肋骨骨折で後遺症が残ったときの対応とは?請求できる賠償金の内容

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「交通事故が原因で肋骨を骨折して後遺症が残ったときはどうしたらいいのか」
「肋骨骨折の場合、どのような後遺症が残る可能性があるのか」

交通事故によって肋骨を骨折された方の中には、後遺症が残ったときにどうすればよいか調べている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、肋骨骨折で認定される可能性のある後遺障害等級や適切な賠償を得るためのポイントについてご紹介します。

1.肋骨骨折と主な症状

交通事故により、胸部に強い衝撃が加わると肋骨を骨折する可能性があります。

ここでは、肋骨骨折の主な症状についてご紹介します。

(1)肋骨骨折と交通事故

肋骨は前胸部の胸骨とともに、心臓や肺などの胸部の臓器を覆って保護している骨です。

交通事故の際、たとえば急ブレーキを踏んだ際にシートベルトが胸部に食い込んだり、エアバッグやハンドルに胸部を強く打ちつけたりすることで、強い外力が胸部に加わることによって生じることがあります。

この部分に骨折が生じると臓器にまで損傷が及び、肺の損傷による気胸などを併発するリスクがあります。

そのため、肋骨骨折をした場合は、放置をせずにすぐに処置をしてもらう必要があります。

交通事故で胸部を強く打ち付けたあと呼吸をした際、胸部に強い痛みを覚えるというような方は、早急に医療機関で検査や必要な治療を受けましょう。

(2)主な症状

肋骨を骨折すると損傷部分に強い痛みが生じ、たとえば、体を動かしたときや深呼吸をして肺を膨らませたときに痛みが生じやすいです。

また、骨折部分が皮下出血をして、患部が腫れたり皮膚が紫色に変色したりすることもあります。

さらに、肋骨骨折に周囲の組織に損傷が生じた場合は、先に触れた気胸(肺の一部が破れてしまうこと)や血胸(胸部の空間に血がたまってしまうこと)による呼吸不全を伴うことになり、速やかな外科的処置が必要となる場合もあります。

2.肋骨骨折で認定されうる後遺障害等級

肋骨に骨折が生じた場合には、骨の変形癒合や慢性的な痛みといった症状が残存する可能性があります。

肋骨骨折によって認定される可能性がある後遺障害は、以下のとおりです。

肋骨骨折で認定されうる後遺障害

  1. 変形障害
  2. 神経症状

それぞれについてご説明します。

(1)変形障害

変形障害とは、骨がずれてくっついてしまった状態のことで、肋骨が元どおりにならないことによって変形が生じた状態を指します。

肋骨骨折の変形障害によって認定される可能性のある後遺障害等級は、12級5号です。

後遺障害等級 認定基準
12級5号 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

12級5号の認定基準となっている「著しい変形」は、裸体になったときに変形が明らかになっていることがわかる場合に認められます。

つまり、レントゲン検査の結果で判断できるだけでは足りません。

12級5号の認定を受けるためには、申請時に変形部位の写真を添付することにより、明らかな変形があることを証明することが必要です。

(2)神経症状

神経症状とは、神経を圧迫し、断続的に痛みやしびれが残っている状態のことです。

肋骨骨折の神経症状の場合、以下の等級が認定される可能性があります。

後遺障害等級 認定基準
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

12級13号と14級9号の認定基準の違いは、「頑固な」という文言の有無だけですが、具体的には大きな違いがあります。

12級13号の認定を受けるためには、骨折部の不正癒合(ずれてくっついてしまうこと)など、症状の原因がCT、MRI検査などの画像所見上で明らかであり、後遺症の残存を医学的に証明できることが求められます。

一方、14級9号の認定を受けるためには、症状の原因が画像所見上は明らかでないものの、治療経過等から後遺症の残存を医学的に説明できることが求められます。

このように、認定を目指す等級によって必要な検査が異なることに注意が必要です。

3.肋骨骨折で適切な賠償を得るためのポイント

交通事故を原因とする肋骨骨折で適切な賠償を得るためには、いくつかポイントがあります。

主なポイントは以下の4つです。

肋骨骨折で適切な賠償を得るためのポイント

  1. 適切な期間と頻度で通院・治療を継続する
  2. 後遺症が残存した場合には後遺障害等級の認定申請を行う
  3. 弁護士に相談する
  4. 請求できる損害項目を把握しておく

