自己破産するとどのような影響がある?手続中と手続後の影響を弁護士が解説
「自己破産を行うことでどのような影響があるのか」
「自己破産をするとできなくなることは何?」
「手続後にもできることはどのようなものか知りたい」
借金の返済が滞り、返済の目途が立たない方の中には自己破産を行うことを検討されている方もいるかと思います。
自己破産を行うことで、原則としてすべての借金の返済義務を免れることができます。
もっとも、自己破産は裁判所に申し立てることで開始される手続であることから、手続中には様々な影響を受けます。
また、手続が終了した後にもいくつかの注意点があります。
本記事では、自己破産を行うことによる影響を手続中と手続後に分けて解説します。
自己破産を行った後にもできることを合わせて解説していますので、これから自己破産を行うことを検討されている方の参考となれば幸いです。
1.自己破産の概要
自己破産とは、債務整理の手続の1つであり、裁判所に借金の返済が不可能であることを認めてもらい、返済義務を免除(免責)してもらう手続です。
すべての借金の返済義務を免れることができるため、ほかの債務整理手続である任意整理や個人再生と比べると、メリットが大きいといえます。
もっとも、住宅や土地などの不動産、車やバイクなどの高額な財産を所有している場合には、手続の中で換価処分され、債権者に配当されてしまい、財産を失うリスクがあります。
しかし、99万円以下の現金や一定の金額以下の財産については引き続き手元に残すことができるため、すべての財産を失ってしまうわけではありません。
また、自己破産の手続は裁判所を介して行われ、借金の返済義務の免除を受けるためには、裁判所から免責許可決定を受ける必要があります。
このように、自己破産は裁判所によって進行されるため、透明性の高い手続を期待することができますが、それゆえに様々な制約や影響を受けることがあります。
自己破産を行うことによる制約や影響は、手続が進行している間に生じるものと手続が終了した後のものに分けることができます。
それぞれについては、次項で詳しく解説します。
なお、自己破産についてよくある質問については、以下の記事で取り上げていますので、合わせてご参照ください。
2.手続中の影響
裁判所に自己破産の申立てを行い、免責許可決定を受けるまでには、様々な注意点や影響があります。
具体的には、以下のとおりです。
- 借金の支払いが一旦停止する
- 住宅が差し押さえられる
- 車やバイクを失う可能性がある
- 保険を解約しなければならない場合がある
- 一部の資格や職業が制限される
- 旅行や転居をする場合には裁判所の許可を要する
順にご説明します。
(1)借金の支払いが一旦停止する
自己破産の手続では、破産者が有する財産を換価し、債権者に平等に配当することが目的となっています。
そのため、自己破産を行うことで、すべての債権者への返済が一旦停止します。
これは、債権者が家族や友人など、破産者の身近な人であっても同じです。
一部の債権者だけに借金の返済を行うことを偏頗弁済といい、これを行うと免責不許可事由に該当します。
免責不許可事由に該当してしまうと、借金の返済義務の免除を受けることができず、自己破産を行っても借金の負担がなくならないため注意が必要です。
なお、自己破産を行う前に一部の債権者に返済を行ってしまうと、破産管財人に否認権を行使され、その法的効力が自己破産手続の中で否定されることになります。
このように、自己破産手続中には、破産者の財産が流出するような行為を行うことが制限されます。
(2)住宅が売却される可能性がある
自己破産を行うと、破産者の有する財産は一部を除いて原則として換価処分されるのは上述のとおりです。
そのため、住宅や土地などの不動産についてはまず任意売却を検討します。
また、住宅ローンの返済中に自己破産を行うと、住宅や土地に設定されている抵当権が実行され、住宅や土地を失うことになります。
このように、持ち家であれば、差押えや抵当権の実行などによってその所有権を失うこととなり、住み続けることができなくなってしまうことに注意が必要です。
なお、賃貸住宅の場合には、自己破産を行ったことを理由として賃貸借契約を解除されることは原則としてありません。
そのため、持ち家の場合とは異なり、直ちに住む場所を失うわけではありません。
もっとも、賃料を長期にわたって滞納しているなどの事情があれば、賃貸借契約を解除されてしまう可能性があります。
自己破産中に賃貸借契約が解除されてしまう可能性がある主なケースについては、以下の記事でも解説していますので、合わせてご覧ください。
(3)車やバイクを失う可能性がある
車やバイクを所有している場合には、自己破産を行うことによって所有権を失う場合があります。
一般的に、車やバイクをローンで購入する場合には、信販会社の所有権留保が付されることがほとんどです。
所有権留保とは、商品を買主に引き渡した後も信販会社に所有権を留めることをいい、買主がローンの残債を支払うことができなくなった際に商品を引き上げて残債を回収する方法をいいます。
そのため、車やバイクのローンの残債がある場合には信販会社に引き上げられてしまいます。
また、ローンを完済していた場合でも、車やバイクの査定額が20万円以上となる場合には、原則として換価処分が行われます。
もっとも、初年度登録から5~7年以上が経過している場合には、査定額は20万円未満となることが多いです。
なお、どのような場合に車やバイクを処分する必要があるのかについては、裁判所によっても運用が異なるため、あらかじめ弁護士に確認しておきましょう。
(4)保険を解約しなければならない場合がある
