ファクタリングが会社の破産に与える影響とは?弁護士がリスクを解説

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

この記事の内容を動画で解説しております。

あわせてご視聴いただければと思います。

「ファクタリングで資金調達を行うことにはどんなリスクがある?」
「ファクタリングを続けていると法人破産手続にどんな影響があるか知りたい」

会社、法人の資金繰りが悪化し、ファクタリングの利用について、このような心配や不安をお持ちの経営者や役員の方もいらっしゃるかと思います。

本記事では、ファクタリングのリスクや法人破産の手続きを早期に弁護士へ相談することのメリットなどをご説明します。

1.ファクタリングの概要とリスク

ファクタリングは、簡便な手続きで資金調達を行うことができるため、資金繰りが悪化していて銀行から融資を受けることが困難な会社でも現金を手に入れることができます。

もっとも、ファクタリングを繰り返し利用することで、会社の収支に悪影響を及ぼしかねません。

また、資金繰りが悪化して事業継続が困難となった場合には、法人破産を行うことが考えられますが、ファクタリングの継続利用によって、法人破産を行うことが困難になるというリスクがあります。

以下では、ファクタリングの概要や、その継続的な利用が会社や法人破産手続に及ぼすリスクについて説明します。

(1)ファクタリングとは

ファクタリングとは、会社、法人が有する債権を履行期が到来する前に第三者に譲渡し、現金化する資金調達の方法です。

売掛金債権や請負代金債権などが主にファクタリングに利用される債権になっています。

ファクタリングを利用することで、その債権の支払期日前に、機動的かつ簡便に現金を手にすることができるという利点があります。

銀行などの金融機関から融資を受ける際には厳格な審査があるため、たとえ会社が債権を持っていたとしても、資金繰りが悪化しているような状況では融資を断られるケースが多いです。

また、融資の審査自体に1か月程度の期間を要するため、融資を受けられるとしてもすぐに資金調達を行えるわけではありません。

そのため、ファクタリングは、資金繰りが悪化し、すぐに資金調達を行う必要がある場合に利用される資金調達の手段となっています。

もっとも、ファクタリングを利用することには、このようなメリットだけでなく、デメリットもあります。

デメリットについて、次のようなものがあります。

(2)ファクタリングのリスク

ファクタリングを繰り返し利用することで、会社に以下のような悪影響を及ぼすリスクがあります。

ファクタリングのリスク

  1. 会社の支出が増加していく
  2. 法人の破産手続を行うのに困難を生じることがある

順にご説明します。

#1:会社の支出が増加していく

ファクタリングを利用する際には、ファクタリング会社から、債権を譲渡することによって債権額の全額を受け取れるわけではなく、高額な手数料が差し引かれた金額を受け取ることになります。

ファクタリングの事業者によっても異なりますが、10~30%ほどの手数料がかかるのが一般的です。

そのため、会社が持っている債権の現金化とはいうものの、実際には会社に入る現金は債権額から目減りした金額になります。

また、一度ファクタリングを行ってしまうと、現金化するために譲渡した債権は当然支払期日に会社へは支払われませんので、再び会社の運転資金が不足することにもなりかねず、その時点で会社が持っている債権を再度ファクタリングを利用して資金にせざるを得ない状況に陥ることも考えられます。

そうすると、会社がもっている債権について、債権額から目減りした金額しか手元に入らないことになってしまいますので、結果として資金繰りがさらに悪化することを招くことにつながってしまいます。

#2:法人の破産手続を行うのに困難を生じることがある

会社の資金繰りが悪化し、負債の支払いができなくなった場合には、破産手続を行うことが考えられます。

しかし、ファクタリングを繰り返し利用した結果、会社の債権が目減りして財産が減少していき、資金が底をついてしまった場合、破産手続を依頼する弁護士の費用や、裁判所に納める予納金という費用を捻出できなくなってしまいます。

そうすると、会社が破産手続を進めることに困難が生じてしまいますので、会社の資金が底をつく前にまずは弁護士に相談しておくことをおすすめします。

2.法人破産の流れ

法人破産は、以下の流れで手続きが進行します。

法人破産の流れ

  1. 破産手続開始の申立て
  2. 破産管財人の選任
  3. 破産手続開始決定
  4. 予納金の納付
  5. 債権者集会
  6. 配当・清算結了

それぞれの内容とポイントについて解説します。

(1)破産手続開始の申立て

法人破産は、裁判所に申し立てることによって手続きが開始されます。

申し立てることができる者は、債務者自身である会社や会社の債権者など一定の範囲に限定されています。

また、債務者である会社自身が申立てを行う際には、申立書類のほかにも会社の財産や財務状況を記載した添付書類を提出する必要があります。

これらの書類の作成・収集は実務経験がない場合にはスムーズに進めることが困難なことが多いため、弁護士に依頼して進めることが望ましいです。

なお、法人破産の提出書類の概要については、以下の記事でも詳しく取り上げているため、合わせてご参照ください。

法人破産の申立てに必要な提出書類について弁護士が解説

(2)破産管財人の選任

破産管財人とは、破産申立をした会社の財産を管理、換価し、破産手続を進める者を言います。

通常、弁護士の中から選任され、破産申立をした会社に残った残余財産を手続の中で管理し、財産の換価処分して現金化した中から、債権者への配当を執り行うことが主な業務です。

