任意整理に必要な書類は?!任意整理についてのよくある疑問も紹介

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「任意整理の準備ってどのような書類がいるの?」
「借金の解決には必要な書類が多いって本当?」
債務整理の方法の一つである任意整理には、どのような書類の準備が必要でしょうか。

任意整理は他の債務整理の方法と比べると、必要書類が少ない手続方法です。

この記事では、任意整理の手続に必要な書類や、任意整理に関するよくある疑問点についてご説明します。

1.任意整理の際に用意しておいた方がよい書類とは



任意整理は裁判所等の公的機関を通して行う手続ではありません。

そのため、提出書類等の定めもありませんので、必ずこの書類が必要になる、というものは存在しません。

しかし、弁護士に依頼して任意整理を行う場合には、次のようなものを準備しておくと、任意整理手続や委任契約をスムーズに進めやすくなります。

準備物

  1. 債権者がわかるもの
  2. 家計の収支状況
  3. 印鑑、本人確認書類


これらについてご説明します。

(1)債権者がわかるもの

任意整理は、債権者と直接交渉する方法で行う手続です。

そのため、債権者がわからないことには話を進めることができません。

また、債権者に漏れがあると、返済計画を立てても無駄になってしまう可能性もあります。

弁護士は相談の際、債権者を把握するために相談者から聞き取りを行いますが、その際に、債権者がわかる書類があると誤りを防ぐことができます。

このような書類の代表的なものは、借入れ先やクレジットカード会社からの督促状です。

そのほか、保証会社が代位弁済を行った旨の通知、債権を譲渡した旨の通知、借入れ時の契約書やクレジットカードの利用申込書なども考えられます。

また、債権者から訴訟を提起されている場合は、裁判所から訴状が送られてきているはずですので、それをお持ちいただいた方がよいでしょう。

債権額については弁護士から取引履歴の開示請求を行うことによって把握しますので、必ずしもその記載がある書類が必要というわけではありません。

ただし、相談時に任意整理の見通しを立てるためには総債権額がわかっていた方がよいですから、上記のような書類がない場合は、その債権者からのだいたいの借入額を書き出しておくとよいでしょう。

なお、ここでいう債権者には、消費者金融などの借入れ先やクレジットカード会社だけでなく、携帯電話端末を分割払いで購入した場合の携帯電話会社や個人の借入れ先も含まれます。

約束したお金を支払えていないものは、全て弁護士に報告した方がよいでしょう。

税金や健康保険料等の滞納については任意整理の対象とすることはできません。

これらについては、ご自身で役所等と分割払いの交渉を行っていただくことになりますが、その支払額は家計収支に関わりますので、次の(2)の情報の一つとして確認しておくとよいでしょう。

(2)家計の収支状況

任意整理は、債務の減額および返済期間の再設定について交渉し、借金の負担を返済ができる範囲まで軽減する手続です。

そこで、債権者との交渉の前に本人の家計収支上、どの程度の余裕があるか確認した上で、月々の支払額がその余裕に応じた金額になるよう交渉することになります。

任意整理による解決ができるかどうかを判断するには、(1)からだいたいの総債権額を把握することも必要ですが、家計にどの程度の余裕があるかも必要な情報となります。

だいたいどの程度の余裕があるかを把握できればよいので、資料までは必要ではありませんが、家賃、水道光熱費などの固定費や食費等について大まかな額を確認しておき、簡単な家計収支を作っておくと、相談時にも有用でしょう。

