むちうちの後遺症とは?その症状についてご説明します

執筆者 西村 賢二 弁護士

所属 第二東京弁護士会

私は、症状の大小に関わらず気軽に受診できる身近なお医者さんのような弁護士でありたいと思っています。まずは、直面された法的問題についてご遠慮なくご相談ください。
個人の方の日常生活や法人の方の事業活動の中で生じるご相談に幅広く適切に対応できるように努め続けたいと思っております。

この記事の内容を動画で解説しております。

あわせてご視聴いただければと思います。

「むちうちになってしまい治らない」
「むちうちの後遺症にどのようなものがあるのかわからない」

交通事故に遭いむちうちになってしまった方の中には、このようなお悩みを抱えている方もいらっしゃるかと思います。

この記事では、むちうちの後遺症にはどのようなものがあるのかご説明します。

1.むちうちの種類と現れる症状

むちうちは正式名称ではなく、「頸椎捻挫」や「頸部挫傷」、あるいは「外傷性頸部症候群」などの診断名が付きます。

(1)頸椎捻挫

首のむちうち(頸椎捻挫)は、交通事故による怪我の中で多くの割合を占めています。

頸椎とは首の骨のことであり、強い衝撃によって頭が揺さぶられ首に力がかかることによって頚椎捻挫が引き起こされます。

頸椎周辺の筋肉や神経、血管が損傷を受けるため、首の痛みや頭痛、肩こりなどが主な症状として現れます。

2〜3か月程度で症状が収まることが多いですが、重症の場合は長年にわたって肩こりやだるさなどに悩まされるケースもあります。

(2)神経根症型

神経根とは脊髄から枝分かれしている神経のことで、この部分が圧迫されることでさまざまな症状が引き起こされます。

主な症状は、頭痛や首の痛み、肩から腕にかけての痛み、しびれや脱力などです。

神経根症型は、症状が左右の片側のみに現れるという特徴があります。

もし左右どちらかの肩から手指にかけて、原因不明の痛みやしびれなどがある場合は、神経根症型の可能性を疑ってみましょう。

(3)バレー・リュー症候群型

むちうち症のうち、自律神経に症状が現れるタイプです。

自律神経や交感神経が損傷を受けることで、頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り、視力や聴力の低下などを引き起こします。

(4)低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)

体に衝撃がかかることで脊髄の硬膜が破れ、脳脊髄液が脳脊髄腔から漏れ出し、脳脊髄腔の圧力が低下している状態を指します。

脳脊髄液が減少することにより、起立性頭痛(立ったり座ったりすると頭痛が悪化し、横になると軽減する頭痛)やめまい、耳鳴り、吐き気、倦怠感等の症状が引き起こされます。

 

2.むちうちで後遺症が残ったら

高次脳機能障害になったときに請求できる賠償金

むちうちで後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定を受けられるかどうかという点が、その後の対応において重要なポイントとなります。

(1)後遺障害の認定申請をする

むちうちの症状が交通事故後に現れ、続く場合には、後遺障害等級の申請を検討しましょう。

むちうちの症状について、認定される可能性がある後遺障害等級とその認定基準は以下のとおりです。

等級 認定基準
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

後遺障害の等級認定を受けると、等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

交通事故の後にむちうちの症状が現れた場合には、後遺障害等級の認定申請の手続から弁護士に相談することがおすすめです。

(2)適切な等級の認定を受けるには

むちうちの症状は、他の症状と比較して、後遺障害として認定されにくいと言われることがあります。

これは、むちうちの症状の原因や負傷が客観的に証明しづらいことに原因があると考えられます。

適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、以下のポイントを押さえて後遺障害等級の申請を行うことが重要です。

具体的には、以下のポイントがあります。

  1. 医師の指示のもと通院する
  2. 医師に後遺障害診断書を作成してもらう
  3. 症状を医学的に証明できる書類を集めておく

順に解説いたします。

#1:医師の指示のもと通院する

通院頻度が少ない、あるいは通院期間が短いなどの事情があれば、「治療する必要がないのではないか」や「通院しないことで症状が悪化したのではないか」などと疑われかねません。

