自己破産すると年金はどうなる?手続における年金の取り扱い方とは

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「自己破産すると、将来の年金も減らされてしまう?」
「滞納している年金は自己破産するとどうなる?」
自己破産を行うと将来の年金が受け取れなくなってしまうのではと不安に感じる方もいらっしゃいます。

自己破産を行うと、借金が免責になるという大きなメリットがありますが、財産が換価されてしまう、官報に掲載されるなどのデメリットもあります。

では、自己破産をする場合に年金はどのように扱われるのでしょうか。

この記事では、自己破産における年金の取り扱い方についてご説明します。

1.自己破産すると年金はどうなるのか

自己破産の手続をすると、一定の価値以上の財産を手放さなければならない可能性があります。

管財事件の場合、破産管財人が財産の換価処分を行い、債権者へ配当することになります。

では、年金はどのように扱われるのでしょうか。

(1)自己破産しても将来の年金は受け取れる

自己破産をしても公的年金、企業年金は将来の年金を受け取ることができます。

自己破産を理由に将来の年金が減額されることもありません。

公的年金の種類は以下のとおりです。

公的年金の種類
  1. 国民年金
    日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する
  2. 厚生年金
    厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する全ての人が加入する
  3. 共済年金
    公務員・私立学校の教職員などが加入する


こうした公的年金のほかに、公務員の方が加入している公務員共済も年金が受給できますが、こちらも差押禁止財産のため没収されることはありません。

(2)公的年金は自己破産後、処分の対象にならない

公的年金は自己破産後の手続に影響せず、処分の対象にはなりません。

自己破産をしたことによって将来の受給額が減らされることはありません。

影響を及ぼさないどころか、破産の手続中、手続後を通じて年金を支払う義務は免除されませんので、給与からの天引きを止める必要もありません。

#1:現在年金の受給年齢に満たない方

現在年金の受給年齢に満たず、支払う義務のある方は、自己破産の影響は受けませんので、それまでどおりの支払が必要です。

将来の年金が没収される、年金証書が没収される心配もありません。

#2:現在年金を受給中の方

年金の受給権を差し押さえられる心配もありません。

それまでどおり年金を受給できます。

ただし、注意が必要なのは「銀行口座」です。

年金を受給している口座を開設している金融機関が債権者でもある場合は、口座を凍結され預金の引き出し、口座引き落とし等ができなくなった上、債務と相殺されて預金がなくなってしまう可能性があります。

年金は口座に振り込まれてしまうと、単なる預金となってしまいますので年金も口座の凍結によって引き出すことができなくなってしまうのです。

そのため、自己破産のために受任通知を送る前に、借入れを行っていない金融機関の口座へ年金の振込先を変更しておくことが必要になります。

(3)企業年金も処分の対象にならない

年金と名がつくものの中には公的年金以外にも「企業年金」と呼ばれるものがあります。

企業年金は私企業が導入している仕組みで、従業員の退職後も生活が安定するよう導入しているものです。

従業員は退職後に分割か一時金かを選んで受給することができます。

企業年金についても差押禁止財産として決められており、自己破産をしても受け取れなくなる心配はありません。

企業年金には以下の種類があります。

企業年金

  1. 確定給付型企業年金

    確定給付企業年金法に基づいて運営されている企業年金制度です。

    掛け金は原則として企業側が拠出しており、会社によっては2分の1以下は給与などから支出してもらう場合もあります。

    将来受け取れる年金額は一定しており、不足した場合は企業が補填します。

  2. 確定拠出型年金 (企業型や個人型がある)

    確定拠出年金法に基づいて運営されている年金制度で、企業型と個人型があります。

    こちらは拠出額が一定額に決められており、将来受け取れる年金や一時金は運用実績にて変動することになります。

(4)個人年金は場合によって処分対象となる

公的年金、企業年金は自己破産手続の影響を受けません。

しかし、個人で金融機関や保険会社との間の契約により積み立てる、いわゆる個人年金については自己破産を行うと解約しなければならない可能性があります。

個人年金は年金とついていますが、実際の扱いは保険と同じものであるため、公的年金や企業年金とは扱いも異なるのです。

個人年金を途中で解約した場合の返戻金が高額になる場合には、破産管財人がこれを解約し、配当にあててしまうことも考えられます。

この場合に個人年金の契約を残したい場合は、返戻金の額と同額の現金を支払う(破産財団へ組み入れる、といいます。)ことが考えられます。

ただし、加入して間もなく解約しても返戻金が生じない場合などは、必ずしも処分の対象になるわけではありません。

解約返戻金の金額が20万以下の場合、個人年金を残せる可能性は十分にあります。

どの財産を処分し、どの財産を残すかは、その他の財産についても考慮する必要があるため弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

2.自己破産後も年金を支払うの?滞納していたらどうなる?

