車線変更による交通事故の過失割合は?修正要素と示談交渉のポイントについて弁護士が解説

執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
私は、柔和に皆様との会話を重ね、解決への道筋を示させていただきます。
是非とも皆様の不安を解消するお手伝いをさせてください。

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「車線変更により、前方車と後続車との間で交通事故が生じた場合、過失割合はどれくらいになるのかを知りたい。」
「事故の後、相手方と納得のいく過失割合を決めたい。」

車線変更をした前方車とその後続車との交通事故に遭った方の中には、過失割合がどのくらいになるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、車線変更による交通事故の基本的な過失割合や、過失割合が変動する要素のほか、相手方とのスムーズな交渉・示談のための注意点についてご説明します。

この記事を読んで、相手方と納得のいく過失割合の交渉ができるようになっていただければ幸いです。

1.車線変更事故の過失割合について

本項目では、過失割合そのものについて、及び車線変更による交通事故の基本的な過失割合の考え方についてご紹介します。

(1)過失割合とは何か

交通事故における過失割合とは、各々の当事者が、その事故についてどの程度の責任を負うのかを示す割合のことをいいます。

自分の過失割合が大きければ大きいほど責任が重いことになります。

たとえば、自分の過失割合が0%で、相手方の過失割合が100%の場合には、自分に一切責任がないことを示します。

また、仮に、自分の過失割合が30%で、相手方の過失割合が70%の場合には、自分に30%の責任があることになります。

この場合、たとえば自分に100万円の損害が生じていたとすると、100万円の30%分である30万円は自分で負担しなければならず、相手方に請求できるのは70万円にとどまります。

このように、過失割合によって、交通事故に遭った時の損害賠償額が変わることになります。

(2)車線変更事故の基本的な過失割合

それでは、過失割合は具体的にどのように決めるのでしょうか。

まずは、基本的な過失割合という考え方から確認しましょう。

#1基本的な過失割合とは何か

過失割合は、過去に蓄積された裁判例を分析した結果が類型化されています。

たとえば、追突や車線変更事故等といった典型的な事故態様により、基準となる過失割合が存在します。これを、基本的な過失割合といいます。

このように、交通事故の過失割合は、交通事故の類型ごとに基本的な過失割合の目安が決まっています。

そして、これに個別の事故態様に応じた変動要素を加味することによって、最終的な過失割合を算定する仕組みになっています。

#2車線変更事故の基本的な過失割合

次に、車線変更事故の基本的な過失割合をご紹介します。

前方にいた車両が車線変更を行ったが、後方を直進してきた車に接触してしまったという場合の基本的な過失割合は、車線変更した車が70%、後続車が30%です。

この理由は次のとおりです。

すなわち、そもそも、車両はみだりにその進路を変更してはならず(道路交通法26条の2第1項)、進路変更した場合に後ろから来た車両の進路や速度を急に変更させるおそれがあるときには進路変更をしてはいけません(同法同条第2項)。