保険に加入している場合には、その内容や種類によっては解約しなければならない場合があります。
具体的には、保険を解約することによって受け取ることができる解約返戻金の金額が20万円以上となる場合です。
保険の中でも解約返戻金を受け取ることができるものは、貯蓄型の保険であり、以下のようなものが挙げられます。
- 生命保険
- 養老保険
- 自動車保険
- 火災保険 など
解約返戻金の金額が20万円を上回る場合には、債権者に配当を行うことができる財産として扱われるため、保険を解約して債権者に配当する必要があります。
また、複数の保険に加入している場合には、解約返戻金の合計が20万円を上回るかどうかで解約の必要性を判断します。
自己破産における保険解約の必要性の判断や解約しなくてもよいケースについては、以下の記事でも解説していますので、合わせてご参照ください。
(5)一部の資格や職業が制限される
自己破産を行っても、原則として職業に影響はありませんが、自己破産手続中には一部の資格を利用することや一定の職業に就くことが制限されます。
具体的には、以下のような資格や職業に制限が加わります。
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 公認会計士
- 税理士
- 警備員
- 保険外交員 など
これらの資格や職業については、自己破産手続中には制限を受けるため、一時的に休職や転職をしなければならない場合があります。
もっとも、免責許可決定を受けることによって、資格や職業の制限は解除(復権)されるため、手続の終了とともに再びこれらの仕事を行うことは可能です。
自己破産による職業制限や注意点については、以下の記事が参考になります。
(6)旅行や転居をする場合には裁判所の許可を要する
自己破産の申立てを行い、破産手続開始決定がなされると、手続が終了するまでの期間は裁判所の許可なく居住地を離れることができなくなります。
そのため、自己破産の手続中に旅行や転居をする場合には、あらかじめ裁判所の許可を得る必要があります。
これは、破産者が逃亡を図るなどして、手続の円滑な進行に支障をきたさないことを目的とした制限といえます。
一般的には、2泊以上をともなう旅行や出張の際に裁判所の許可が必要とされますが、海外渡航の場合には1泊であっても許可が必要となるケースもあります。
なお、持ち家が換価処分される場合には、転居の必要性が当然生じます。
このような場合には、裁判所もその必要性を認識しているため、転居の許可を出さないケースはほとんどないといえます。
もっとも、転居する場合には荷物の搬出や搬入などの作業や事務手続が必要となることが多いため、転居を検討している場合にはなるべく早期に弁護士に相談し、必要な許可申請を裁判所に対して行うことが重要です。
自己破産中や自己破産後に転居をする場合の注意点については、以下の記事でも解説していますので、合わせてご参照ください。
3.手続後の主な影響
自己破産の手続は、裁判所から免責許可決定を受け、それが確定することによって終了します。
免責許可決定が下されれば、すべての借金の返済義務から解放されます。
手続が終了すれば、資格や職業の制限が解除され、これまでのように仕事を行うことができるほか、転居や旅行もすることができます。
もっとも、自己破産の手続が終了した後にも様々な影響が生じます。
主なものとしては、以下が挙げられます。
- クレジットカードの利用や新規借入れができない
- 一部の債務については支払義務が残る
- 賃貸住宅の契約ができない場合がある
- 保証人になることができない
それぞれについてご説明します。
なお、免責許可決定後の影響については、以下の記事も参考になります。
(1)クレジットカードの利用や新規借入れができない
自己破産の手続が終了した後は一定期間にわたってクレジットカードの利用や新規申込み、ローンや借入れの利用ができなくなってしまいます。
これは、自己破産に限らずほかの債務整理手続を行った場合にも当てはまりますが、これらの手続を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されることが原因です。
金融機関などは新規のローンや借入れの申込みがあった際に信用情報機関に対して照会を行い、信用情報機関は照会によって支払状況などの情報提供を行います。
事故情報が登録されているということは、その人の支払能力に問題があることを意味するため、金融機関などは申込みを拒否することになります。
これによって、自己破産手続が終了してから一定期間を経過するまでは、クレジットカードやローンの審査に通ることができなくなり、これらの利用ができないことに注意が必要です。
事故情報が削除されるまでの期間は信用情報機関によって異なり、一部の信用情報機関から事故情報が削除されたとしても、ほかの信用情報機関に事故情報の登録が残っている間はクレジットカードやローンの利用ができないことがほとんどです。
そのため、信用情報が回復するまでには10年ほどの期間を要することも押さえておきましょう。
事故情報が削除されたかどうかを確認する方法や信用情報が回復した後の注意点などについては、以下の記事も参考になります。
(2)一部の債務については支払義務が残る
自己破産を行い、免責許可決定を受けることで、借金の支払義務を免れることができます。
しかし、債権の種類によっては引き続き支払義務が残ります。
これを非免責債権といい、具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 租税等の請求権
- 一部の不法行為に基づく損害賠償請求権
- 親族や子どもの扶養・監護に関する請求権