滞納税がある場合は、その支払の負担も考慮することになりますので、その金額は合わせて伝えられるとよいです。

(3)印鑑、本人確認書類

任意整理の手続そのものに必要というわけではありませんが、任意整理を弁護士に依頼する場合は契約書や委任状の作成が必要ですので、印鑑を準備しておきましょう。

印鑑については、実印である必要はありませんが、シャチハタは避けた方がよいでしょう。

また、弁護士によっては、本人確認書類による身元確認を行っている場合がありますので、免許証等の本人確認書類も準備しておくとよいかもしれません。

2.弁護士に依頼した場合の任意整理の流れ



弁護士にご依頼いただくところから、任意整理の一般的な流れをご説明します。

(1)法律相談

弁護士が債権者、債権額や家計の収支状況などをヒアリングします。

この段階で債権者に関する書類やご自身の収支状況についてご準備いただいていると、相談をスムーズに進めることができます。

聞き取った内容から任意整理による解決が可能と判断できたら、相談者に提案し、相談者がこれに同意したら、依頼を受けることになります。

(2)債権者に対する受任通知の送付

任意整理の依頼を受けた弁護士は、債権者に対し依頼を受けたことを知らせる通知(受任通知)を送付します。

弁護士からの受任通知には法的な効果が認められており、これにより、債務者が債権者から直接督促等の連絡を受けることがなくなります。

(3)取引履歴の調査

受任通知を送付すると同時に、債権者に対し、取引履歴の開示を請求します。

これによって各債権者から、取引履歴の開示を受け、正確な債権額と、元本、利息、遅延損害金の内訳を把握します。

また、必要に応じて法定利率による利息の再計算(引き直し計算)を行い、場合によっては過払い金の請求を行います。

(4)債権者との交渉

各債権者の債権額等がわかったら、依頼者の収入状況等も考慮して、月の支払額が返済可能な範囲に収まるよう、債務の減額と返済期間の設定について債権者と交渉します。

債務の減額については利息、遅延損害金の部分について、全部または一部を減額するよう交渉します。

また返済期間については、3~5年と定めることが多いです。

(5)和解書の取り交わし

全ての債権者との交渉がまとまったら、債権者との間で和解書の取り交わしをします。

その後は、和解書の内容に従って、依頼者本人による返済が始まることになります。

3.任意整理に関する疑問点



任意整理に関しては、次のような事情で依頼をためらわれている方もいるのではないかと思います。

(1)契約書、申込書がない

「借入れを行った際の契約書が見つからないから任意整理ができない」とお困りの方も多いのではないでしょうか。

このような場合でも、借入れ先等がわかっていれば、弁護士が債権者に対して取引履歴の開示を求めますので、任意整理を進めるのに大きな問題となることはありません

(2)債権者がわからないケース

任意整理を行う際には債権者を把握する必要がありますが、そもそもそれがわからない、というケースも考えられます。

例えば、消費者金融の合併や社名変更により、現在の借入れ先がどこかわからない場合です。

この場合でも、借入れ時の社名がわかれば、社名変更等を追いかけることにより、現在の債権者を把握することが可能です。

問題は、時間経過等により、そもそも債権者の名前も忘れてしまったという場合です。この場合は、信用情報機関から信用情報の開示を受ける方法で、債権者を調べることができます。

日本には以下の三つの信用情報機関があり、それぞれ加盟している金融機関から契約者の借入れ履歴等の情報(信用情報)の提供を受け、これを管理しています。

  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

信用情報には取引先の名称も含まれますから、これらの機関に信用情報の開示を請求することにより、取引先の情報がわかります。

各金融機関の開示請求の方法は以下のとおりです。

信用情報機関 情報開示請求の方法 開示請求手数料
CIC インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
JICC インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
KSC 郵送のみ受付 ¥1,000

開示請求の詳細については、以下の各信用情報機関のウェブページをご覧ください。

情報開示とは|指定信用情報機関のCIC
信用情報の確認 |日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
本人開示の手続き | 全国銀行個人信用情報センター | 一般社団法人 全国銀行協会
開示請求については、本人による請求が原則となっています。

弁護士に依頼することもできますが、その際には印鑑証明書の提出を求められるなど手続が煩雑になりますので、ご自身で請求をされる方が早いでしょう。

まとめ

任意整理に必要な書類というものが定められているわけではありませんが、債権者との間の書類があると、手続がスムーズに進みます。

また、家計の収支状況を把握しておくことも、方針の検討や、支払可能額の把握に有用です。

弁護士に相談する際には、上記の書類や情報を準備しておくとよいでしょう。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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