このように、法律上、前方を走行する車が車線変更をしようとする場合、後方の車に十分注意を払う必要があります。

それにもかかわらず、前方車が注意を怠り車線変更をした結果、後続車と衝突してしまったのですから、前方車には高い過失割合が認められることになります。

他方で、通常、車線変更する車はウインカーを出して進路変更の合図をしているので、後続車は進路変更があることを予測できます。

しかし前方車と後続車が接触してしまったということは、後続車にも軽度の前方不注視があると考えられます。

そこで、後続車にも一定の過失割合が認められることになるのです。

2.車線変更事故の過失割合が変動する要素

本項目では、最終的な過失割合を算定するために加味される、個別の事故態様に応じた変動要素をご紹介します。

(1)前方車がウインカーを出していない

前方車がウインカーを出さずに進路変更した場合、過失割合は、前方車が90%、後続車が10%になります。

車両の運転者は、車線変更する場合、車線変更の3秒前に合図を出さなければなりません(道路交通法53条1項、道路交通法施行令21条1項)。

また、進路変更の合図は、後続車が前方に注意していさえすれば事故を避けるきっかけになるため、重要な意味を持ちます。

そのため、ウインカーを出していない場合には、より重い責任が課されることになります。

(2)後続車のスピード違反

後続車が15km以上30km未満のスピード違反をしていた場合、過失割合は、前方車が60%、後続車が40%になります。

また、後続車が30km以上のスピード違反をしていた場合、過失割合は、前方車が50%、後続車が50%になります。

これは、前方車が進路変更を開始するか否かを判断するにあたって、後続車のスピード違反があれば、適切な判断が期待できないことによります。

(3)後続車がゼブラゾーンを走行していた

後続車がゼブラゾーンを走行していた場合の過失割合は、前方車が40%~50%、後続車が60%~50%になります。

ゼブラゾーンとは、交差点等において通行する車両の、安全かつ円滑な走行を誘導する目的で、道路に記載されたシマシマ模様のことをいいます。

ゼブラゾーンを走行すること自体に法律上の禁止や罰則はありません。

しかし、車両の運転者等の意識として、ゼブラゾーンにはみだりに進入すべきでないと考えているのが一般的です。

そのため、過失割合は、このように修正されることになります。

(4)車線変更が禁止されている箇所で、前方車が車線変更した

車線変更が禁止されている場所で車線変更による交通事故を起こした場合、過失割合は、前方車が90%、後続車が10%になります。

道路には車線変更が法律上禁止されている箇所があります(道路交通法26条の2第3項)。

このように法律上禁止されている箇所にもかかわらず車線変更をした結果事故を起こしたのですから、車線変更をした前方車に重い責任が課されることになります。

(5)後続車に初心者マークがある

後続車に初心者マークがある場合に、前方車が車線変更をして後続車と接触事故を起こしたとき、過失割合は、前方車が80%、後続車が20%になります。

初心者マークとは、運転免許取得後1年未満の者に掲示義務がある初心運転者標識(道路交通法71条の5)のことで、黄色と緑の矢印のような形をしているマークのことをいいます。

後続車が初心者マークを付けている場合、前方車の進路変更に際しての注意義務が加重されます(道路交通法71条5号の4)。

そのため、前方車には重い責任が課されることになります。

(6)わき見運転や居眠り運転など著しい過失や重大な過失

車線変更をした前方車に脇見運転等の著しい過失が認められる場合には、過失割合は、前方車が80%、後続車が20%になります。

また、車線変更をした前方車に居眠り運転などの重大な過失が認められる場合には、過失割合は、前方車が90%、後続車が10%になります。

(7)駐停車している車に衝突

車線変更をした車が、道路上に駐停車している車に衝突した場合、過失割合は、車線変更をした車が100%、駐停車している車が0%になります。

駐停車している車は、通常、後方からくる車の衝突を回避することができませんので、駐停車している車の過失割合は0%になります。

3.相手方との示談・交渉での注意点

本項目では、相手方との交渉において注意すべき点を3点ご紹介します。

(1)相手方加害者の保険会社は加害者側に有利な過失割合を提示することがある

保険会社は中立の立場で交渉をすすめることはありません。

相手方の保険会社は、被害者にとって不利な過失割合を提示することもありえます。

特に、事実に争いがある場合には、注意する必要があります。たとえば、相手方がウインカーを出していたのか否かや、事故の場所が本当に車線変更が禁止されている場所だったのか等です。

このように、事故当時の事実に争いがある場合には、当事者同士の話し合いで解決することは難しいことが多くあります。

早期解決のために、お早めに弁護士に相談することを強くお勧めします。

弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で承っております。どうぞご利用ください。

(2)安易に示談に合意しない

仮に過失割合に争いがない場合であっても、異なる基本過失割合や修正要素を適用することによって過失割合を有利に変更することができる可能性があります。

そのため、安易に示談に合意しないで、第三者である弁護士の意見を聞くなどしてから示談に合意するようにすることをお勧めします。

(3)損害賠償額請求に時効がある

交通事故による損害賠償請求には時効があります。

損害賠償請求の時効が成立し、加害者がそれを援用すると、被害者は加害者に対し損害賠償を請求することができなくなります。

人身事故の場合の時効は5年、物損事故の場合は3年ですが、詳しくは以下のページをご参照ください。

交通事故の損害賠償請求には時効があるの?交通事故被害者が知っておくべき注意点もご紹介

まとめ

本記事では、車線変更による交通事故の基本的な過失割合や、過失割合が変動する要素のほか、相手方とのスムーズな交渉・示談のための注意点についてご紹介しました。

車線変更にともなう交通事故の基本的な過失割合は、車線変更した車が70%、後続車が30%です。しかし、個別の事故態様に応じて基本的な過失割合は変動します。

過失割合がどのように変動するのか判断がつきにくい場合や、当事者同士で過失割合についての見解が異なる場合があるかと思います。

このような場合は、弁護士に相談することで早期解決を図ることができます。

弁護士法人みずきは、交通事故に関するご相談を無料で承っております。お気軽にご相談ください。

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執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
私は、柔和に皆様との会話を重ね、解決への道筋を示させていただきます。
是非とも皆様の不安を解消するお手伝いをさせてください。