個人再生後に住宅ローンを組むことはできる?審査に通るためにできること

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「住宅ローンを残したまま個人再生を行うことはできるの?」
「個人再生をするとこの先ずっと住宅ローンを組めないの?」
「個人再生後、住宅ローンの審査に通るためには何をすればいいの?」
個人再生における住宅ローンに関してこのような不安を抱かれている方もおられるのではないでしょうか。

個人再生の場合、住宅ローン特則と呼ばれる制度を利用することで、住宅を残したまま手続を行うことができます。

また、個人再生後でも、一定期間が経てば住宅ローンを組むことができます。

この記事では、住宅ローン特則を利用した場合の個人再生後の返済はどうなるのか、具体的にどのくらいの期間が経てば住宅ローンを組むことができるのか、住宅ローンを組む際の注意点などを具体的にご説明します。

この記事が、これからの生活再建のご参考となれば幸いです。

1.住宅ローン特則を利用した返済について



個人再生では、ローンが残っている自宅を処分されないように住宅ローン以外の債務のみを圧縮し個人再生することができる制度があります。

この制度を、住宅資金貸付債権に関する特則(通称「住宅ローン特則」)と言います。

では、この住宅ローン特則を利用した場合どのような点に注意すべきかを順にご説明します。

(1)個人再生後もローンの支払は続く

住宅ローン特則とは、ローンが残っている自宅を処分されないように、住宅ローン以外の債務のみを減額する制度のため、住宅ローンは継続して支払う必要があります。

そのため、手続後は減額された住宅ローン以外の借金と住宅ローンを合わせて支払うことを念頭に置いておきましょう。

個人再生において住宅ローン特則を利用したいとお考えの方は、無理のない返済ができるかどうかを事前によくご検討ください。

(2)リスケジュールについて

住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンの返済をリスケジュールできる可能性があります。

仮に保険会社から住宅ローンの一括払いを請求され、保証会社が代位弁済をした場合も、一定の条件のもとで代位弁済をなかったことにして分割払いを要求することが可能になることもあります。

さらに、住宅ローンの返済期間を最長10年まで延長することで月々に支払う金額の負担を減らすこともできるのです。

住宅ローン特則は、単にローンが残っている状態の住宅を処分しないようにすることができるだけでなく、リスケジュールによりその後の返済の負担を軽減させることができる場合もあります。

住宅ローンが残っている場合には、住宅ローン特則の利用をおすすめします。

2.個人再生後住宅ローンは組めるのか



個人再生を行うと、手続前に返済が滞ってしまったことや個人再生を行った事実が事故情報として信用情報機関に登録されます(いわゆる「ブラックリスト入り」)。

この事故情報が信用情報機関に登録されている一定期間は住宅ローンを組むことができませんが、その期間が過ぎるとローンを組むことができるようになります。

では、いつ信用情報機関の事故情報は削除されるのか、ご自身がブラックリスト入りかどうかをどのように確認すればいいのか、順にご説明します。

(1)個人再生後にローンの審査が通らなくなる仕組み

個人再生は、裁判所に申立てをして再生計画の認可を受けたあと、再生計画どおりの返済を終えれば債務の残額について支払を免除される手続です。

この個人再生を行った事実は、信用情報機関に事故情報として登録されます。

信用情報機関は、加盟するそれぞれの金融機関から契約者の信用情報の報告を受けこれを管理するほか、金融機関からの照会に応じて信用情報を提供しています。

借入金の返済の延滞の有無や、債務整理の有無など、契約者が借入金を返済できなくなったこと(金融事故)を示す事故情報も信用情報の一つです。

金融機関は借入れの申込みを受けると、信用情報機関への照会を行い申込みをした人の信用情報を取得します。

その信用情報に事故情報が含まれていた場合、その人の返済能力には疑問があると判断されます。

返済能力に疑問がある人に貸付けをしても返済が滞る可能性があるため、貸付けができないと判断されることになります

つまり、ブラックリスト入りしていると、金融機関に借入れの申込みをしても審査に通らず借入れができなくなるのです。

(2)個人再生後住宅ローンが組めるまでの期間

信用情報機関に登録される事故情報は、一定期間が経つと削除されます。

事故情報が削除されるまでの期間は、信用情報機関ごとに異なります。

信用情報機関および債務整理の方法ごとに事故情報が削除されるまでの期間をまとめると以下のようになります。

債務整理の手続方法 CIC(株式会社シー・アイ・シー) JICC(株式会社日本信用情報機構) KSC(全国銀行個人信用情報センター)
任意整理 完済から5年 完済から5年
(ただし2019年9月30日以前の契約は受任通知の送付日から5年)
完済から5年
個人再生 完済から5年 完済から5年
(ただし2019年9月30日以前の契約は手続開始決定日から5年)
手続開始決定日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方
自己破産 免責許可決定確定日から5年 免責許可決定確定日から5年 手続開始決定日から
10年

