交通事故で脊髄損傷したときの慰謝料はどのくらい?後遺障害等級と知っておくべき注意点
「脊髄損傷したときはどのくらいの慰謝料がもらえるのか」
「脊髄損傷したときは何に注意すればよいのか」
交通事故によって脊髄を損傷した方の中には、慰謝料の支払がどうなるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、交通事故で脊髄損傷した場合の慰謝料や後遺障害等級ごとの症状、脊髄損傷したときの注意点についてご紹介します。
1.脊髄損傷と慰謝料
脊髄損傷とは、脊髄に強い衝撃が加わったことにより、脊髄が損傷してしまった状態のことをいいます。
脊髄とは、脳の底部から腰の下部まで背骨の内部を通っている太い神経であり、運動機能や感覚機能をつかさどっています。
これが損傷すると、損傷の程度に応じて、麻痺、運動障害、感覚障害、知覚異常など様々な症状が現れる可能性があります。
交通事故で脊髄を損傷してしまった場合の慰謝料は、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と後遺障害慰謝料の2つに分類されます。
以下、それぞれについてご説明します。
(1)傷害慰謝料(入通院慰謝料)
傷害慰謝料は、入通院慰謝料ともいい、事故によって怪我をしたことから生じた精神的苦痛について補償するものです。
精神的苦痛の大きさは怪我が重ければ重いほど大きいと考えられます。
また、怪我は、一般的に重い方が治療に要する期間が長くなるとされています。
そこで、傷害慰謝料の金額は、基本的に、入通院の日数・期間がどれくらいかによって決められています。
また、慰謝料の算定基準には、①自賠責基準、②任意保険基準、③裁判所(弁護士)基準の3つがあります。
それぞれ、入通院の期間、日数を用いて慰謝料を算定するようになっています。
このうち最も高額になることの多い裁判所基準では、怪我が骨折などの重傷か、打撲などの軽傷かによっても金額が変わるようになっています。
脊髄損傷は重傷に分類され、また、入通院の期間も長期化する傾向にあります。
したがって、比較的高い金額の傷害慰謝料が認められるケースが多くなります。
入通院慰謝料の詳細は、以下の記事で具体的に解説していますので、こちらをご覧ください。
(2)後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことによって生じた精神的な苦痛について補償するものです。
後遺障害慰謝料の金額は、各算定基準ごとに後遺障害等級に応じて定められています。
後遺障害等級は、自動車損害賠償法施行令別表第一および第二に定められており、1から14までの等級に分かれています。
ここでは、非公開とされている任意保険基準以外の自賠責基準と裁判所(弁護士)基準の金額について、脊髄損傷のあとに認められる可能性のある7つの後遺障害等級の金額を見てみましょう。
後遺障害等級 | 自賠責基準
(2020年4月1日以降の事故の場合) |
自賠責基準
(2020年3月31日以前の事故の場合) |
裁判所(弁護士)基準 | |
別表第一(要介護等級) | 1級1号 | 1650万円 | 1600万円 | 2800万円 |
2級1号 | 1203万円 | 1163万円 | 2370万円 | |
別表第二 | 3級3号 | 861万円 | 829万円 | 1990万円 |
5級2号 | 618万円 | 599万円 | 1400万円 | |
7級4号 | 419万円 | 409万円 | 1000万円 | |
9級10号 | 249万円 | 245万円 | 690万円 | |
12級13号 | 94万円 | 93万円 | 290万円 |
2.後遺障害等級ごとの主な症状
ここまでに触れたとおり、脊髄損傷の場合、7つの後遺障害等級のいずれかに該当する可能性があります。
それでは、各後遺障害等級の認定基準と主な症状をご紹介します。
後遺障害等級 | 認定基準 | 主な症状 | |
別表第一(要介護等級) | 1級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | ①高度の四肢麻痺が認められる
②高度の対麻痺が認められる ③中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する ④中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する |
2級1号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | ①中等度の四肢麻痺が認められる
②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する ③中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する |
|
別表第二 | 3級3号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | ①軽度の四肢麻痺が認められる
②中等度の対麻痺が認められる |
5級2号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | ①軽度の対麻痺が認められる
②一下肢の高度の単麻痺が認められる |
|
7級4号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 一下肢の中等度の単麻痺が認められる | |
9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの | |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | ①運動性、支持性、巧緻性および速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺が残っている
②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められる |
ここでいう四肢麻痺、対麻痺、単麻痺とは、それぞれ以下のような状態をいいます。
- 四肢麻痺:両側の腕・脚すべての麻痺
- 対麻痺:両側の脚の麻痺
- 単麻痺:いずれかの腕または脚の麻痺
また、高度、中等度、軽度とは、それぞれ以下のような程度をいいます。
