膝の靭帯を断裂するとどんな後遺症が残る?弁護士が解説します

執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
私は、柔和に皆様との会話を重ね、解決への道筋を示させていただきます。
是非とも皆様の不安を解消するお手伝いをさせてください。

「交通事故で膝の靭帯を損傷・断裂した場合の影響は?」
「どんな後遺症が残る可能性があるのか」

交通事故に遭い、膝の靭帯に損傷や断裂が生じた方の中には、このような疑問をお持ちの方もいるかと思います。

靭帯は関節を保護したり安定性を保つ機能があるため、この部分に損傷や断裂が生じると、関節の可動域制限が生じる場合や痛みなどの神経症状が残存する可能性があります。

本記事では、膝の靭帯を断裂した場合の症状や認定されうる後遺障害等級について解説します。

また、適切な賠償を獲得するためのポイントについても合わせて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.靭帯断裂の概要

靭帯とは骨と骨の間をつなぐ、弾力性のある強靭な結合組織の短い束のことをいいます。

関節の保護や安定性のために重要な機能を持ちますが、交通事故によって強い外力が関節に加わることによって、靭帯が伸びたり断裂したりすることがあります。

膝の靭帯に損傷や断裂が生じると、しゃがみこんだり正座したりすることが困難になり、完全に断裂すれば大きな痛みを感じることもあります。

以下では、膝靭帯の断裂のメカニズムや治療法について解説します。

(1)靭帯断裂のメカニズムと主な症状

膝の靭帯は前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯の4つからなり、膝の関節をつなぐ働きがあります。

交通事故により、膝を強くダッシュボードに打ちつけた場合や膝を強くひねった場合に、膝の靭帯が損傷・断裂することがあります。

膝の靭帯を断裂すると、膝に痛みや腫れ、膝関節の曲げ伸ばしに困難が生じるほか、膝が不安定になる(膝がグラつく)などの症状が現れます。

また、このことで、歩行や移動に困難が生じる可能性もあり、日常生活に支障をきたすケースも多数あります。

靭帯を断裂した場合には、医療機関の整形外科を受診するなどして、早期に必要な治療を受けるようにしましょう。

(2)主な治療法

靭帯断裂の治療法は、損傷や断裂が生じた部位によって、保存療法か手術療法のいずれかがとられます。

保存療法は、損傷が軽度であり、日常生活に大きな支障がない場合に行われる治療法です。

ギプスや装具で患部を固定し、痛みを緩和させることがメインですが、固定している期間が長期にわたると、筋力の低下による可動域制限を引き起こすことがあります。

そこで、サポーターを装着し可動域を広げるトレーニングも併せて行うことが一般的です。

一方、手術療法は靭帯を縫合する修復手術のほか、損傷が重度の場合は再建手術を行うこともあります。

手術をすることで膝が安定し、スポーツなどの激しい運動を伴う活動への復帰も可能となるところに特徴がある治療法です。

どの治療法がとられるかは、損傷や断裂の程度、仕事の内容や年齢を考慮したうえで決定されます。

そのため、治療法について医師から説明をしっかりと受けたうえで、自分に適した方法を選択することが大切です。

2.膝の靭帯を損傷・断裂したときの後遺障害等級

膝の靭帯を損傷・断裂した場合には、一般的に自然治癒することはなく、治療を行っても何らかの症状が残存する可能性があります。

膝の靭帯を断裂した場合、以下のような後遺障害等級に認定される可能性があります。

膝の靭帯を断裂した場合の後遺障害

  • 可動域制限
  • 動揺関節
  • 神経症状

それぞれの内容や認定基準について、具体的にご説明します。

(1)可動域制限

靭帯を断裂したことで、関節の曲げ伸ばしなどがしづらくなることがあり、可動域制限(膝の運動ができる範囲が正常時を下回ること)の後遺障害が残る場合があります。

関節が動かしづらくなり膝に可動域制限が生じれば、しゃがみこんだり正座したりすることが困難になります。

可動域制限では、程度によって3つの後遺障害等級が認められる可能性があります。

後遺障害等級 認定基準
8級7号 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級11号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

「用を廃したもの」(8級7号)とは、関節をまったく動かせないか、可動域が10%以下まで制限されている状態です。

「機能に著しい障害」(10級11号)は、障害がある関節が、障害が無い関節と比較して可動域が2分の1以下まで制限されている状態です。

「機能に障害」(12級7号)とは、障害がある関節が、障害が無い関節と比較して可動域が2分の1以上4分の3以下まで制限されている状態です。

可動域制限による後遺障害等級は、医師等の第三者が膝を動かし、その角度を測定した資料に基づいて認定が行われます。

そのため、可動域制限での後遺障害等級の認定を受けるためには、正確な可動域の測定が必要です。

(2)動揺関節

動揺関節とは、膝関節の安定性を保てなくなった状態です。

主な症状として、通常の可動域を超えて膝が曲がったり、通常であれば動かない方向へ関節が動くなどのものがあります。

膝の関節は4つの靭帯から成り立っているため、複数の靭帯に損傷が生じると安定性を保てなくなり、動揺関節という症状を引き起こします。

後遺障害等級の認定においては、膝関節の機能を補助する硬性補装具を必要とする程度に応じて判断されます。

後遺障害等級 認定基準
8級相当 常に硬性補装具を必要とする場合
10級相当 時々硬性補装具を必要とする場合
12級相当 過激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としない場合

ただし、単に医師から硬性補装具を処方してもらっただけで後遺障害等級が認定されるわけではなく、これが認められるためには、動揺関節であることを証明する必要があります。

