眼窩底の骨折によって起きる後遺症とは?賠償を受けるまでの流れについてもご説明します
「交通事故に遭い、眼窩底骨折と診断された」
「眼窩底骨折で後遺症が残った場合の手続きが知りたい」
眼窩底を骨折し後遺症が残れば、日常生活にさまざまな影響を与えます。
この記事では、眼窩底骨折によって引き起こされる症状や後遺症のほか、その後の対処方法もご説明します。
事故で怪我を負い悩まれている方の参考になれば幸いです。
1.眼窩底骨折による症状
眼球がはまっているくぼみを眼窩といい、眼球を支えている下の部分の骨が眼窩底です。
眼球の下は骨が薄いことから、外から強い力が加わると骨折してしまい、これを眼窩底骨折といいます。
眼窩底骨折は眼底骨折や眼窩吹き抜け骨折などと呼ばれることもありますが、意味はすべて同じです。
特にバイク事故によって生じることが多く、顔面を塀や道路に強く打ち付けることで折れてしまうため注意が必要です。
眼窩底骨折が生じることで、以下のような症状が現れます。
- 視力低下
- 視野障害
- 眼球陥凹
- 複視
- 麻痺(神経症状)
それぞれについてご説明します。
(1)視力低下
眼窩底骨折が生じるほどの衝撃や圧力が加わった場合、眼球自体や視神経に影響が生じてしまう場合もあります。
その結果、事故前よりも視力が低下してしまうことがあります。
(2)視野障害
半盲症や視野変状などの視野障害が起きることもあります。
半盲症とは、両目の視野の左右どちらか半分の視野が欠損する症状です。
視野変状とは、視野の一部が欠損することです。
(3)眼球陥凹
眼球陥凹とは、目が奥に引っ込んだ状態です。
目の周りにある眼窩底を骨折することで眼球を支えることができず、眼が落ち窪んでしまうため、このような症状が現れることがあります。
(4)複視
視力以外にも、ピントの調節機能がうまく作用しなくなってしまうこともありえます。
その場合、ものが二重で見えるなどの影響が生じてしまいます。
(5)麻痺(神経症状)
眼窩底はすぐ近くを知覚神経が通っており、眼窩底を骨折したことで神経も損傷を受けることがあります。
眼窩底骨折によって、知覚神経まで損傷を受ければ、頬から上唇周辺の感覚に麻痺が生じる可能性があります。
2.眼窩底骨折により起こる後遺症と後遺障害等級の認定基準
眼窩底を骨折すると後遺症が残ることがあり、その内容はさまざまです。
具体的には、以下の後遺症が残存する可能性があります。
- 視力障害
- 運動障害
- 醜状障害
- 複視
- 神経症状
また、後遺症の種類や程度によって認定されうる後遺障害等級に違いがあります。
順に解説します。
(1)視力障害
視力を失ったり視力が低下したりし、回復しない場合、後遺障害として認められます。
視力障害が生じているのが両目か片目か、視力の低下の程度によって認定される等級が異なります。
後遺障害等級 | 認定基準 |
1級1号 | 両眼が失明したもの |
2級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの |
2級2号 | 両眼の視力が0.02以下になったもの |
3級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの |
4級1号 | 両眼の視力が0.06以下になったもの |
5級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの |
6級1号 | 両眼の視力が0.1以下になったもの |
7級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
8級1号 | 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの |
9級1号 | 両眼の視力が0.6以下になったもの |
9級2号 | 1眼の視力が0.06以下になったもの |
10級1号 | 1眼の視力が0.1以下になったもの |
13級1号 | 1眼の視力が0.6以下になったもの |
認定基準となる視力の測定は、裸眼ではなく、眼鏡やコンタクトを用いた矯正視力で測定されます。
そのため、矯正視力での視力検査を受けることが等級認定の際に重要です。
(2)運動障害
人間の眼球は、外眼筋と呼ばれる筋肉によって正常な位置が保たれています。
合計で6つの外眼筋があり、いずれかの筋肉が機能しなくなれば麻痺性斜視(左右の眼球の視線が合わない状態)となり、その外眼筋が作用する方向の眼球の運動が制限されるのです。
このような眼球の動かしづらさによる運動障害では、程度に応じて以下の等級に認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 認定基準 |
11級1号 | 両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
「著しい運動障害」とは、頭を動かさない状態で眼球を動かすときに見える範囲(注視野)が正常な場合と比べて半分以下になることです。
(3)醜状障害
醜状障害とは、目の周辺に傷が残ることです。
眼窩底骨折は顔面を強く打ちつけることで発生するため、顔に傷跡が残る場合があります。
醜状障害も後遺障害として認められており、程度に応じて以下の等級に認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 認定基準 |
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
醜状障害では、傷跡の形状や面積によって具体的な等級が決まります。
傷跡には手術痕も含まれますが、眉毛や頭髪などで隠すことができる場合、人目に付かないものとしていずれの等級にも認定されないことに注意が必要です。
(4)複視
複視とは、物が二重に見える状態であり、眼窩底骨折により眼の筋肉が損傷することで引き起こされます。