 
個人再生の場合、完済から5年か、手続の開始決定から10年が経過すれば、事故情報が削除されることになります。

事故情報が削除されれば、各住宅ローンの審査の際に、事故情報があることによって門前払いされることがなくなり、通常どおりの審査が行われるようになるため、住宅ローンを利用できる可能性が出ます。

(3)信用情報機関の情報開示請求方法

事故情報の保有期間が経過したら、念のため信用情報を確認しておくとよいでしょう。

信用情報は、信用情報機関に対して開示請求を行うことで確認できます。

各信用情報機関によって加盟している金融機関や事故情報の保有期間が異なるため、全ての信用情報機関に請求をしておくと確認漏れがなくなります。

信用情報機関ごとの情報開示請求の方法と手数料は以下のとおりです。

信用情報機関 情報開示請求の方法 開示請求手数料
CIC インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
JICC インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
KSC 郵送のみ受付 ¥1,000

 
開示請求の詳細については、以下の各信用情報機関のウェブページをご覧ください。

情報開示とは|指定信用情報機関のCIC
信用情報の確認 |日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
本人開示の手続き | 全国銀行個人信用情報センター | 一般社団法人 全国銀行協会
 

3.個人再生後住宅ローン審査に通るための注意点



個人再生後、信用情報機関の事故情報が削除されたからといって必ず住宅ローンの審査に通るわけではありません。

収入が低額な場合や不安定である場合など、様々な理由から審査に通らない可能性もあります。

できる限り住宅ローンの審査に通るために、以下の注意点を知っておきましょう。

(1)頭金を用意する

個人再生後、信用情報機関から事故情報が削除されるまでの間に頭金を多く用意することを心がけましょう。

当然ですが、頭金を多く用意することができればその後の返済額も小さくなりますし、その金額を用意できるだけの収入があると示すことになりますから、審査には通りやすくなります。

個人再生の完済後、信用情報機関の事故情報が削除されるのを待つ期間に、収支バランスを考えながら頭金を準備しておくことをおすすめします。

(2)債務整理をした会社と系列会社は避ける

個人再生後住宅ローンの申請を行う際は、個人再生をした債権者や系列会社以外で申し込むようにしましょう。

信用情報機関の事故情報が削除されても、個人再生をする際に利用した債権者や同じ系列の会社のなかで、申込者が以前に個人再生をしたという情報が共有されている可能性があります。

そのような情報が共有されていると、個人再生をした債権者や同じ系列の会社内で住宅ローンの審査に通らない可能性があります。

そのため、個人再生後に住宅ローンの申請をする際は、ご自身が個人再生をした会社や系列会社以外のところに申し込むようにしましょう。

(3)支払可能であることを証明する

住宅ローンの審査において重視される点は、申請者がローンの返済を続ける能力があるかどうかです。

この能力を示すには、先にご説明した頭金の用意のほか、安定した収入があることは重要になります。

個人再生後、事故情報が削除されるまでに一定期間があるので、その間に正社員として長く勤務を続けることで、安定した収入を得られるようになるでしょう。

そうすることで、ローン会社にローンの返済を継続できることを印象付けるのです。

まとめ

個人再生には、住宅ローン特則と呼ばれる制度があり、これを利用した場合は住宅ローンの返済は継続する代わりに住宅を手放さずに手続を行うことができます。

現在、住宅ローンが残っているものの債務整理をされたい方は住宅ローン特則の利用をご検討ください。

また個人再生をしても、一定期間が経てば住宅ローンを組むことは可能ですが、その際は様々な注意点があります。

住宅ローン審査を通過するために、この記事でご紹介した内容を参考にしていただければ幸いです。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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