課金制アプリの利用による借金の対処法とは?借金を防ぐためのポイント

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「課金アプリで作ってしまった借金を減らすことはできる?」
「借金を解決する方法はどんなものがある?」

課金制のスマホアプリでよく遊んでいる方の中には、課金アイテムの購入のために借金をしてしまい、困っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、課金アプリによる借金の対処法や借金をこれ以上増やさないためのポイントについてご紹介します。

1.課金制アプリが持つリスク

スマホアプリの課金とはどういうことなのか、なぜ借金をしてしまうのかについてご説明します。

課金制のスマホアプリに熱中するとどのようなリスクがあるのか知っておきましょう。

(1)課金制アプリの仕組み

スマホなどで遊ぶことができるソーシャルゲーム(ソシャゲ)は、無料でアプリをインストールできるものが多く、手軽に遊ぶことができます。

しかし、ゲーム内に登場するキャラクターやアイテムを入手するためには、特定のゲーム内アイテム(通称「石」)を消費して利用できる「ガチャ」という方法を利用しなければならないものがあります。

このガチャを利用することで、キャラクターやアイテムをランダムで入手できるシステムとなっているのです。

ガチャを利用するための石は無料プレイでも入手できますが、無料の範囲では集まる数が少なく、目当てのキャラクターやアイテムを入手できないことが多くなってしまいます。

そこで、別途石を有料で購入できるようにして、ガチャを好きなだけ利用するためにはお金を支払わなければならないという仕組みになっているのです。

もちろん、ガチャからの排出はランダムですから、数回程度で目当てのものが入手できれば大きな支出にはなりません。

しかし、レア度の高いものだと排出率が数%とされていることが多く、計算上は目当てのものを確実に手に入れるために数万円がかかることになってしまいます。

ガチャで手に入るものは定期的に変わるため、その都度満足するまで有料の石を購入してガチャを利用し続けると利用額がどんどん増加していくという仕組みになっているのです。

(2)課金制アプリに熱中するリスク

(1)のとおり、ガチャから排出されるキャラクターやアイテムに執着して熱中しすぎると、利用額が大幅に増加してしまうリスクがあります。

有料石の購入数に上限があることはほとんどなく、いくらでもお金を使えてしまうため、利用額が増加して趣味の範囲で使える金額を超え、貯蓄などから賄わなければならない可能性が出てきます。

こうなると、そのうち借金をしてまで利用するようになり、アプリの利用に加えて月々の返済までしなければならなくなってしまいます。

課金制アプリの支払方法はクレジットカードやコンビニ払い、プリペイドカード、キャリア決済(スマホ料金と合算して支払う方法)など多種多様で、誰でも簡単に利用できるようになっています。

このことと相まって、知らないうちに借金が膨れ上がってしまうことがあります。

その結果、一つの金融機関からの借入れの上限に達してしまい、ほかの金融機関や業者から借入れを行い、多重債務状態に陥る可能性もあるでしょう。

そのため、借金が大きくなり過ぎないうちに早めに対処することが大切です。

なお、以下の記事で多重債務状態のリスク等についてまとめているので、あわせてご参照ください。

2024.02.27

多重債務を放置するリスクとは?主な解決方法を解説

2.課金制アプリの利用による借金の対処法

課金制アプリの利用によって多額の借金を負ってしまい返済が困難となった場合、債務整理によって解決できる可能性があります。

主な債務整理の方法は以下の3つです。

主な債務整理の方法

  1. 任意整理
  2. 自己破産
  3. 個人再生

順にご紹介します。

(1)任意整理

任意整理は、債権者と直接和解交渉を行うことによって返済の負担を軽減する手続です。

基本的には将来発生する利息のカットと5年程度の長期分割による返済の交渉をしていくことになります。

通常、借金を返済するときには元本と利息を含めた金額を支払わなければならず、元本が大きくなればなるほど利息の部分も大きくなるため、返済を行っても元本部分がなかなか減らずに完済ができないことがあります。

任意整理を行い利息をカットすることができれば、着実に残債を減らすことができ、完済を目指すことが可能です。

もっとも、任意整理を行うことには以下のようなメリット・デメリットもあります。

メリット デメリット
・将来利息のカット等により返済しやすくなる

・5年程度での返済スケジュールを立てられる

・家族や知人に知られるリスクが低い

・任意整理の対象となる債務を自由に選べる

・生活環境を変える必要がない

・任意整理に応じてくれない債権者もいる

・借金の大幅な減額は期待できない

課金制アプリの利用による借金の金額にもよりますが、利息を除いた元本部分を確実に返済できる見込みがあれば、任意整理で解決できる可能性があります。

任意整理については、以下の記事も参考になります。

2022.08.31

任意整理とは?仕組みをわかりやすく解説!

