相続順位とは?わかりやすく相続人の優先順位を弁護士が解説

執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
私は、柔和に皆様との会話を重ね、解決への道筋を示させていただきます。
是非とも皆様の不安を解消するお手伝いをさせてください。

「自分は相続人に該当するのだろうか」
「遺産相続の順位を詳しく知りたい」

被相続人(亡くなった方のこと)が亡くなると相続が発生することになりますが、このときに気がかりなのが、誰がどのような割合で相続するのかという「相続の順位」と「相続の割合」なのではないでしょうか。

遺言がない場合には、遺産相続の順番は民法の規定に従って決まるのですが、自分の相続順位や相続割合を理解していないと、相続の手続きを進めることができず、場合によっては相続で揉めてしまう原因にもなりかねません。

そこで、この記事では、遺産相続の順位や相続の割合など基本的なルールをできるだけ分かりやすくご紹介します。

1.相続順位

法定相続人(民法で定められた相続する権利がある人)には、以下のように民法上に定められた相続順位と相続割合があります。

(1)被相続人の配偶者

被相続人の配偶者は必ず相続人となります(民法890条)。

もっとも、配偶者は法律上婚姻関係がある妻や夫に限られ、内縁や事実婚、パートナーシップ関係の場合には相続人となることができないので、注意が必要です。

(2)被相続人の配偶者以外の相続人

配偶者以外の相続人には順位が決められており、以下の表のようになります。

相続順位 相続人
第1順位 直系卑属(子ども)
第2順位 直系尊属(親)
第3順位 兄弟姉妹

相続で順位の異なる人がいる場合、順位が上の人が法定相続人となれば、順位が下の人は法定相続人にはなれません。

他方で、同順位の相続人が複数人いる場合はその全員が相続人となります。

例えば、第1順位の子どもが相続人になる場合、第2順位の親や第3順位の兄弟姉妹は相続人になれませんが、第1順位の子どもが複数人いる場合、子ども全員が相続人となります。

(3)子、兄妹姉妹が先に死亡している場合の相続順位

前述したように、相続の優先順位で第1順位は子、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹ですが、被相続人の孫やひ孫、甥姪が相続人になることがあります。

#1:代襲相続とは

もともとの相続人が被相続人より先に死亡している場合、相続人の子どもが代わって相続をすることになりますが、これが代襲相続です。

相続人となる人を代襲相続人、先に死亡した元々の相続人を被代襲者といいます。

#2:代襲相続人の優先順位

代襲相続によって孫やひ孫、甥姪などが相続人になる場合、代襲相続人は被代襲者と同じ順位となります。

例えば、子が先に死亡して孫が相続人となる場合、孫の相続順位は第1順位で親(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)より上の順位となりますから、優先的に相続できることになります。

#3:代襲相続が発生するケース

代襲相続の発生には、代襲相続を生じさせる原因となる事実が必要です。

具体的には、被代襲者が①相続開始前に死亡していること、②相続欠格の事由が生じたこと、③廃除の事由が生じたこと、のいずれかが必要となります。

相続欠格事由については、以下のように民法891条に5つ規定されています。

① 被相続人または相続について先順位・同順位にあるものを故意に死に至らせ、または死に至らせようとした場合

例:夫が亡くなり、その子が自身の相続分を増やす目的で兄妹を殺害した場合

② 被相続人が殺害されたことを知っているのに告発や告訴をしなかった場合

③ 詐欺や脅迫で被相続人を妨害して、遺言行為(遺言をし、撤回し、取り消し又は変更すること)をさせなかった場合

④ 詐欺や脅迫で被相続人に干渉して、遺言行為(遺言をし、撤回し、取り消し又は変更すること)をさせた場合

⑤ 有効な遺言書であることを前提に、相続人が被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した場合

相続欠格に該当する者は、被相続人の意思とは無関係に何らの手続きを要することなく、法律上当然に相続権が喪失します。

廃除事由については、以下のように民法892条に2つ規定されています。

① 推定相続人が、被相続人に対して虐待・重大な侮辱をしたこと

② その他著しい非行をしたこと

例:犯罪、遺棄、浪費、家族との不和など

上記廃除事由のうちいずれか1つが存在するとき、被相続人に廃除請求権が発生し、廃除請求権を行使することできます。

ただし、相続欠格とは異なり、家庭裁判所の廃除の審判を経なければ相続人廃除の効力は生じません。

(4)法定相続の順位とは異なるケース

以下のように法定相続の順位とは異なるケースが複数ありますので確認しましょう。

#1:遺言書がある場合

各共同相続人は、相続財産全体に対して「相続分」を有していますが、被相続人はこの割合を事前に遺言書で指定することができます。

そのため、被相続人が遺言書を残している場合には、その遺言が優先され、最終的な相続順位に影響を及ぼします。

例えば、相続順位が異なる子・孫・兄弟がいる場合において、法定相続分に従えば子だけが相続人となりますが、遺言で孫と兄弟も相続人となるよう指定しておけば、全員が相続人になることができます。