自己破産の大きなメリットは借金の支払義務がなくなることですが、年金の支払義務はどうなるのでしょうか。

(1)自己破産後も年金の支払は必要

自己破産後も年金の支払義務はなくなりません。

つまり、年金はそれまでと同様に支払を続けていく義務があります。

消費者金融からの借入れやローンの支払はなくなりますが、年金保険料は非免責債権といって、免責の対象にならない債権のため、自己破産では支払義務は消滅しません。

滞納しないように支払を行いましょう。

(2)未納の年金も免責にならない

自己破産に至った方の多くは、滞納している年金や税金があることが多いのが実情です。

しかし、自己破産を行っても未納の年金や税金は免責となりません。

住民税など税金の滞納も放置しておくと、自己破産の手続とは別に財産を差し押さえられるリスクがあります。

年金事務所からの督促も、自己破産手続の終了後も続きますので、早期の支払を目指しましょう。

万が一滞納の年金保険料や税金が高額の場合、これを放置してしまうのではなく自己破産を行ったことも伝え、分割の交渉を行うと良いでしょう。

まとめ

年金は、公的年金・企業年金の場合、自己破産の影響は生じません。

ただし、滞納分がある場合、免責にはならないので、支払義務があることを覚えておきましょう。

個人年金の場合、加入時期や解約返戻金の金額によっては換価の対象とならない可能性もあります。

また、破産手続が終了した後に、新たに個人年金の積立てを開始することは問題ありません。

自己破産の手続では、どの財産換価が対象となるか、評価や金額など、裁判所ごとに基準が異なることもありますので、弁護士に相談することがおすすめです。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。


自己破産すると年金はどうなる?手続における年金の取り扱い方とは

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「自己破産すると、将来の年金も減らされてしまう?」
「滞納している年金は自己破産するとどうなる?」
自己破産を行うと将来の年金が受け取れなくなってしまうのではと不安に感じる方もいらっしゃいます。

自己破産を行うと、借金が免責になるという大きなメリットがありますが、財産が換価されてしまう、官報に掲載されるなどのデメリットもあります。
では、自己破産をする場合に年金はどのように扱われるのでしょうか。

この記事では、自己破産における年金の取り扱い方についてご説明します。

1.自己破産すると年金はどうなるのか


自己破産の手続をすると、一定の金額以上の財産を手放さなければならない可能性があります。

管財事件の場合、破産管財人が財産の換価処分を行い、債権者へ配当することになります。

では、年金はどのように扱われるのでしょうか。

(1)自己破産しても将来の年金は受け取れる

自己破産をしても公的年金、企業年金は将来の年金を受け取ることができます。

自己破産を理由に将来の年金が減額されることもありません。

公的年金の種類は以下の通りです。

公的年金の種類

  1. 厚生年金
    多くの会社員の方が加入している一般的な年金
  2. 国民年金
    自営業の方や無職の方、学生の方が加入している
  3. 障害年金
    精神障害・身体障害がある方が受給できる
  4. 遺族年金
    国民年金や厚生年金の被保険者で、家族の生計を維持してきた方が亡くなられた場合、ご遺族が受け取る


