる場合は14級9号の認定がされます。
後遺障害等級認定の申請を行い、以上の等級の認定を受けられれば、逸失利益を請求することができます。
むちうちの主な症状や後遺障害等級の認定を受けるためのポイントについては、以下の記事も合わせてご参照ください。
2.むちうちの逸失利益の算定方法
むちうちの逸失利益は、以下の式を用いて算出します。
「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」
それぞれの項目について説明します。
(1)基礎収入
基礎収入とは、逸失利益算定の根拠となる年収のことをいいます。
通常は、交通事故前年の年収を用います。
サラリーマンの場合は、ボーナスや各種手当を含む社会保険・税金等を控除する前の総支給額、自営業やフリーランスの場合は、事故前年の確定申告の申告所得額が基礎収入となります。
また主夫・主婦といった家事従事者は全学歴・全年齢の女性労働者の平均年収、就業前の未成年は男性の場合は全学歴・全年齢の男性労働者の平均年収、女性の場合は男女含めた全労働者の全学歴・全年齢の平均年収を用います。
平均年収は厚生労働省が公表している年収の統計資料(賃金センサス)の金額を利用することとされています。
逸失利益における基礎収入の基準については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
(2)労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺障害によって労働能力が制限される割合のことです。
目安になる割合は後遺障害等級ごとに定められています。
むちうちの場合、認定される可能性がある後遺障害等級と労働能力喪失率は、以下のようになっています。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
12級13号 | 14% |
14級9号 | 5% |
もっとも、労働能力喪失率は、被害者の年齢や職業、後遺症の部位や程度、事故前後の稼働状況等を総合的に考慮して判断されるため、仕事の内容や症状によっては、認定された等級に応じた労働能力喪失率がそのまま適用されないこともあります。
ケースによって異なりますので、弁護士に相談するのがおすすめです。
(3)労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数とは、損害賠償金に生じる中間利息を控除するための数値のことです。
逸失利益は将来にわたって生じる減収分ですが、交通事故による損害として賠償を受ける場合には一括で受け取ることになります。
そうすると、本来受け取る時よりも早く受け取れることになり、その時までに発生する利息の分、被害者が得をする結果になってしまいます。
このもらいすぎとなる利息(中間利息)を控除するために、労働能力喪失期間に対応して設けられた数字がライプニッツ係数なのです。
以下では労働能力喪失期間そのものや、むちうちの場合の注意点について説明します。
#1:労働能力喪失期間とは
労働能力喪失期間とは、後遺障害によって労働能力が喪失した状態が続く期間のことをいいます。
労働能力喪失期間の年数は、主に以下の4つの区分に分かれており、該当する区分によって導かれた期間に該当するライプニッツ係数を用いて逸失利益の算定を行います。
区分 | 労働能力喪失期間 |
18歳未満 | 18歳から67歳までの年数 |
大学生 | 大学卒業時点から67歳までの年数 |
18歳以上(大学生を含まない) | 「67歳までの年数」と「平均余命の2分の1」のどちらか長い方の年数 |
67歳超え | 平均余命の2分の1の年数 |
労働能力喪失期間の始期は症状固定日で、たとえば30歳のときに症状固定の診断を受けた場合は、30歳から67歳までの37年間が労働能力喪失期間となります。
この場合、37年の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数は22.167となります(国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」参照)。
#2:むちうちの場合の注意点
もっとも、むちうちの場合の労働能力喪失期間は、後遺障害等級が12級で10年程度、14級で5年程度に制限される例が多く見られ、後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断すべきであるとされています。
その理由は、一般に、むちうちによる神経症状は、時間の経過によって緩和されたり、症状に慣れたりして、労働能力に対する影響がなくなっていくものとして考えられているからです。
つまり、むちうちによって後遺障害等級の認定を受けた場合は、#1で説明したとおりの労働能力喪失期間が認められるわけではないのです。
3.むちうちの後遺症について弁護士に相談するメリット
むちうちの後遺症について弁護士に相談することで、さまざまなメリットがあります。
主なメリットは以下の3つです。
- 適切な賠償額の算定についてアドバイスやサポートが受けられる
- 適切な後遺障害等級の認定へ向けたサポートが受けられる
- 示談交渉を依頼できる
順にご紹介します。
(1)適切な賠償額の算定についてアドバイスやサポートが受けられる
適切な賠償金の算定についてアドバイスやサポートが受けられる点が魅力です。
むちうちの場合は、後遺障害逸失利益の金額などについて争われるケースがあります。
その際に適切な賠償金の計算方法を把握していなければ、相手の主張が誤っているのか判断することができません。
弁護士に相談して適正な賠償金の相場について説明やアドバイスを受けるようにしましょう。
(2)適切な後遺障害等級の認定へ向けたサポートが受けられる
弁護士に相談・依頼することにより、適切な後遺障害等級の認定へ向けたサポートが受けられます。
後遺障害等級の認定を受けるためには、後遺障害診断書などを提出しなければならず、提出書類によっては適切な後遺障害等級が認定されないケースがあります。
たとえば、後遺障害の症状が後遺障害診断書に的確に反映されていない場合、実際の症状よりも軽症と判断され、等級が非該当となるケースもあります。
そのため、適切な後遺障害等級の認定を受けるには、いくつかのポイントを押さえて手続をする必要があります。
経験のある弁護士であれば、後遺障害等級認定の手続のポイントを把握していますので、弁護士のサポートを受けることで、現状を十分に反映した後遺障害等級の申請を行うことができます。
なお、むちうちの場合の後遺障害診断書の作成のポイントについては、以下の記事も参考になります。
(3)示談交渉を依頼できる
弁護士に依頼することで、そのまま加害者側との示談交渉を任せることができます。
示談交渉は被害者本人が行うことも可能ですが、後遺障害で日常生活に大きな影響を受けているのに、さらに相手方の任意保険会社と示談交渉を行うとなるとさらに大きな負担となります。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、負担が軽減されるだけでなく、裁判所(弁護士)基準で慰謝料を算出することができるため、賠償金の増額も期待できます。
特にむちうちの場合は、症状を客観的に証明することが難しいため、示談交渉が難航するケースが多くあります。
弁護士に相談しつつ示談交渉のサポートを受けることが大切になります。
まとめ
むちうちになった場合でも、後遺障害等級の認定を受けられれば、加害者側に逸失利益を請求することができます。
もっとも、むちうちの場合の逸失利益の算定には特有の事情を考慮する必要があるため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、後遺障害に関することや示談交渉について全面的なサポートを受けられます。
解決に至るまでの負担を軽減できるだけでなく、賠償金の増額も図れるので、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、むちうちになった方や逸失利益について詳しく知りたい方はお気軽にご相談ください。
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