(2)自己破産

自己破産は、借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらった上で、一定以上の価値のある財産を換価して債権者に分配したあと、一部の債務を除いた借金について返済義務の免除(免責許可決定)を受ける手続です。

自己破産には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット デメリット
・借金が全額免除される ・家や自動車など資産価値が高い財産は手放さなければならない

・手続中の資格制限があり、該当する資格で仕事をしている場合には一時的に休職や転職を行わなければならない可能性がある

・官報に個人情報が掲載される

免責を受けることができれば借金の返済義務が免除されます。

ただし、課金制アプリの利用による借金は免責不許可事由に該当する可能性があることに注意が必要です。

免責不許可事由に該当すると、自己破産を行っても借金の返済義務が免除されない場合があります。

確かに、課金制アプリの利用で短期間で一挙に数百万円の借金を作ってしまったという場合は免責を受けられない可能性もありますが、少額の利用を長期続けたことで返済が難しくなったような場合で、借金の原因や経緯などについて真摯に反省して更生の余地があると裁判所が判断できるようなときには、課金制アプリの利用による借金でも免責を受けられる場合があります。

まずは免責を受けられる可能性があるかどうか、弁護士に相談してみましょう。

免責不許可事由の内容や該当する場合の対処法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

2023.03.31

免責不許可事由とは?自己破産で免責されないケース

(3)個人再生

個人再生は、借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもた上で、借金をその総額に応じて減額した金額を原則3年(特別な事情があれば5年)にわたって返済することで、残りの債務を免除してもらう手続です。

以下のように借金の総額に応じて、最大10分の1まで減額されます。

借金総額 最低弁済額
100万円未満 借金総額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 借金総額の5分の1
1500万円以上3000万円未満 300万円
3000万円以上5000万円未満 借金総額の10分の1

個人再生には、以下のメリットとデメリットがあります。

メリット デメリット
・借金が大幅に減額される

・手続中の資格制限が無く仕事の制限がない

・借金の理由に関係なく利用できる

・安定した収入がある人しか利用できない

・借金の総額が5000万円を超える場合は利用できない

・官報に個人情報が掲載される

ゲームアプリで月に数十万円を何か月にもわたって費やしてしまったような場合には、借金の総額も大きくなっており任意整理で解決を図ることは難しく、また免責不許可事由があるために自己破産もできないというケースもあります。

その場合は、個人再生を視野に入れた上で、弁護士に相談することがおすすめです。

なお、個人再生の具体的な要件について以下の記事で解説しているので、合わせてご覧ください。

2024.01.29

個人再生のための要件とは?弁護士が解説!押さえておきたい様々な要件

3.課金制アプリの利用による借金を防ぐ方法

課金制アプリの利用による借金の増加を防ぐ方法はいくつか考えられます。

主な対処法は以下のとおりです。

課金制アプリの利用による借金の増加を防ぐ方法

  1. クレジットカード決済をやめる
  2. 課金額に上限を設ける

順にご紹介します。

(1)クレジットカード決済をやめる

際限なく利用ができてしまう点を考えると、クレジットカード決済をやめることは重要な手段の一つです。

クレジットカード決済の場合、ショッピング枠の上限に達するまで利用できるため、利用額がかさんでしまうリスクが高まります。

そこで、支払金額をある程度調整できるデビットカードやプリペイドカードでの支払に変更することが考えられます。

デビットカードは紐付けしている口座に入っている金額しか利用することができないため、アプリ決済用の口座を作り、使用する金額を決めた分だけ入金しておけば、それ以上使うことはありません。

プリペイドカードは、事前にコンビニ等でチャージした分の金額の範囲で利用ができるので、チャージした分を使いきればそれ以上利用することができなくなります。

衝動的な利用を防ぐことにより、使いすぎを防ぐことが可能です。

(2)利用額に上限を設ける

毎月の利用額に上限を設けて、課金に使っている金額を随時把握することも重要です。

デビットカードやプリペイドカードは、利用額を調整できるものの、自分で管理しなければならず、口座やプリペイドカードに改めて入金すれば、結局は利用ができてしまいます。

そこで、デビットカードやプリペイドカードでの調整が難しい方は、支払方法をキャリア決済に選択して上限を設けるのがおすすめです。

キャリア決済の場合、設定した上限に到達すると強制的に利用ができなくなるため、必要以上に使いすぎることを抑制できます。

また、ゲームアプリによってはアプリ内で利用額に制限をかけられるものもあります。

このような機能を活用しながら利用額の把握と制限をしていきましょう。

まとめ

課金制アプリにおける有料アイテムの利用には中毒性があり、熱中しすぎると多額の債務を負ってしまう危険があります。

もし課金制アプリの利用がやめられずに困っている方は、利用額の上限を設けるなどの対策を施してみましょう。

また、課金制アプリの利用による借金の返済に困っている方は、債務整理をすることで解決することができる可能性があります。

課金制アプリの利用による借金で困っている方は、まずは弁護士に相談してみましょう。

弁護士法人みずきでは、借金に関する相談を無料で受け付けておりますので、課金制アプリの利用による借金にお困りの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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