複視の後遺障害等級認定の基準は、正面を見た時とそうでない時によって認定される等級が分かれています。
後遺障害等級 | 認定基準 |
10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
また、等級の認定を受ける場合、以下の3つの条件が揃っていることが必要です。
- 本人が複視があることを自覚していること
- 眼筋の麻痺などの複視を残す原因が明らかに認められること
- へスクリーンテストにより異常のある方の像が水平方向又は垂直方向の目盛りで5度以上離れた位置にあることを確認できること
(5)神経症状
眼窩底骨折が生じることで、目の付近などに痛みが残存した場合、神経症状として以下の等級に認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 認定基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号は、眼窩底骨折が生じたことで、レントゲンやMRI検査などの画像所見によって神経症状が残存していることが医学的に証明できる場合に認定されます。
14級9号は、神経症状の原因が画像所見では明らかになっていないものの、治療経過や症状の一貫性・連続性から、神経症状の残存が医学的に説明できる場合に認定がされます。
3.眼窩底を骨折後の賠償までのポイント
眼窩底を骨折した場合は、どのような点に気をつけながら進めて行くべきでしょうか。
適切な金額の慰謝料を受け取るためにも、早めの行動が大切です。
(1)医師の指示のもと必要な治療を受ける
眼窩底骨折がある場合、まずはきちんと治療をする必要があります。
特に、骨折の状態が重度の場合には、整復手術を行う必要がある場合もあります。
医学的に手術が必要であるにもかかわらず、放置してしまったりすると、その後に症状が残存したとしても賠償責任を問えない可能性が出てきてしまいますから、まずは主治医としっかりとコミュニケーションをとりながら、必要な治療を行っていきましょう。
怪我の状態に合わせた適切な補償を受けるためには、事故直後から必要な治療を適切な期間・頻度で受けることが何よりも重要です。
なお、通院頻度と慰謝料の関係については、以下の記事も参考になります。
(2)後遺障害等級の認定申請を行う
適切な治療を行い、それ以上の改善が見込めなくなったら、「症状固定」という状態になります。
この時期に、上で紹介したような症状が残っている場合には、後遺障害申請手続きを行うことを検討しましょう。
後遺障害等級が認定されれば、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
なお、後遺障害等級の認定申請については、以下の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
(3)弁護士に相談する
後遺障害申請の手続きや、相手方との示談交渉などは、法律の専門家である弁護士に相談した方が安心です。
どのような検査が必要なのか、資料は十分なのか、どの程度の賠償金が適正なのかなど、考えなければならないことはたくさんあります。
その一つ一つを、被害者自身で調べながら行うのはとても大変なので、弁護士に任せてしまうことで精神的にも楽になります。
また、示談の際には慰謝料を請求することになります。
慰謝料の金額の算出には、自賠責基準と任意保険基準、裁判所(弁護士)基準の3つがあります。
自賠責基準は必要最低限の補償を目的としていることから、慰謝料の金額は3つの基準の中で最も低額です。
任意保険基準は任意保険会社が独自に定めており、内容は非公開ですが慰謝料の金額は自賠責基準と同程度と言われています。
これらに対して、裁判所(弁護士)基準は過去の判例をもとにした基準であり、最も高額かつ適切な慰謝料を請求し、受け取ることができます。
ただし、この基準で算出した慰謝料を用いるためには弁護士への依頼が必要です。
例えば、眼窩底骨折の場合の後遺障害慰謝料は、等級に応じて以下のように金額が定められています。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 裁判所(弁護士)基準 |
1級 | 1150万円(1100万円) | 2800万円 |
2級 | 998万円(958万円) | 2370万円 |
3級 | 861万円(829万円) | 1990万円 |
4級 | 737万円(712万円) | 1670万円 |
5級 | 618万円(599万円) | 1400万円 |
6級 | 512万円(498万円) | 1180万円 |
7級 | 419万円(409万円) | 1000万円 |
8級 | 331万円(324万円) | 830万円 |
9級 | 249万円(245万円) | 690万円 |
10級 | 190万円(187万円) | 550万円 |
11級 | 136万円(135万円) | 420万円 |
12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
13級 | 57万円(57万円) | 180万円 |
※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
適切な賠償を受けるためには、弁護士に依頼して裁判所基準による計算をする必要があります。
保険会社の提示してくる金額ですぐに示談しないように気をつけましょう。
まとめ
眼窩底の骨折は、日常生活にも支障をきたす可能性があります。
怪我についてお悩みの方は、一人で抱え込まず弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人みずきは交通事故問題に精通している弁護士が多数在籍しておりますので、お気軽にご相談ください。
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