こうした公的年金のほかに、公務員の方が加入している公務員共済も年金が受給できますが、こちらも差押禁止財産のため没収されることはありません

(2)公的年金は自己破産後、処分の対象にならない

公的年金は自己破産後の手続に影響しないため、処分の対象にはなりません。
自己破産後も今までどおりきちんと納付し、将来のために支払っていきましょう。

破産手続中も年金は支払う義務がありますので、給与からの天引きを止める必要もありません。

現在年金の受給年齢に満たない方

現在年金の受給年齢に満たず、支払う義務のある方は、自己破産の影響は受けませんので、今までどおりの支払が必要です。

将来の年金が没収される、年金証書が没収される心配もありません。


現在年金を受給中の方

年金の受給権を差し押さえられる心配もありません。

今までどおり年金を受給できます。

ただし、注意が必要なのは「銀行口座」です。

年金を受給している口座を開設している金融機関が債権者でもある場合は、口座が凍結し預金の引き出し、口座引き落とし等ができなくなる可能性があります。

年金は口座に振り込まれてしまうと、単なる預金となってしまいますので年金も引き出すことができません。

そのため、自己破産の申立ての前に借入れを行っていない金融機関の口座へ年金の振込先を変更しておくことが必要です。

(3)企業年金も処分の対象にならない

年金の種類には公的年金以外にも「企業年金」と呼ばれるものがあります。

企業年金は私企業が導入している仕組みで、従業員が退職後にも生活が安定するよう導入されている年金です。

従業員は退職後に分割か一時金かを選んで受給することができます。

企業年金についても差押禁止財産として決められており自己破産をしても受け取れなくなる心配はありません。
企業年金には以下の種類があります。

企業年金

  1. 確定給付型企業年金
    確定給付企業年金法に基づいて運営されている企業年金制度です。
    掛け金は原則として企業側が拠出しており、会社によっては2分の1以下は給与などから支出してもらう場合もあります。
    将来受け取れる年金額は一定しており、不足した場合は企業が補填します。
  2. 確定拠出型年金 (企業型や個人型がある)
    確定拠出年金法に基づいて運営されている年金制度で、企業型と個人型があります。
    拠出額が決められている、将来受け取れる年金や一時金は運用実績にて変動する、という内容の年金です。

(4)個人年金は場合によって処分対象となる

公的年金、企業年金は自己破産手続の影響を受けません。

しかし、個人で契約しているいわゆる個人年金は自己破産を行うと解約を強制される可能性があります。
個人年金は生命保険金と同じように扱うため、公的年金や企業年金とは異なるのです。

解約返戻金が高額になる場合には、破産管財人が解約し、配当にあてられる蓋然性が非常に高いでしょう。

ただし、加入して間もなく解約しても返戻金が生じない場合などは、必ずしも処分の対象になるわけではありません。

解約返戻金の金額が20万以下の場合、個人年金を残せる可能性があります。

どの財産を処分し、どの財産を残すかは、その他の自由財産に関しても考慮する必要があるため弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

2.自己破産後も年金を支払うの?滞納していたらどうなる?


自己破産の大きなメリットは借金がなくなることですが、年金の支払義務はどうなるのでしょうか。

(1)自己破産後も年金の支払は必要

自己破産後も年金の支払義務はなくなりません。
つまり、年金は今までと同様に支払を続けていく義務があります。

消費者金融からの借入れやローンはなくなりますが、年金保険料は非免責債権のため自己破産では支払義務は消滅しません。

滞納しないように支払を行いましょう。

(2)未納の年金は免責にならない

自己破産に至った方の多くは、滞納している年金や税金があることが多いのが実情です。

しかし、自己破産を行っても未納の年金や税金は免責となりません。
住民税など税金の滞納も放置しておくと、自己破産の手続とは別に財産を差し押さえられるリスクがあります。

年金事務所からの督促も、自己破産手続の終了後も続きますので、早期の支払を目指しましょう。

万が一滞納の年金保険料や税金が高額の場合、対応を放置するのではなく自己破産を行ったことを伝え、分割の交渉を行うと良いでしょう。

まとめ

年金は、公的年金・企業年金の場合、自己破産の影響は生じません。

ただし、滞納分がある場合、免責にはならないので、支払義務があることを覚えておきましょう。

個人年金の場合、加入時期や解約返戻金の金額によっては換価の対象とならない可能性もあります。

また、破産手続が終了した後に、新たに個人年金の積立てを開始することは問題ありません。

自己破産の手続では、どの財産換価の対象となるか、評価や金額など、裁判所ごとに基準が異なることもありますので、弁護士に相談することがおすすめです。

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私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。