親の借金は子供が返済すべきなのか?返済義務を負わないための対処法を解説

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「親の借金は子供が返さないといけないのか」
「親の借金を肩代わりせずに済む方法はないのか」

親が借金をしている方で、その借金を自分が返さないといけないのではないかと不安に思われている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、子供が親の借金の返済義務を負うかどうか、親の借金の返済義務を回避するための方法などについて解説します。

1.親の借金は子供にも返済義務があるのか

結論から述べると、原則として親の借金を子供が返済する必要はありません。

基本的に借金は借りた本人(親)が返済するものなので、たとえ家族であっても借りた本人ではない人間の借金の返済義務を負うことはありません。

子供が自ら親の借金を肩代わりして支払うこと(第三者弁済)は可能ですが、これは義務ではありません。

この原則を守らせるため、貸金業者が債務者以外の第三者に借金の返済を求めることは禁止されています(貸金業法21条1項7)。

これにより、貸金業者が親の借金を子供に請求してくることも、できないようになっています。

2.親の借金を子供が返済しなければならないケース

1で説明したとおり、親が借金をしているだけであれば子供が返済する必要はありません。

しかし、次のようなケースでは親の借金を子供が返済しなければならないことがあります。

親の借金を子供が返済しなければならないケース

1.親の財産を子供が相続している
2.子供が親の借金の保証人・連帯保証人になっている
3.親が子供の名義を使って借金をしている

順に説明いたします。

(1)親の財産を子供が相続している

親が死亡し、その財産を子供が相続した場合、子供が借金の返済義務も負うことになります。

相続の対象は一切の財産とされており、プラスの財産だけではなく借金等のマイナスの財産も相続してしまいます。

そのため、親の財産を相続した場合には、子供が借金の返済義務も引き継いでしまうのです。

もっとも、後で説明するように、相続放棄の手続を行うことで、借金の返済義務を引き継がないようにすることが可能です。

相続の放棄をするためには、相続の意思を示す行為(単純承認)をしないように注意が必要です。

親の預金等の相続財産を使ってしまうと単純承認をしたとみなされてしまいますので、親が借金をしているかもしれないという場合には、親の財産をそのままにしておくことが必要です。

(2)子供が親の借金の保証人・連帯保証人になっている

子供が親の借金の保証人や連帯保証人になっている場合は、借金の返済をしなければなりません。

保証人や連帯保証人になると、親が返済できない場合には代わりに返済をしなければならなくなります。

そのため、親から借金の保証人・連帯保証人になるように求められたときは、二つ返事をせずに一度よく考えるようにしましょう。

(3)親が子供の名義を使って借金をしている

親が子供の名義を使って借金をしている場合でも返済をしなければなりません。

この場合、親が子供の了解をまったく得ずにその名義を使用したようなときには、そのことを証明できれば返済義務を負わない場合もあります。

しかし、そのような証明ができない場合、あるいは名義の使用を承諾してしまった場合は、返済義務を拒絶することは困難です。

これを避けるためには、親から名義を借りたいと求められても応じないことが重要です。

3.親の借金の返済義務を負わないようにする方法

親の借金の保証人・連帯保証人となっている、親が借金をする際に名義を貸しているという場合は、親の借金というより子本人の借金となっていますので、その状況から返済を拒むことは困難です。

しかし、相続によって親の借金の返済義務を負わないようにする方法は、以下のようにいくつか考えられます。

親の借金の返済義務を負わないための方法

1.相続を放棄する
2.限定承認をする
3.親に債務整理を勧めて完済させる

1と2は借金を残して親が死亡し、相続してしまいそうな場合、3は親が存命の場合に考えられる手段です。

順に説明します。

(1)相続を放棄する

2でも少し触れたように、相続を放棄することで死亡した親の借金の返済義務を負わないようにすることができます。

相続放棄は、家庭裁判所へ申述をすることによって行います。

その際には、以下のような書類が必要になります。

相続放棄に必要な書類

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申立人の戸籍謄本

また、相続放棄の申述をするには、相続が開始したことを知った時から3か月以内にしなければならないという期間の制限(熟慮期間)があります。

もっとも、この熟慮期間については、裁判所に申し立てることにより延長することもできます。

親に預金等の財産がほとんどなく、一方で多額の借金があるという場合には相続放棄をしてしまうのが最も楽な手段といえるでしょう。

ただし、相続財産に手を付けてしまうと、単純承認したとみなされ相続放棄の効果は認められなくなってしまいます。

そのようなことがないよう、死亡した親に借金があるとわかっている場合には、親の預金から葬儀費用を出すなどといったことはしないようにしましょう。

(2)限定承認をする

相続の方法には相続財産すべてを引き継ぐ単純承認だけではなく、限定承認という方法もあります。

限定承認とは、プラスの財産からマイナスの財産を差し引き、残った分を相続するという方法です。

マイナスの財産の方が多かった場合は、プラスの財産を債権者に分配することで終わり、借金は引き継がない、ということができます。

限定承認は相続人が全員同意した上で行う必要があり、また、相続放棄と同様に3か月の熟慮期間以内に申述する必要があります。

さらに、相続人の代表者を立て、その代表者がプラスの財産、マイナスの財産それぞれの目録を作成し、債権者への分配をするという手続であるため、相続人自身が行うと負担が大きいものとなっています。

限定承認を検討する場合は、弁護士等の専門家に一度相談しておくべきでしょう。

(3)親に債務整理を勧めて整理させる

親に債務整理を勧めて整理させるのも一つの方法です。

債務整理とは借金を減額または免除するための様々な手続の総称です。

債務整理を行うことで、返済の負担を軽減することができます。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つの手続があり、借金の金額や返済能力によってとるべき手続が異なります。

債務整理をするよう親を説得し、弁護士に相談してみるというのも一つの手段として考えられます。

4.親の借金を相続して困っているときの対処法

債務整理をしても生活が苦しいときの対処法

親の借金を相続してしまい困っている方は、ご自身の債務整理を検討してみましょう。

債務整理をすることで、月々の返済の負担を軽減でき、無理なく完済を目指すことができます。

まずは借金の返済で困っていることを弁護士に相談してみましょう。

なお、以下の記事でも債務整理の種類や弁護士に相談することによるメリットなどを解説していますので、合わせてご確認ください。

借金の救済制度には何があるの?利用するメリットとデメリットを解説

まとめ

子供は原則として親の借金を返済する必要はありません。

ただし、いくつかの条件のもとでは子供が親の借金の返済義務を負う場合があります。

借金を残したまま親が死亡してしまったという場合は、相続放棄を検討してみましょう。

なお、すでに借金を相続してしまった方は弁護士に相談して債務整理をご検討ください。

弁護士法人みずきでは、借金に関する相談を無料で受け付けておりますので、親の借金でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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