もし疑いがあることで交通事故とむちうちの因果関係が認められなければ、治療費や慰謝料の請求をできない可能性もあります。

通院する際は、適切な頻度と期間にわたって通院することが重要です。

医師とも十分に相談しながら、治療を行うことが大切です。

#2:医師に後遺障害診断書を作成してもらう

後遺障害等級の申請時には、具体的な症状などを証明する後遺障害診断書を提出しなければなりません。

医師より症状固定(これ以上治療を継続してもこれ以上改善が見込めないこと)の診断を受けた後、後遺障害診断書の作成をお願いしましょう。

後遺障害診断書には、以下の項目が記載されます。

  • 被害者の基本情報
  • 交通事故に遭って受傷した日時
  • 症状固定日
  • 入通院期間
  • 傷病名
  • 既往症
  • 自覚症状
  • 他覚症状および検査結果
  • 今後の見通し

このうち、適切な等級認定を受けるために重要なのが、自覚症状、他覚症状および検査結果です。

自覚症状は、痛みや痺れが残る部位を書くだけではなく、どのような程度の症状で、日常生活に具体的にどのような影響が出ているかまでを詳しく記載する必要があります。

後遺障害診断書の記載内容は等級認定の結果に大きな影響を与えますので、医師に作成を依頼する際には、事前に弁護士に相談・確認して記載内容についてのアドバイスを求めることをおすすめします。

#3:症状を医学的に証明できる書類を集めておく

後遺障害12級13号の認定基準は「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号については「局部に神経症状を残すもの」と定められています。

具体的には、被害者の自覚症状が事故を原因とするものであることを医学的に証明できる場合は12級13号、証明はできず説明できる範囲に留まる場合は14級9号に認定されます。

医学的な証明とは、レントゲンやMRI画像、神経学的所見などから障害が判断できることを指します。

とくに神経学的所見では、ジャクソンテストやスパーリングテストの他にも、患者の意思に左右されることがない腱反射テストの結果は重視されます。

必要に応じてこれらの検査を受け、症状を医学的に証明できる証拠を集めることが重要です。

(3)慰謝料の相場

後遺障害等級の認定を受けると、等級に応じて後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取ることができます。

以下では、それぞれの相場について見ていきましょう。

#1:後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故が原因で後遺障害を負ったことで生じる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

慰謝料の算出には自賠責基準・任意保険基準・裁判所(弁護士)基準のいずれかが用いられ、使われた基準によって請求できる慰謝料の金額が異なります。

むちうちの場合に該当しうる後遺障害等級と慰謝料の相場は以下のとおりです。

後遺障害等級 自賠責基準

(2020年4月1日以降の事故の場合)

自賠責基準

(2020年3月31日以前の事故の場合)

裁判所(弁護士)基準
12級13号 94万円 93万円 290万円
14級9号 32万円 32万円 110万円

自賠責基準は自賠責保険から支払われる慰謝料のことで、法令によって金額が定められています。

最低限の保証を目的としていることから、算出された慰謝料の金額は3つの基準中で最も低額です。

任意保険基準は、加害者の任意保険会社が用いる基準のことで、各保険会社が独自に設定しています。

基準の内容は公開されていませんが、自賠責基準と同程度~やや高額であることが一般的です。

裁判所(弁護士)基準は、訴訟等、法的手続の際に参考にされる基準のことで、過去の裁判例をもとに算出されています。

弁護士が代理人として示談交渉を行う際にも、この裁判所(弁護士)基準に準じた賠償額を請求します。

#2:逸失利益

逸失利益とは、交通事故による後遺障害がなければ得られたはずである将来の収入に対する補償です。

「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」で算出され、金額は事故前の職業や収入、後遺障害等級に応じて異なります。

労働能力喪失率とは、後遺障害等級に応じて以下のように割合が定められています。

後遺障害等級 労働能力喪失率
12級 14%
14級 5%

まとめ

本記事では、交通事故を原因とするむちうちの症状について、後遺障害となった場合にとるべき法的対処法やそのポイントなどについて解説しました。

交通事故に遭った後、体に痛みや異変が続いている方は、病院を受診して治療に専念するとともに、後遺障害認定の申請へ向けて弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきには、交通事故問題に精通した弁護士が多数在籍しております。

むちうちの後遺症でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 西村 賢二 弁護士

所属 第二東京弁護士会

私は、症状の大小に関わらず気軽に受診できる身近なお医者さんのような弁護士でありたいと思っています。まずは、直面された法的問題についてご遠慮なくご相談ください。
個人の方の日常生活や法人の方の事業活動の中で生じるご相談に幅広く適切に対応できるように努め続けたいと思っております。