- 夫婦間の扶助・協力義務に関する請求権 など
非免責債権に該当するものについては、自己破産手続で免責許可決定を受けたとしても支払義務を免除されず、手続の終了後も支払いを行わなければなりません。
もっとも、不法行為に基づく請求権に関しては、すべてのものが非免責債権となるわけではなく、破産者が悪意で加えた不法行為と故意または重過失で加えた生命・身体を害する不法行為に基づくものに限定されます。
これによれば、うっかり起こしてしまった交通事故の損害賠償は免責される可能性が高いですが、人を轢いてやろうと思って起こした事故の損害賠償は免責されません。
手続後にどのような債務の支払義務が残るのかが判断できない場合には、弁護士に確認することがおすすめです。
(3)賃貸住宅の契約ができない場合がある
賃貸住宅に住んでいる場合には、賃料を滞納していない限り、自己破産を原因として賃貸借契約を解除されることは原則としてありません。
そのため、自己破産の手続が終了後も引き続き住み続けることが可能です。
もっとも、自己破産後に転居などで新たに賃貸借契約を結ぶ場合には、物件によっては契約を締結できないケースも考えられます。
具体的には、賃貸借契約を結ぶ際に指定された保証会社と保証委託契約を締結する必要がある物件を借りるケースです。
この際に保証会社は信用情報機関に支払能力などについて照会を行い、事故情報が登録されていることが明らかとなれば、審査に通過できない可能性が生じます。
このような場合には、保証会社と保証委託契約を結ぶことができず、賃貸借契約を締結することも難しくなる場合があります。
もっとも、保証会社との契約が必須である物件を避けたり親族を連帯保証人に立てたりすれば、賃貸住宅の契約ができる可能性もあります。
また、同居する家族を契約名義人とするなどの対応も考えられるでしょう。
(4)保証人になることができない
自己破産を行い、信用情報機関に事故情報が登録されている間は保証人になることができません。
そのため、子どもの学資保険や奨学金の保証人となることができなくなってしまうので、注意が必要です。
奨学金の保証人や連帯保証人になることができる人の範囲は限定的である場合が多いため、同居している配偶者やほかの親族などに保証人を依頼することも検討してみましょう。
4.手続後でもできること
上記で解説したとおり、自己破産を行うことで、手続の終了後にも様々な影響が生じます。
もっとも、その後の生活にそれほど大きな影響が生じないこともあり、中には自己破産前と同じようにできることがあります。
以下については、自己破産の手続後も問題なく行うことが可能です。
- 携帯電話やスマホの利用・購入
- 車やバイクの購入
- 起業や会社の設立
- 財産の貯蓄や運用
順にご説明します。
なお、以下の記事も参考になります。
(1)携帯電話やスマホの利用・購入
携帯電話やスマホは、利用料の滞納や本体を分割払いしている残債がない限り、自己破産手続中でも引き続き利用することができ、手続の終了後も問題なく利用し続けることが可能です。
また、新たに機種変更や購入をすることもできますが、信用情報機関に事故情報が登録されている間はクレジットカードや分割払いで購入できないことに注意が必要です。
そのため、一括払いで購入するなどの対応が必要になる場合があります。
自己破産後に携帯電話やスマホを契約するときの注意点については、以下の記事でも解説していますので、合わせてご覧ください。
(2)車やバイクの購入
自己破産後には車やバイクを購入し、利用することができます。
もっとも、携帯電話やスマホの場合と同様に、信用情報機関に事故情報が登録されている間は信販会社などのローンの利用ができないことに注意が必要です。
そのため、価格が比較的安い中古車を一括で購入する、販売店に自社ローンを組んでもらうなどの対応が必要となります。
また、自己破産後に車などを購入するそのほかの方法については、以下の記事も参考になります。
(3)起業や会社の設立
自己破産を行った場合でも、手続の終了後に新たに事業を立ち上げたり会社を設立したりすることができます。
もっとも、信用情報が回復していない間は銀行などの金融機関から融資を受けることができません。
また、事業を行うのに必要なオフィスを借りる際に保証会社との保証委託契約を結ぶ必要がある物件については、契約ができない可能性もあります。
そのため、起業をすることは可能ですが、制約を受ける場合があることを押さえておきましょう。
なお、自己破産後に事業の立ち上げや起業する際の注意点や対処法については、以下の記事もご参照ください。
(4)財産の貯蓄や運用
自己破産手続の開始決定後に取得した財産(新得財産)については、破産手続きの中で換価されません。
そのため、自己破産後に取得した財産については自由に貯蓄や運用を行うことができます。
まとめ
本記事では、自己破産を行うことによる影響について解説しました。
自己破産の手続が進行している間には、資格や職業の制限が生じるなど、様々な影響がありますが、免責許可決定を受けることができれば、その影響がなくなるものも多いです。
もっとも、免責許可決定を受けて手続が終了した後にも、借入れが一定期間できないなどの影響が生じるため、生活への影響を把握しておくことが重要です。
弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの自己破産の手続に対応してきました。
経験のある弁護士が丁寧にお話を伺いますので、自己破産を行うことをご検討の方はお気軽にご相談ください。
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