なお、破産手続開始決定によって正式に破産管財人となる前の時点では、破産管財人は候補者として扱われるのですが、候補者の段階であっても、会社の法人印などの物品や関係資料はその候補者に引き継ぎます。

(3)破産手続開始決定

裁判所は、破産申立があると要件などの審査を行なったうえ、破産手続開始決定を行います。

破産手続開始決定があると、破産管財人の候補者は正式に管財人に就任し、管財人が会社の財産を管理します。

また、この際に債権者集会の日時など破産手続のスケジュールについても決定され、裁判所から、各債権者へ向けてそれらが載った破産手続開始の通知書が発送されます。

(4)予納金の納付

破産管財人が正式に就任すると、破産管財人によって、会社の財産管理を目的とする破産管財人名義の銀行口座が開設されます。

このときに、破産申立をした会社は、この口座に予納金や会社に残っているお金を振り込む必要があります。

予納金の金額や相場は会社の規模や負債額などの違いによって変動します。

破産管財人は、引き続き会社の財産の換価処分、負債の調査などの業務を進めていきます。

(5)債権者集会

債権者集会は、債権者に対して破産手続の進捗状況を報告するためのものです。

この債権者集会までに管財業務が完了し、配当すべき財産がなければそこで手続は終了します。

債権者に配当すべき財産が集まった場合には場合には、配当手続に進みます。

なお、債権者集会の内容については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。

法人破産手続の債権者集会とは?弁護士が流れや内容を徹底解説

(6)配当・清算結了

管財人が会社の財産について調査し、債権者に配当すべき財産があってそれを換価した場合には、債権者への配当が行われます。

債権者への配当の順位は法律に定められており、その順位に従って配当が行われます。

残余財産の配当が完了すれば、管財人が裁判所へそれらの結果を報告することによって、清算結了登記がなされます。

これによって会社は法人格を失い、手続が終了します。

なお、債権者への配当の順位については以下の記事も参考にしてください。

法人破産における債権者への配当の順番は?配当があるケースを弁護士が徹底解説

3.法人破産の手続について早期に弁護士に相談・依頼するメリット

法人破産を行うためには、裁判所へ納付する予納金のほか、弁護士に手続きを依頼する場合には弁護士費用が必要となります。

ファクタリングの継続的な利用によって会社の財産が底をつき、予納金や弁護士費用を捻出できない場合には、法人破産を行うことすら困難になります。

そのため、会社の財産が底をつく前に早期に弁護士に相談することが重要です。

弁護士に早期に相談・依頼することによるメリットには、以下のものがあります。

法人破産の手続について早期に弁護士に相談・依頼するメリット

  1. 申立書類の作成などを任せて手続きの終了までサポートを受けられる
  2. 手続の費用を低く抑えられる可能性がある

順にご説明します。

(1)申立書類の作成などを任せて手続きの進行までサポートを受けられる

法人破産を行う場合には、申立書類の作成や添付書類の収集、債権者や従業員への対応など様々な作業を進めていくことが必要になります。

専門知識や実務経験がない場合、これらを適切かつ円滑に進めていくことは困難です。

弁護士に早期に相談、依頼をすることで、書類の作成・収集について任せたり、サポートを受けることができます。

(2)手続の費用を低く抑えられる可能性がある

法人破産の手続では、債権者の数が少なく、負債総額が大きくない、といった規模の大きくない会社の場合、裁判所に納める予納金の金額もそれに伴って低くなります。

ただし、予納金の金額を低くするための条件として、破産申立を弁護士に依頼していることとなっていることがあります。

破産申立を弁護士に依頼することによって、事案の整理が図られ、裁判所や破産管財人の負担軽減が図られているということが考慮されているためです。

そのため、弁護士に早期に相談・依頼することで、予納金の金額を低く抑えて手続きを行うことができる可能性があります。

まとめ

本記事では、ファクタリングを利用することによって、会社や法人破産手続にどのような影響があるのか解説しました。

ファクタリングは会社の財産の目減りを招き、さらなる資金繰りの悪化につながることもあります。

会社の資金繰りが悪化している場合には、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの法人破産の手続に対応してきました。

弁護士が丁寧にお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。