小規模個人再生とは?要件や給与所得者等再生の違いを弁護士が解説

執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

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「小規模個人再生手続はどんな手続?」
「給与所得者等再生手続との違いが知りたい」

個人再生手続を行うことを検討されている方の中には、このような疑問をお持ちの方もいると思います。

小規模個人再生手続は、個人再生手続のうちの1つであり、給与所得者等再生手続といくつか違いがあります。

本記事では、小規模個人再生手続を行うための要件や給与所得者等再生手続との違いについてご説明します。

1.個人再生手続とは

個人再生手続には、大きく分けて小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続という2つの手続があります。

そもそも、個人再生手続は、裁判所に申立てをして借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらった上で、借金をその金額に応じた割合で減額し、原則3年間で返済する再生計画案について裁判所の認可を受けたら、その計画どおりに返済していく手続です。

任意整理よりも大きく債務額を減らすことができる手続であり、一般的には、ギャンブル等の浪費で借金を作ってしまい破産が難しい場合や、住宅ローンの残った自宅を手元に残したい場合に検討することが多い傾向があります。

利息だけでなく、元本まで減額を受けることができるため、返済の負担を大幅に軽減することができ、住宅資金特別条項(いわゆる「住宅ローン特則」)を利用することでローンが残っている住宅を手放すことなく債務整理を行えるのが大きなメリットです。

以下では、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の概要について解説します。

なお、住宅資金特別条項については、以下の記事でも解説していますので、利用を検討されている方はご参照ください。

個人再生のための要件とは?弁護士が解説!押さえておきたい様々な要件

(1)小規模個人再生手続

小規模個人再生手続は、民事再生手続の1つで、裁判所に申立てをして借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらった上で、債務の総額に応じて減額を受け、裁判所に提出する再生計画案に基づいて原則3年(最長5年)にわたって毎月一定額の返済を行うことで完済を目指す手続です。

将来に継続的な収入が見込まれる個人の債務者が対象となり、法人は適用対象外になります。

また、住宅ローンを除いた債務の総額が5000万円を超えないことも要件です。

債務総額に応じて、最大で10分の1まで減額を受けることができ、減額幅が後述する給与所得者等再生と比べて大きくなる傾向があることも特徴の1つです。

なお、給与所得者にあたる会社員や公務員などは小規模個人再生手続を行えないと思われる方もいるかも知れませんが、給与所得者でも小規模個人再生手続を行うことはできます。

そのため、個人再生手続を行う場合には、ほとんどのケースで小規模個人再生手続を行うことが多いです。

(2)給与所得者等再生手続

給与所得者等再生手続は、給与所得者などの安定した収入が見込める個人の債務者が対象となります。

具体的には、過去2年間の収入の変動幅が20%未満であることが要求されます。

例えば、年収が300万円の方であれば、過去2年間に60万円以上の増減が生じている場合には、給与所得者等再生手続を行うことはできません。

このように、給与所得者等再生手続では、小規模個人再生手続と比べると、収入に関する要件が厳格に定められていることに注意が必要です。

もっとも、手続の大まかな流れは小規模個人再生手続と給与所得者再生手続で異なるところはありません。

個人再生の手続の流れについては、以下の記事で解説していますので、合わせてご参照ください。

個人再生をするにはどのような手続が必要?流れや特徴を解説

2.小規模個人再生手続の要件

小規模個人再生手続を行うための要件には、大きく分けると2種類あります。

具体的には、以下のとおりです。

小規模個人再生手続の要件

  1. 開始要件
  2. 再生計画の認可決定要件

それぞれについてご説明します。

(1)開始要件

小規模個人再生手続は、裁判所に申し立てることによって、手続が開始します。

個人再生手続の開始の主な要件としては、以下のものが挙げられます。

個人再生手続の開始要件

  1. 債務者に破産手続開始の原因となる事実(支払不能)の生ずるおそれがあること
  2. 債務総額(住宅ローンを除く)が5000万円未満であること
  3. 定期的な収入を得る見込みがあること

順に解説します。

#1:債務者に破産手続開始の原因となる事実(支払不能)の生ずるおそれがあること

小規模個人再生を行う場合には、債務者に支払不能の生ずるおそれがあることが求められます。

具体的には、債務を弁済するために必要な資金が継続的に不足していることから、債務者が契約内容に従って返済を行うことが困難であることです。

そのため、生活資金をやりくりすれば借金の返済を行うことが可能である場合には、この要件を満たさないことに注意が必要です。

なお、返済に支障が生じるのは、利息の支払負担が大きいことにも原因があります。

将来の利息をカットすることで無理なく返済を行うことが可能な場合には、小規模個人再生ではなく任意整理を行うことが考えられるでしょう。

任意整理の概要やメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく取り上げていますので、合わせてご覧ください。