順にご紹介します。

(1)適切な期間と頻度で通院・治療を継続する

適切な期間と頻度で通院・治療を継続することが大切です。

後遺症が残存した場合には、後述する後遺障害等級の認定申請を行うことを検討することになります。

変形障害の場合はあまり関係ありませんが、神経症状によって後遺障害の認定を受けるためには6か月程度は治療を継続していることが目安となります。

また、通院の頻度も、たとえば1か月に1回といった低頻度にならないことが望ましいとされています。

もちろん、通院頻度の維持などは仕事や家事等の事情によって難しい場合もあるとは思います。

しかし、極端に通院頻度が低いと、残存症状も軽いものとされ後遺障害等級の認定を受けることが難しくなる可能性があることは覚えておきましょう。

(2)後遺症が残存した場合には後遺障害等級の認定申請を行う

後遺症が残存した場合には、後遺障害等級の認定申請を行うことになります。

後遺障害等級の認定を受けることによって、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益の支払を受けられるようになります。

認定申請の方法は、加害者側の任意保険会社に手続を依頼する「事前認定」と被害者自身が認定申請を行う「被害者請求」の2つです。

事前認定の場合、被害者本人は後遺障害診断書を医師に書いてもらい、加害者側の任意保険会社に提出するだけでよく、手続にかかる負担は少なくなります。

しかし、後遺障害診断書以外の書類も加害者側の任意保険会社が収集することになるため、そこに被害者にとって不利な記載があっても確認することができませんし、十分な資料がそろわない状態で申請が行われる可能性があります。

これによって、本来の症状よりも症状が軽いと判断され、適切な等級認定を受けられない可能性が出てきてしまいます。

一方、被害者請求は手続に必要な書類や資料をすべて自分で準備するため、手間はかかるものの、書類の内容や添付資料が十分であるかどうかを事前によく検討することができます。

そのため、適切な等級認定を受けられる可能性が高いのは被害者請求である、といえます。

後遺障害等級の認定申請は、被害者請求で行うことがおすすめです。

なお、以下の記事で被害者請求の方法について解説しているので、あわせてご参照ください。

後遺障害等級認定の被害者請求とは?メリット・デメリットと主な流れを解説

(3)弁護士に相談する

交通事故の被害に遭ったら、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することで、治療に関する的確なアドバイスを受けられるようになり、示談交渉で有利になるように準備を進められる点がメリットです。

また、示談交渉を弁護士に依頼することで、事故の状況をもとに適切な賠償金の算定・請求を行うことができます。

裁判所(弁護士)基準で賠償金の算定・交渉もできるので、賠償金の増額も期待できる点が魅力です。

後遺症が残った場合の対応についてもサポートを受けることができ、後遺障害等級の認定申請を依頼することもできるため、交通事故の法的対応について総合的なサポートやアドバイスを受けることが可能です。

(4)請求できる損害項目を把握しておく

後遺症が残ったときに請求できる損害項目も把握しておきましょう。

交通事故による被害によって治療費や傷害(入通院)慰謝料、休業損害を請求できますが、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取ることができるようになります。

各項目について説明しますので、どのくらいの費用を請求できる可能性があるのか確認してみましょう。

#1:後遺障害慰謝料

後遺障害等級の認定結果に応じて、後遺障害慰謝料を請求できます。

12級と14級の後遺障害慰謝料は以下のとおりです。

後遺障害等級 自賠責基準 裁判所(弁護士)基準
12級 94万円 290万円
14級 32万円 110万円

自賠責基準と裁判所(弁護士)基準ではかなりの差があるため、より多く慰謝料を請求して受け取るためには、示談交渉は弁護士に依頼しましょう。

#2:逸失利益

逸失利益とは、後遺症によって将来得られなくなった損失のことで、以下の算定式によって導くことができます。

逸失利益の算定式

  • 基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入は、交通事故の前年の1年間の収入のことで、労働能力喪失率は、後遺障害によって労働能力がどの程度低下したかを示す数値のことです。

12級と14級の労働喪失能力は以下のように定められています。

後遺障害等級 労働喪失能力
12級 14%
14級 5%

ただし、変形障害の12級5号の場合は、骨に変形が生じただけで労働能力に影響はなく、将来の減収はないと加害者側の保険会社から主張されるケースがあります。

もっとも、弁護士に示談交渉を依頼することで、将来の労働に与える具体的な影響について反論・立証を効果的に行うことが可能です。

逸失利益の算定や主張・立証は専門知識や実務経験を要することが多く、複雑な考慮も必要であることから、適切な金額を受け取るためには弁護士に相談・依頼することが何よりも重要です。

なお、逸失利益については以下の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。

逸失利益をわかりやすく解説!種類や計算方法・発生するケースとは?

まとめ

肋骨骨折で後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定申請を行うことを検討しましょう。

後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。

適切な賠償金を請求するためには、弁護士に相談して、適切なアドバイスを受けるのがおすすめです。

弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、肋骨骨折の後遺症を患った方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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