法人破産の申立てに必要な提出書類について弁護士が解説
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「法人破産を申し立てる際の提出書類にはどんなものがある?」
「法人、会社の破産を申し立てたいが、必要な準備が分からない」
会社を経営されている方の中には、資金繰りの悪化などによって破産手続を検討されている方もいると思います。
会社、法人の破産は、裁判所に申立てを行い、裁判所のもとで手続が進行することから、裁判所へ提出しなければならない提出書類が数多くあります。
本記事では、法人破産手続において必要となる提出書類の種類や、法人破産手続の流れについてご説明します。
1.法人破産における提出書類
法人破産の手続は、裁判所に申し立てることによって開始されます。
この際に、裁判所へいくつかの書類を提出する必要があります。
以下では、申立書類と添付書類に分けてご紹介します。
(1)申立書類
申立書類は、法人破産を申し立てるときに裁判所へ提出する書類です。
主なものとして、以下が挙げられます。
- 破産手続開始申立書
- 報告書
- 財産目録
- 債権者一覧表
順にご説明します。
また、法人破産を申し立てる際、どこの裁判所に申立てをしたらよいかの基準である裁判所の管轄については、以下の記事もご参照ください。
#1:破産手続開始申立書
法人破産を申し立てるときに管轄の裁判所へ提出する書類です。
申立てを行う法人の名称や代表者、本店所在地などの法人の基本情報について記載します。
管轄の裁判所によって定まった書式が用意されている裁判所もあります。
#2:報告書
代表者又は申立代理人弁護士が作成する書類で、会社、法人の事業内容や破産手続に至った経緯などについて記載します。
また、法人の有する資産や負債、従業員の雇用、解雇の状況などの法人の状況に関する情報も記載しておく必要があります。
#3:財産目録
会社の財産状況についての詳細を記載する書類です。
預貯金や不動産、車両などの項目ごとに整理して記載します。
報告書に記載されている財産状況の詳細を確認できる重要な書類です。
#4:債権者一覧表
法人に対して債権を有する者をすべて記載する書類です。
債権者ごとに名称や所在地、債権の内容、残高、債権の発生原因と時期などについて整理して記載する必要があります。
この債権者一覧に基づいて、裁判所から債権者に対して、破産手続開始の日時、破産管財人の氏名や連絡先、債権者集会の日時や場所、債権届出書やその提出期限などが記載された破産手続開始の通知書が届きます。
(2)添付書類
申立書類に記載されている内容が正しいものであるかを判断するために、添付書類の提出も必要です。
申立書類の提出時に同時にすべて提出できるのが望ましいですが、不足した場合、手続開始決定の前後に裁判所や管財人から追完という形で資料の提出が求められる場合もあります。
#1:取締役会議事録または同意書
会社が破産するためには、取締役会の議決又は取締役の同意が必要となります。
取締役会の議決の場合には、取締役の過半数が出席した取締役会において、出席した取締役の過半数が賛成した議決が必要です。
取締役会の議決や出席した取締役の過半数が賛成したことを証明する書類が議事録になります。
同意書の場合には、すべての取締役のうち過半数の同意書が必要になります。
なお、法人破産においては株主の同意は要件とされていませんので、株主総会の招集や議決が必要ではない点は注意しておきましょう。
#2:委任状
弁護士に法人破産の申立てを依頼する場合には、その旨を記載した委任状が必要となります。
これは、破産申立てについて、申立代理人を弁護士に委任していることを証明するために必要な書類です。
#3:法人登記の全部事項証明書
法人破産を申し立てる会社や法人の商号、本店所在地、役員などに関する登記事項証明書の全部事項証明書です。
法人破産の主体である会社や法人が実在することを証明するために必要な書類となります。
また、申立前の3か月以内に発行されたものでなければならないことにも注意が必要です。
#4:貸借対照表および損益計算書
会社の財産や債務の状況、損益情報を明らかにするために提出が必要な書類です。
また、直近2期分の情報が必要です。
どちらも各事業年度の最終日を基準とする決算のタイミングで作成されるものですが、決算書がない場合には申立てを行う前に貸借対照表および損益計算書を作成しておく必要があります。
#5:不動産登記の全部事項証明書
会社や法人が法人破産の申立ての時点(または2年以内)に不動産を所有している場合には、その登記事項証明書の全部事項証明が必要となります。
また、法人の保有する財産の価値を資料からわかるようにしておくため、不動産の市場価値を査定した不動産査定書も準備しておくことが望ましいです。
#6:その他保有する財産に関する書類の写し
主に預貯金通帳や有価証券、会社・法人が自動車やバイクを所有している場合にはその車検証の写しが必要となります。
ほとんどの法人が持っている預貯金の口座については申立前2年分の提出が必要です。
また、自動車については財産の価値を資料からわかるようにしておくため、自動車業者が作成した査定書も準備しておくことが望ましいです。