①高度:障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作(下肢においては歩行や立位、上肢においては物を持ち上げて移動させること)ができないものをいいます。
以下は具体例です。
・完全強直またはこれに近い状態にあるもの
・上肢においては、三大関節(肩、肘、手首)および5つの手指のいずれの関節も自分では動かすことができないものまたはこれに近い状態にあるもの
・下肢においては、三大関節(股関節、膝、足首)のいずれの関節も自分では動かすことができないものまたはこれに近い状態にあるもの
・上肢においては、随意運動(自身の意思による運動)の顕著な障害によって、障害がある1つの上肢のみでは、物を持ち上げて移動させることができないもの
・下肢においては、随意運動の顕著な障害によって、1つの下肢の支持性および随意的な運動性をほとんど失ったもの
②中等度:障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作にかなりの制限があるものをいいます。
以下は具体例です。
・上肢においては、障害がある1つの上肢のみでは仕事に必要な軽量の物(おおむね500グラム)を持ち上げることができないものまたは障害がある上肢では文字を書くことができないもの
・下肢においては、下肢の一方に障害があるため、杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないものまたは両下肢に障害があるため、杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの
③軽度:障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の巧緻性および速度が相当程度損なわれているものをいいます。
以下は具体例です。
・上肢においては、障害がある1つの上肢のみでは文字を書くことに困難を伴うもの
・下肢においては、日常生活ではおおむね歩くことができるが、下肢の一方に障害があるため不安定で転倒しやすく、速度も遅いものまたは両下肢に障害があるため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの
上記の症状に当てはまるかどうかを適切に判断するのはなかなか難しいものです。
どのような後遺障害等級が認定されるか検討される方は、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
3.後遺障害慰謝料を請求する場合の注意点
脊髄損傷してしまった場合に、後遺障害慰謝料を請求するためには、いくつか注意しなければなならない点があります。
主な注意点は以下の2つです。
- 後遺障害等級認定を受けること
- 適切な等級認定を受けること
順にご説明しますので、どのような点に注意しなければならないのか頭に入れておきましょう。
(1)後遺障害等級認定を受けること
後遺障害慰謝料を請求するためには、自賠責保険に後遺障害診断書等の書類を提出し、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
脊髄を損傷してしまい、後遺障害等級に該当する症状が残ってしまったとしても、そのままで後遺障害慰謝料の請求が認められるかというとそういうことはありません。
後遺障害等級の認定を受けていないと、その等級があることを前提とした請求は認められないのです。
後遺障害等級の認定申請をするためには、まず、症状固定(治療を続けても症状が一進一退の状態となり、治療の効果が上がらない状態)となっていることが必要です。
医師にも相談の上、症状固定となったら後遺障害等級の認定申請を行いましょう。
(2)適切な等級認定を受けること
後遺障害等級の認定申請をすれば、必ず適切な等級で認定を受けられるというわけではありません。
まず、後遺障害等級認定申請の方法は、事前認定と被害者請求の2つがあります。
事前認定は、被害者が加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出しその他の書類はその保険会社が収集して申請する方法です。
この方法だと、被害者の負担が軽くはなります。
しかしながら、認定に必要な資料が十分でなかったり、場合によっては保険会社の顧問医などに後遺障害を否定する内容の意見書をつけられてしまったりと、被害者に不利な形での申請が行われる可能性があります。
一方の被害者請求は、被害者側で必要書類を集めて自賠責保険会社に提出して申請する方法です。
この場合、手間はかかりますが、書類が不足していないかどうかを確認することができますし、不利な資料を添付されてしまうこともなくなります。
資料収集の負担については、弁護士に依頼することで軽減することもできます。
脊髄損傷後の症状について後遺障害等級の認定申請をするときは、被害者請求がおすすめです。
被害者請求の流れについては、以下の記事にまとめているので、あわせてご確認ください。
また、適切な等級認定を受けるためには、後遺障害診断書に後遺障害の内容を正確に記載してもらうことも必要です。
症状固定の判断を受けたら、担当医に自覚している症状を正確に伝えて、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
後遺障害診断書を受け取ったら、自分の状況と照らし合わせて相違がないか確認することも重要です。
この後遺障害診断書の内容についても、経験のある弁護士に依頼して確認してもらうことで抜け、漏れを防げる可能性が高まります。
後遺障害等級認定の申請について不安がある方は、少なくとも書類を提出する前に弁護士に相談し、不備がないか確認してもらうことをお勧めします。
まとめ
交通事故で脊髄を損傷してしまった場合、後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
実際に後遺障害慰謝料を請求するためには、後遺障害等級の認定を受けなければなりません。
後遺障害等級認定を申請する際は、適切な認定を受けられるように被害者請求を行い、後遺障害診断書の内容をしっかりチェックした上で必要書類を提出しましょう。
弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、脊髄損傷による慰謝料でお困りの方はお気軽にご相談ください。
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