#2:相続欠格や廃除事由がある相続人がいる場合

相続欠格や廃除の対象者が法定相続人の中にいる場合、対象者は相続人と扱われません。

これに該当する場合、対象者は遺産を相続できませんが、前述したように対象者に子どもがいる場合は代襲相続が発生するため、代襲相続の条件を満たせば遺産を相続することができます。

そのため、対象者がいる場合には、他の相続人の相続分が増えることもあるでしょう。

#3:相続放棄をした相続人がいる場合

相続人が相続放棄の手続きをした場合、その者は相続手続において存在しないものと扱われます。

例えば、夫が亡くなった場合(全財産900万円)において、妻と子3人(A、B、C)がいて、法定相続分のとおり相続すると、以下のようになります。

妻(配偶者):相続分1/2(450万円)

子A    :相続分1/6(150万円)

子B       :相続分1/6(150万円)

子C       :相続分1/6(150万円)

他方で、子1人(C)が相続放棄の手続きをすると相続分は以下のようになります。

妻(配偶者):相続分1/2(450万円)

子A    :相続分1/4(225万円)

子B       :相続分1/4(225万円)

事例を変えて、夫が亡くなった場合(全財産900万円)において、妻と子1人がいて、子が相続放棄すると、子はいないものとして扱われるので、妻が全ての財産を相続することになります。

#4:相続人全員が法定相続分と異なる順位で分割することを合意した場合

被相続人が遺言書を残していない場合、相続人同士の話し合いで遺産を自由に分けることができます。

この場合、法定された相続順位や相続割合に拘束されません。

ただし、相続人全員の同意が必要であることには注意が必要です。

2.法定相続分

法定相続分とは、民法の定める遺産相続の割合です。

被相続人に配偶者がいるかいないかで相続分が以下のように変化します。

(1)相続人に配偶者がいる場合の法定相続分

#1:配偶者だけの場合

法定相続人が配偶者だけの場合、他に次順位の相続人がいないので、配偶者が全ての遺産を相続することになります。

#2:配偶者と子の場合

法定相続人が配偶者と子である場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1となります。

子が複数人いるなら、子の相続分2分の1を按分します。

#3:配偶者と父母(又は祖父母)の場合

法定相続人が配偶者と親である場合、法定相続分は配偶者が3分の2、親が3分の1となります。

父母両方または祖父母両方なら、親の相続分3分の1を按分します。

#4:配偶者と兄弟姉妹の場合

法定相続人が配偶者と兄弟姉妹である場合、法定相続分は配偶者が4分の3、兄妹姉妹が4分の1となります。

兄弟姉妹が複数人いるなら、兄弟姉妹の相続分4分の1を按分します。

(2)相続人に配偶者がいない場合の法定相続分

相続人に配偶者がいない場合、相続人の人数によって均等割にします。

例えば、子3人が相続人になる場合、それぞれの相続分は3分の1ずつになります。

3.相続の優先順位と法定相続分の具体例

夫が死亡した場合(全財産900万)にどのような相続順位、相続割合になるのか具体例を用いてご紹介します。

(1)妻と子が相続する場合

妻(配偶者):相続分1/2(450万円)

子     :相続分1/2(450万円)

(2)子だけが相続する場合

子     :相続分1/2(450万円)

子     :相続分1/2(450万円)

(3)妻、子2人、夫の親がいる場合

妻(配偶者):相続分1/2(450万円)

子     :相続分1/4(225万円)

子     :相続分1/4(225万円)

夫の父   :相続分なし

夫の母   :相続分なし

(4)妻と子3人(A・B・C)、内縁の妻と認知された子(D)がいる場合

妻(配偶者):相続分1/2(450万円)

子A    :相続分1/8(112万5000円)

子B    :相続分1/8(112万5000円)

子C    :相続分1/8(112万5000円)

子D    :相続分1/8(112万5000円)

(5)妻と子2人(A・B)と養子がいる場合

妻(配偶者):相続分1/2(450万円)

子A    :相続分1/8(112万5000円)

子B    :相続分1/8(112万5000円)

子C    :相続分1/8(112万5000円)

子D    :相続分1/8(112万5000円)

(6)妻と兄弟が2人いる場合(夫の両親は死亡)

妻(配偶者):相続分3/4(675万円)

夫の兄   :相続分1/8(112万5000円)

夫の弟   :相続分1/8(112万5000円)

まとめ

本記事では、相続の順位や割合、法定相続の順位とは異なる相談が行われるケースなどについて解説しました。

相続は、相続人の数が増えれば増えるほど、複雑になっていきます。

相続関係が複雑になり、誰が相続人に該当するのか、相続順位や相続割合がどのようになるかについてお悩みの方は、専門家である弁護士に一度相談することをおすすめします。

執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
私は、柔和に皆様との会話を重ね、解決への道筋を示させていただきます。
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