債務整理のタイミングとは?始めるべき時期や債務整理の方法、弁護士に相談するメリット

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「債務整理はどのタイミングで始めるべきなのか」
「債務整理って具体的にどのようなことをするのか」

借金の返済で困っている方の中には、債務整理をしようか迷っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、債務整理をすべきタイミングや債務整理が具体的にどんな手続きなのかについてご紹介します。

1.債務整理のタイミング

債務整理をするタイミングとして借金の返済が困難になったときです。

具体的なタイミングとしては以下のようなときが考えられます。

債務整理のタイミング

  1. 利息の支払で精一杯になって借金を減らせないとき
  2. 毎月の約定どおりの返済ができなくなったとき
  3. 借金の返済のために借入を繰り返し出したとき
  4. 月々の借金返済額が月収の3分の1以上を占めている

順にご紹介します。

(1)利息の支払で精一杯になって借金を減らせないとき

債務整理をするきっかけの1つは、利息の支払で精一杯になって一向に借金の元金を減らすことができないときです。

借金の返済は、元金に加えて利息を支払わなければなりません。

また、毎月の借金の返済に払ったお金はまず利息の分から支払われるため、月々の返済金額で利息の占める割合が高くなると、なかなか元金が減らない状況になります。

それでも少しずつでも元金を減らしていくことができればよいのですが、利息の支払いだけで毎月精一杯の状況までになってしまうと借金を減らしていくことができなくなります。

このようなタイミングは債務整理を検討するべき状況といえます。

たとえば債務整理の中の任意整理という手続きを行って、利息のカットを交渉することで、毎月の返済によって借金を減らしていくようにできれば、完済に向けて計画的に返済ができるようになります。

(2)毎月の約定どおりの返済ができなくなったとき

毎月の約定どおりの返済ができなくなったときも債務整理を検討すべきタイミングです。

貸金業者と定めている毎月の返済日に返済ができなくなると、その滞納期間に応じて、次のようなことが生じます。

借金の返済を滞納することで生じること

  • 信用情報機関に事故情報が登録されて、クレジットカードやローンが利用できなくなる
  • 債権者から頻繁に督促がくるようになる
  • 最終的には訴訟の提起や財産の差押えが行なわれる

返済を滞納している期間が長引いてしまうと、収入のアップや臨時収入がない限り、元のスケジュールに戻して返済を継続することが困難になってきます。

このような状態も、少しでも早く滞納している状態を解消して、借金の完済に向けて立て直すために債務整理を検討するべきタイミングといえます。

なお、借金の取立ての流れについては、以下の記事で取り上げていますので、合わせてご確認ください。

借金の取り立てへの対処法とは?取り立て方法や主な流れを解説

(3)借金の返済のために借入を繰り返し出したとき

借金の返済のために借入を始めたときも債務整理を検討するタイミングになります。

月々の借金の返済がご自身の収入だけで賄えなくなり、返済のために新たに借入を繰り返し出すようになると、当然ながら借金の総額は減ることはありません。

むしろ、新たに借金をして他社の借金の利息を払っているわけですから、借金の総額は増えていくことになります。

また、そのうち限度額に到達すると借入ができなくなるので、そこで返済困難に陥ってしまうことになります。

このような多重債務状態(複数の貸金業者から借金をしている状態)は、自力では脱却が困難なため、弁護士に相談をして債務整理を行うべきタイミングといえるでしょう。

なお、多重債務の状態を放置するリスクについては、以下の記事も参照ください。

多重債務を放置するリスクとは?主な解決方法を解説

(4)月々の返済額が月収の3分の1以上を占めている

月々の借金返済額が月収の3分の1以上を占めている場合も、債務整理を検討するべき状況といえます。

貸金業法では、貸金業者に対して年収の3分の1を超える貸付を行ってはならないという規制(総量規制)を設けています。

総量規制は、借入れする方の返済能力を超える過剰な貸付を禁止し、多重債務者を生じさせないようにする趣旨の規制です。

このように、月収の3分の1以上を借金の返済に充てている場合、生活が破綻する可能性が高いといえる状況であるといえるため、債務整理を検討するべきタイミングになります。