任意整理の返済期間はどのくらい?メリット・デメリットやおすすめの状況について説明

#2:債務総額(住宅ローンを除く)が5000万円未満であること

住宅ローンを除いた債務の総額が5000万円を超えないことも小規模個人再生を申し立てるための要件です。

小規模個人再生は、企業などが利用する民事再生手続を簡素化した手続であるため、債務の総額が5000万円を超えるような大規模な債務整理を扱うことはできません。

そのため、小規模個人再生を行う場合には、事前に債務の総額を把握しておく必要があります。

また、債務の総額が5000万円を超える場合には、弁護士に相談の上で自己破産を行うことも検討する場合があります。

自己破産については、以下の記事も参考になります。

自己破産の流れとは?免責許可が下りなかったときの対処法

#3:定期的な収入を得る見込みがあること

将来において反復および継続して収入を得る見込みがあることも、小規模個人再生を申し立てるための要件です。

小規模個人再生において再生計画が裁判所に認可された後には、再生計画に従って毎月一定額の返済を原則3年にわたって継続する必要があります。

そのため、その返済を滞らせることなく続けていくことができるだけの安定した収入を得る見込みがあることが、小規模個人再生を行う前提となると言えるでしょう。

なお、収入に関する要件については、給与所得者等再生ほどは厳格ではないことも押さえておきましょう。

(2)再生計画の認可決定要件

小規模個人再生を申し立てた後には、裁判所から指定された期日までに再生計画案を作成し、提出する必要があります。

再生計画案の内容について、裁判所の認可を受けて返済計画が開始されるためには、以下の要件を満たす必要があります。

再生計画の認可決定要件

  1. 再生計画案を提出していること
  2. 債権者の過半数の同意を得ていること

具体的に見ていきましょう。

#1:再生計画案を提出していること

個人再生手続では、再生計画案を作成し、期日までに裁判所へ提出しなければなりません。

提出の期日を1日でも過ぎてしまうと、手続が廃止(中止)となってしまうため、必ず期日までに提出する必要があります。

また、再生計画案は、個人再生手続で定められている最低弁済額基準または清算価値保障原則に基づいた基準のいずれかで算定し、返済計画を立てることになります。

このとき、計画に基づいた返済が実際に実現可能かどうか(履行可能性)判断され、実現可能な場合には認可決定が出ます。

先に述べた、最低弁済額は債務総額に応じて、以下のように定められています。

債務総額 最低弁済額
100万円未満 全額
100万円~500万円未満 100万円
500万円~1500万円未満 借金総額の5分の1
1500万円~3000万円未満 300万円
3000万円~5000万円未満 借金総額の10分の1

また、先に述べたようにこれとは別に清算価値保障原則という考え方もあります。

清算価値保障原則とは、個人再生における最終的な返済額が、債務者が仮に自己破産を選択した場合に債権者へ配当される金額を下回ってはならないという原則です。

清算価値保証原則は、自身の所有する財産をお金に換えたときにいくらになるのかという基準で算出されるので、不動産や預貯金など、高額な資産がある場合には同基準で算定される傾向があります。

清算価値の算定方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。

清算価値保障原則とは?弁護士が伝えたい個人再生の留意点

#2:債権者の過半数の同意を得ていること

小規模個人再生手続を行う場合には、再生計画案を裁判所に提出した後に書面決議と呼ばれる手続があります。

この書面決議において、債権者の過半数から再生計画案について同意を得ることが認可の要件となります。

裁判所が各債権者に対して再生計画案と議決書を送付し、債権者が議決書を裁判所に提出することによって決議が行われます。

裁判所が定めた期日内に、債権者の過半数が反対(不同意)を述べた場合や反対(不同意)を述べた債権者の債権額が債務総額の過半数を超える場合には手続は廃止(中止)となってしまいます。

3.小規模個人再生と給与所得者等再生の主な違い

小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続は、手続の流れは大きく変わりません。

もっとも、申立要件のうち収入に関する要件は、給与所得者等再生手続と比較すると小規模個人再生手続の方が緩やかに定められているなどの違いが見られます。

この2つの手続の大きな違いについては、以下が挙げられます。

小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の主な違い

  1. 計画弁済額の算定方法
  2. 債権者の同意の有無

それぞれについて見ていきましょう。

(1)計画弁済額の算定方法

小規模個人再生手続では、計画弁済額は債務総額に応じて減額した金額(最低弁済額)あるいは清算価値保障原則に基づく金額のいずれかによって算定されます。

不動産や車などの高額な財産を所有している場合には、清算価値保障原則に基づいて算出された金額が最低弁済額より高額になる傾向にあり、返済する金額が高額になる可能性があります。

これに対して、給与所得者等再生手続では、債務総額に応じた金額や清算価値保障原則のほか、計画弁済総額が再生債務者の収入や家族構成等を基礎に算出される「可処分所得」の2年分以上でなければならないという基準が設けられています。

可処分所得は、再生債務者の額面給与額から税金や生活費などを差し引いた残りの金額をいいます。

特に1人暮らしなどの場合には、生活費が低く計算されやすいため、可処分所得の金額が最低弁済額を上回り、最終的な計画弁済額が高額化する可能性があります。

そのため、小規模個人再生手続を選択した場合の方が返済額について大幅な減額を受けられる可能性が高くなります。

(2)債権者の同意の有無

小規模個人再生手続では、再生計画の認可に先立ち、債権者による書面決議を得ることが認可要件ですが、給与所得者等再生手続では債権者の同意は要件とされていません。

これは、一定額の弁済原資が確保されていることから債権者の同意は必要ないと考えられたためです。

給与所得者等再生手続においては、債権者の意見聴取が行われますが、ここで債権者が反対(不同意)を述べたとしても、裁判所は他の要件を満たす限り再生計画の認可決定を行います。

そのため、債権者の過半数が反対(不同意)を述べることが予想される場合には給与所得者等再生手続を行うことも考えられます。

もっとも、債権者が再生計画案に対して反対(不同意)を述べるケースは多くありません。

また、給与所得者等再生手続では、申立要件が細かく定められていることや最低弁済額が高額化するリスクなどがあるため、小規模個人再生手続が選択される場合がほとんどです。

まとめ

本記事では、小規模個人再生手続の要件や給与所得者等再生手続との違いについて解説しました。

小規模個人再生手続は、給与所得者等再生手続と比べると、大幅な返済額の減額を受けられるなどのメリットがあるため、個人再生手続を検討されている場合には、小規模個人再生手続を行うことが望ましいでしょう。

借金問題にお悩みであり、個人再生手続を行うことを検討されている場合には、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの債務整理の手続に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、個人再生を行うことを検討の方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
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