2.法人破産手続の流れ
法人破産手続の流れについてご紹介します。
以下では、一例として東京地裁における法人破産手続の流れを記載しますが、他の裁判所でも基本的な部分は同様となっており、各裁判所の運用で細部が異なる場合があります。
(1)申立準備・申立書の作成
法人破産の申立てを行う前には、会社の財産状況を確認する必要があります。
このとき、会社が所有する財産だけでなく、事業所の賃貸借契約や商品や原材料などの売買契約、従業員の雇用契約などの契約関係もすべて確認する必要があります。
これらを調査した結果に基づいて、申立書類の作成、添付書類の収集を進めていくことになります。
(2)取締役の同意・取締役会の決議
取締役会や理事会が設置されている会社、法人では、破産申立てを承認する旨の決議又は役員の同意が必要です。
また、この際の議事録又は同意書については申立書類として裁判所へ提出します。
(3)破産手続開始の申立て
法人破産の申立ては、管轄する裁判所へ申立書類を提出することによって行います。
東京地裁への法人破産申立については、本庁の民事第20部が提出先となります。
(4)即日面接
東京地裁には、ほかの裁判所にはない即日面接という手続が設けられています。
弁護士が代理人となっている場合には、弁護士と担当裁判官との面接が行われます。
法人の代表者や従業員は面接に参加する必要はありません。
また、即日面接は原則として申立ての当日または申立てから3日以内という申立直後に行われ、手続の進め方、問題点などについて話し合いが行われます。
(5)破産管財人候補者の選任
即日面接において手続の進め方が定まると、通例は当日中に破産管財人の候補者が選任されます。
東京地裁における法人破産手続では、東京23区内の法律事務所に所属し、候補者名簿に記載がある弁護士の中から裁判所によって選任されます。
申立人の財産状態や手続の進め方について話し合いが行われ、関係書類や物品なども管財人候補者に引き継がれます。
(6)破産手続開始決定
破産手続の申立てが裁判所に受け付けられると、破産手続開始の決定がなされます。
東京地裁では、即日面接の翌週水曜日17時に開始決定を出すのが原則となっています。
また、このときに破産管財人の候補者も正式に破産管財人に就任し、破産を申し立てた会社や法人の財産は破産管財人の管理下に置かれます。
後述する債権者集会の日時についてもこのときに正式に決定し、裁判所から各債権者に対して破産手続開始の通知書が発送されます。
(7)引継予納金の納付
破産管財人が正式に就任すると、法人の財産管理を目的とする破産管財人名義の口座が開設されます。
このときに、破産する法人はこの口座に予納金と会社、法人にある金員を振り込む必要があります。
予納金の金額や相場は法人の規模や負債額、処理を要する事項の数や大きさなどの違いによって変動します。
とくに管財事件での予納金は高額になる傾向があり、破産を申し立てた時点で捻出することが困難なケースもあります。
東京地裁では、少額管財事件として扱われると、予納金が20万円と比較的低額な運用で進めることができる点がメリットです。
予納金が納付されると、破産管財人は法人の財産の換価処分、負債の調査などの業務を進めていきます。
なお、破産管財人は、会社、法人に不当な財産流出行為など不正な行為をしていないかについても調査を行うことがあり、その際には取締役や理事には協力の義務が発生します。
(8)債権者集会
破産手続開始決定から約3か月後に1回目の債権者集会が予定され、債権者へ対して破産手続の進捗状況を報告する債権者集会が開催されます。
この債権者集会までに管財業務が完了し、配当すべき財産がなければ手続は終了します。
債権者に配当すべき財産が集まった場合には場合には、配当手続に進みます。
まだ換価が終わらない財産があるなど管財業務が未了の場合には、次の債権者集会の期日が定められ、破産手続が継続することになります。
(9)配当・清算結了登記
破産管財人が法人の財産の換価処分を行った結果、債権者に配当すべき財産が集まった場合、法的な優先順位に従った配当が行われます。
配当手続が完了すれば、破産管財人は裁判所へ報告し、裁判所の職権によって清算結了登記がなされます。
これによって法人は消滅し、破産手続がすべて完了することになります。
まとめ
本記事では、法人破産の申立てを行うにあたって必要な提出書類や、法人の破産手続の流れについて説明しました。
申立書類には各記載事項を疎明したり、補足説明をするための添付書類も提出する必要があります。
書類に応じて取得の時期や種類について指定があるものがあります。
法人破産の手続や提出書類の作成、収集のことで何か迷われて破産手続を躊躇している方は、まずは弁護士へ相談してみることをおすすめします。
弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの法人破産の手続に対応してきました。
経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、法人破産の申立てをご検討の方はお気軽にご相談ください。
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