2.債務整理の方法

これまで債務整理を行うべきタイミングについて説明しましたが、その債務整理には主に3つの手続きがあります。

債務整理の方法

  1. 任意整理
  2. 個人再生
  3. 自己破産

借金の総額や収入、資産などの状況に応じて利用する手続きを決めることになります。

各方法のメリット・デメリットについて説明しますので、それぞれどのような手続きなのか参考にしてください。

(1)任意整理

任意整理は、債権者と直接交渉を行い、毎月の返済額の減額や利息のカットを行うことによって返済の負担を軽減する方法です。

債権者との交渉によって、返済のスケジュールを変更し、借金を3~5年かけて返済することになります。

任意整理のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
・将来利息のカット等により返済しやすくなる

・3年あるいは5年にわたって毎月の返済額を無理のない金額にした返済スケジュールを立てられる

・家族や知人に知られるリスクが低い

・任意整理の対象となる借金を選べる

・生活環境を変える必要がない

・任意整理に応じてくれない債権者もいる

・借金の元金自体の減額は期待できない

・信用情報機関に一定期間登録される

今の収入で、借金を3~5年の分割払いにすれば返済できる方は、まずは任意整理を検討してみましょう。

任意整理については、以下の記事でも説明していますので、合わせてご参照ください。

任意整理の返済期間はどのくらい?メリット・デメリットやおすすめの状況について説明

(2)個人再生

個人再生は、借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらい、借金の総額に応じて借金を5分の1などに大幅に減額してもらう手続きです。

任意整理は借金の元金自体が減額されませんでしたが、個人再生は、借金の元本までが大幅に減額できる手続きです。

以下のように借金の総額に応じて減額を受けることができます。

借金総額 最低弁済額(手続き後に返済する金額)
100万円未満 借金総額
100万円以上500万円以下 100万円
500万円超え1500万円以下 借金総額の5分の1
1500万円超え3000万円以下 300万円
3000万円超え5000万円未満 借金総額の10分の1

注意しなければならないのは、借金の総額が100万円未満のときは減額されない点です。

また、個人再生の利用は借金の総額が5000万円未満までが対象となっています。

個人再生のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
・借金が大幅に減額される

・自己破産と異なり、手続中の資格制限が無く仕事の制限がない

・借金の理由に関係なく利用できる

・安定した収入がある人しか利用できない

・借金の総額が5000万円を超える場合は利用できない

・官報に個人情報が掲載される

・信用情報機関に一定期間登録される

個人再生を行うためには、安定した収入があるなどの要件を満たす必要があります。

他にも、不動産や車、預貯金などの高額な財産を所有している場合は、返済しなければいけない金額が高額になる可能性もあります。

まずは弁護士に相談して、個人再生の要件を満たしているかどうかの確認をしましょう。

個人再生の要件や注意点については、以下の記事でも紹介していますので、参考にしてください。

個人再生のための要件とは?弁護士が解説!押さえておきたい様々な要件

清算価値保障原則とは?弁護士が伝えたい個人再生の留意点

(3)自己破産

自己破産は、裁判所に借金の返済が不可能であることを認めてもらい、全ての借金の返済義務を免除してもらえる手続きです。

借金の全額が免除されるという大きなメリットがある反面、以下のようなデメリットもあります。

メリット デメリット
・借金が全額免除される ・家や自動車など資産価値が高い財産は手放さなければならない

・資格制限があり、該当する資格で仕事をしている場合には一時的に休職や転職を行わなければならない可能性がある

・官報に個人情報が掲載される

・信用情報機関に一定期間登録される

ギャンブルなど借金の原因によっては免責不許可事由(法律によって裁判所が原則免責を認めないと規定された事由)として免責許可が受けられない可能性もあります。

ただし、免責不許可事由に該当していても、真摯に反省しているなどの更生の余地が認められる場合には、裁判所の裁量によって免責を受けることができますので、まずは弁護士に相談してみましょう。

なお、以下の記事で免責不許可事由について詳しく解説しているので、合わせてご参照ください。

免責不許可事由とは?自己破産で免責されないケース

3.債務整理をするなら弁護士に相談

借金の返済でお困りの方は、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することで、ご自身の状況に合った方法の提案を受けることができます。

借金問題の相談については、法律事務所が無料で対応していることも多くあります。

また、そのまま相談をした結果、債務整理を行う場合にはそのまま手続きを依頼できるため、円滑に進めることができます。

債務整理を進めるにあたっては、任意整理では貸金業者との間で交渉が必要であり、個人再生や自己破産では裁判所に申し立てるための書類の作成や資料の収集が必要となります。

これらは専門的な知識や経験がなければ、自力で行うのは困難なため、弁護士に任せるのがよいでしょう。

まとめ

債務整理をするきっかけは様々ですが、なるべく借金が膨れ上がる前に動くことが大切です。

弁護士と話して状況を整理するだけでも生活の立て直しに向けて問題点の解消につながることもあります。借金の金額によって選択できる手続きが変わることもあります。

債務整理については弁護士に相談することで、ご自身の状況に合った手続きの提案を受けられるため、借金の返済が苦しくなってきたと感じたら、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、債務整理に関する相談を無料で受け付けておりますので、返済でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。