後遺障害等級2級の主な症状と慰謝料相場について弁護士が解説
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「後遺障害等級2級に認定される症状はどのようなものがあるのだろうか」
「後遺障害等級2級って、どのくらい慰謝料がもらえるのだろうか」
後遺障害等級2級は、1~14級の等級のうち上から2番目に位置しており、労働能力喪失率が100%となる重度の障害を残す等級です。
ここでは、後遺障害等級2級とはなにか、後遺障害等級2級となる症状、賠償に関すること、および後遺障害等級2級に認定された場合に弁護士に相談するメリットなどついてご説明します。
この記事が、交通事故に遭い後遺障害等級2級に認定された場合、今後のとるべき行動などを考える際の参考となれば幸いです。
1.後遺障害等級2級
(1)後遺障害等級2級とは
後遺障害とは、交通事故による後遺症のうち、交通事故が原因であることが医学的に証明されるとともに、労働能力の低下や喪失が認められ、その程度が自賠法に定められた1から14までの等級のいずれかに該当するものをいいます。
交通事故によって怪我をした場合に、一定期間必要な治療を行ったにもかかわらず、症状が一進一退となり、治療を続けても効果が認められない状態となったとき(症状固定)、残ってしまった症状が後遺症です。
これが一定の類型に当てはまる場合に後遺障害として認められることとなります。
後遺障害等級は、後遺障害による賠償金の算定の目安となるもので、後遺障害の内容に応じて、重いものから順に1から14級が定められています。
後遺障害等級2級は、かなり重い部類の傷害であり、生活に著しい支障を及ぼす障害が多く含まれます。
(2)後遺障害2級の認定条件
後遺障害2級の認定基準は、常に介護を要する別表第1と、介護を要さない別表第2に分けられており、別表第1の後遺障害2級は「後遺障害要介護2級」と言われています。
後遺障害2級に認定される条件(症状)は以下のようなものになります。
1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
2号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2号 両眼の視力が0.02以下になったもの
3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
4号 両下肢を足関節以上で失ったもの
(3)後遺障害等級2級(要介護2級)となる各症状
#1 1号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの)
脳や神経に重い障害が残ったことで、意思疎通を図ることはできるものの状況によっては一人で身の回りの処理が行えない場合、後遺障害要介護2級1号に認定されることになります。
「随時介護を要する」とは、「常時」ではないものの、生命維持に欠かせない身の回りの処理動作が状況によっては行えない場合をいいます。
具体的には、「食事」「入浴」「用便」「更衣」などを1人で行うことができず、介護が必要になる場合がこれに当てはまるでしょう。
神経系統の動きや精神に著しい障害が残り、随時介護を要するものが1号の症状となります。
1号に該当するものの例として、脳の器質的障害、脊髄の障害、末梢神経障害、外傷性てんかん、眩暈などの平衡機能障害が挙げられます。
その中でも後遺障害要介護2級1号に認定される代表的な例は、脳の障害のうち高次脳機能障害です。高次脳機能障害とは、脳に損傷を負い、日常生活や社会生活に支障をきたす状態をいいます。
なお、高次脳機能障害は、脳の器質的病変を原因とするものであることから、MRIやCTなどによりその存在が認められることが必要です。
高次脳機能障害で要介護2級1号に該当する場合とは、以下のいずれかの場合をいいます。
① 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
例:自分一人では立てないなど身体機能の障害が重く、生命の維持に欠かせない日常生活動作が自立して行えない場合。
② 高次脳機能障害による認知症、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
例:普通に歩行等は可能であるが、夜中に外を徘徊したり、他人とのコミュニケーションに著しい支障を生じるほどの人格の変化があるため、日常生活動作に監視に近い見守りが必要である場合
③ 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの
例:日常の生活動作(食事、入浴、用便など)はできるが、外出しても目的地に到達できないなど、徘徊してしまうため、1人での外出が困難である場合。
以上が、要介護2級1号に該当する場合の説明・例示になります。
要介護2級1号の要件に該当すると判断されるためには、上記3つのうちいずれかに該当することが必要となります。
#2 2号(胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの)
「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」とされていますが、言い換えると、要介護2級2号とは、胸腹部臓器の機能に著しい障害が残ってしまったがために、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について随時介護を必要とするものをいいます。
胃や食道などの腹部臓器に加え、呼吸器系(肺)や循環器系(心臓)の部位における障害が対象となります。
そして、要介護2級2号が認められるのは、主に、呼吸器の障害です。
なお、「随時介護を要する」の意味は、要介護2級1号の場合と同様となります。
肺には、2つの機能があります。
ひとつは気管を通じて入ってきた空気を出し入れする換気機能、もうひとつは酸素と炭酸ガスを血液中でやり取りする呼吸機能です。
自賠責保険に後遺障害認定申請を行う場合、呼吸器系の後遺障害の認定は、3種類の測定結果を元に判断します。