証明の方法には、ストレスX線やMRIなどの画像所見、徒手検査、医師からの指示による硬性補装具の作成・使用などがあります。

なお、靭帯は軟部組織であるため、レントゲン検査では損傷や断裂の様子を明らかにできないことが多いです。

そのため、必ずMRI検査を受けることが等級認定のためのポイントといえます。

(3)神経症状

可動域制限や動揺関節などの症状が見られなくても、痛みが残るケースもあります。

その場合は、痛みや痺れについて医学的に証明又は説明できるならば、後遺障害等級に認定される可能性があります。

後遺障害等級 認定基準
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

12級と14級の違いは、証明可能であるか、説明可能である程度に留まるかどうかです。

証明可能とは、症状について医学的に証明できるケースを指します。

レントゲンやMRI等の画像所見や、神経学的所見等の他覚的所見から障害が判断できるような場合です。

もし証明が難しく説明可能な範囲に留まる場合は、14級9号に認定される可能性があります。

3.靭帯損傷・断裂で適切な賠償金を得るためのポイント

交通事故により怪我をしたら、まずは医療機関を受診し、必要な治療を受けることが重要です。

靭帯断裂による症状は日常生活にも大きな影響を与えるため、ポイントを押さえたうえで適切な賠償金を受け取れるようにしましょう。

具体的には、以下の点に留意しましょう。

靭帯損傷・断裂で適切な賠償金を得るためのポイント

  1. 適切な期間・頻度で治療を受ける
  2. 早期に弁護士に相談する
  3. 適切な後遺障害等級の認定を受ける

以下でご説明します。

(1)適切な期間・頻度で治療を受ける

後遺障害等級が認定されることで、等級に応じた後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などを相手方に請求し、受け取ることができます。

適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、通院期間や治療を受ける頻度も重要なポイントです。

通院頻度が少なすぎれば、怪我と交通事故の因果関係が疑われ、適切な等級が認定されない可能性もあります。

医師の指示のもと適切な期間において治療を受け、残存した症状については症状固定の診断を受けた後、後遺障害等級の認定申請をしましょう。

通院日数と賠償金の関係については、以下の記事も参考になります。

2022.09.30

交通事故による怪我の治療に適切な通院頻度と慰謝料への影響について

(2)早期に弁護士に相談する

治療開始直後に弁護士に相談することで、後遺障害等級の認定申請を視野に入れたアドバイスを受けることができます。

後遺障害等級では、症状の内容や程度について説明する後遺障害診断書を医師が作成します。

後遺障害等級は、治療を続けてもこれ以上の回復が見込めず、何らかの症状が残存した場合において、それが後遺障害等級の認定基準を満たす場合に認定されるものです。

そのため、後遺障害診断書に改善の余地がある旨の記載や認定に必要な検査を受けていない場合には、実際の症状よりも低い等級が認定される場合や等級非該当となる場合があります。

弁護士に相談することで、診断書作成のポイントや、認定申請をするうえで必要な検査など、多岐にわたりアドバイスを受けることができ、適切な等級が認定されやすい点も大きなメリットです。

また、賠償金の金額を計算する際、自賠責基準・任意保険基準・裁判所(弁護士)基準の3種類の基準があります。

弁護士に依頼することで、裁判所(弁護士)基準を用いることができますが、これは最も高額な慰謝料算定基準となります。

(3)適切な後遺障害等級の認定を受ける

交通事故の損害項目のうち、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益については、後遺障害等級の認定を受けなければ受け取ることができません。

また、後遺障害慰謝料は、等級に応じてその金額が定められています。

例えば、膝の靭帯を断裂した場合の後遺障害慰謝料は、以下のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料(裁判所基準)
8級 830万円
10級 550万円
12級 290万円
14級 110万円

等級が1つ異なるだけで数百万円の差が生じるため、適正な賠償金を獲得するためには、適切な等級の認定を受けることが重要です。

後遺障害等級の認定申請には、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。

事前認定は、加害者側の保険会社に対して後遺障害診断書を提出することで行うことができ、それ以外の資料については保険会社が作成・収集を行います。

書類作成や資料収集の手間が省ける点がメリットといえますが、保険会社が審査に必要最低限の書類や資料しか提出しない場合があり、適切な等級認定が受けられない可能性があります。

一方、被害者請求は被害者の自賠責保険に対して必要な書類の作成や資料の収集を行い、提出する方法であるため、書類作成の手間がかかります。

もっとも、書類の書き方や添付資料を工夫することによって、適切な等級認定の可能性を高めることができます。

また、交通事故対応に精通する弁護士に相談することで、書類作成や資料収集についてアドバイスやサポートを受けることが可能です。

弁護士に相談すると、後遺障害等級の認定手続についても依頼することができるため、ご自身の症状に応じた適切な等級認定を受けることができます。

後遺障害等級の認定申請については、以下の記事も合わせてご参照ください。

2023.05.31

後遺障害の事前認定とは?メリット・デメリットと主な流れについて解説

2023.05.31

後遺障害等級認定の被害者請求とは?メリット・デメリットと主な流れを解説

まとめ

本記事では、交通事故によって膝の靭帯を断裂した場合の症状や認定されうる後遺障害等級について解説しました。

靭帯を損傷・断裂してしまうと、自然治癒しないため、日常生活や仕事に何らかの影響が生じる可能性があります。

靭帯断裂による後遺症に悩まれている方は、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

当事務所には、交通事故問題に精通した弁護士が多数在籍しています。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、後遺障害等級の認定申請や示談交渉にお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
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