換気機能を検査する場合は「肺機能検査」、呼吸機能を検査する場合は「動脈血ガス分析」を行い、この2種の検査を行っても立証ができない場合は「運動負荷試験」を行います。
原則としては「動脈血ガス分析」の検査結果によって後遺障害等級の認定を行いますが、これによる判定が「肺機能検査」と「運動負荷試験」の検査結果をもとに認定した後遺障害等級よりも低い等級となる場合は、肺機能検査又は運動負荷試験の検査結果をもとに後遺障害等級認定を行います。
①動脈血ガス分析
動脈血ガス分析の検査には、血液ガス自動分析装置という検査機械を使用します。
動脈から採取した血液を10分以内に血液ガス自動分析装置にかけて分析を行います。
動脈の血液は、主に手首の橈骨動脈や腕の上腕動脈などから採取することが多いです。
動脈血ガス分析では様々な血液ガスの濃度や分圧、飽和度等を調査することができますが、自賠責保険に後遺障害認定申請をする際に使用するデータは、「PaO2(酸素分圧)」と「PaCO2(炭酸ガス分圧、二酸化炭素分圧)」の2種類です。
酸素分圧及び炭酸ガス分圧はTorr(トル)という単位が用いられます。 健常な人の場合、酸素分圧は80~100Torr、炭酸ガス分圧は37~43Torr程度だと考えられています。
この2つの分圧のいずれか片方、もしくは両方に異常が見られる場合は、その程度に応じて、後遺障害等級が認定されることになります。
②肺機能検査
肺機能検査は、肺の換気機能を調べる検査です。
スパイロメーターという計測器を使用します。
スパイロメーターとは、呼吸機能を検査するための医療機器のことです。
この呼吸機能検査(測定方法)のことを、スパイロメトリーともいいます。
具体的には、肺に出入りする空気の換気機能のレベルを調べ、肺の働き、気管支喘息、肺気腫など、肺の病気が疑われる疾患がないかを調べる検査にスパイロメーターは用いられます。
検査の際は、鼻をノーズクリップで止め、呼吸管を接続したマウスピースを口にくわえて息を吸ったり吐いたりする動作を複数種類行います。
検査の所要時間は10分程度で、痛みや苦痛は全くありません。
スパイロメーターによる検査では、複数項目の肺機能に関するデータを測ることができますが、自賠責保険に後遺障害認定申請を行う場合に使用するデータは「%肺活量」と「%1秒量」の2つです。
%肺活量とは、実測肺活量が、年齢、性別、身長、体重等から算出された予測肺活量(基準値)の何%に値するかを比較するものです。
%1秒量は、努力性肺活量(大きく吸った全部の息を一度に強く吐き出す時の肺活量のことをいいます)のうち、最初の1秒間に吐き出された空気の量がどのくらいの比率になるかを調べる検査です。
健常な人の場合、%肺活量は80%以上、1秒量は70%以上だと考えられています。
肺機能検査による後遺障害の等級認定は、この2つの検査数値の他、呼吸困難の程度に応じて等級が認定されることになります。
③運動負荷試験
上記2種の検査で立証できないものの、呼吸機能の低下による呼吸困難が認められる場合は、運動負荷試験を行います。
運動負荷試験とは被験者の心肺機能の異常とその程度を把握し、どの程度までの運動であれば安全に行うことができるのかを評価するための試験です。
要介護2級1号に該当する場合とは、具体的には、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
・動脈血炭酸ガス分圧が50Torr以下のもの
・動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下で、かつ、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37Torr以上43Torr以下)にないもの
・スパイロメトリーの結果が%1秒量35以下または%肺活量が40以下であるもので、かつ、高度の呼吸困難(呼吸困難のため、連続しておおむね100メートル以上歩けないもの)が認められるもの
※酸素分圧とは、気体の中で酸素が占める圧力のことを指します。
1気圧=760Torr(mmHg)で、大気中に占める酸素の割合は約21%であることから、大気中の酸素分圧は「760×0.21≒160Torr」となります。
(4) 後遺障害等級2級となる各症状
#1 1号(1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの)
交通事故によって、片方の目が完全に失明し、失明していない方の目の視力が0.02を下回る状態になると、第2級1号が認定されます。
なお、矯正視力を基準としているため、眼鏡・コンタクトレンズ・眼内レンズを着用することで視力が0.02を超える場合は適用されません。
「失明」とは、以下のいずれかをいいます。
⦁ 眼球が事故により直接失われた、または事故後の手術で眼球を取り出した
⦁ 光の明暗が全く分からない
⦁ 光の明暗が辛うじて分かる(暗室で目の前に点滅する照明の明暗が分かる又は目の前で動く手のひらの上下左右の方向が分かる)
#2 2号(両眼の視力が0.02以下になったもの)
2号も視力に著しい障害がある場合に認定される症状です。
交通事故によって、両目の視力が0.02を下回る状態になると、第2級2号が認定されます。
なお、矯正視力を基準としているため、眼鏡・コンタクトレンズ・眼内レンズを着用することで視力が0.02を超える場合は適用されません。
#3 3号(両上肢を手関節以上で失ったもの)
交通事故により両上肢を手関節以上で失うことを症状とします。
「上肢を手関節以上で失う」とは、以下のいずれかの場合をいいます。
・肘関節と手関節(手首の間接)の間で上肢が切り離された
・手関節において、橈骨(2本ある前腕骨のうち親指側の骨)
・尺骨(2本ある前腕骨のうち小指側の骨)と手根骨(手のひらの末端にある有頭骨など8つの骨のまとまり)とが切り離された
両上肢を手関節以上で失うと、両手を使うことが全くできなくなり、生活に大きな支障を来すことになります。
#4 4号(両下肢を足関節以上で失ったもの)
交通事故により、両下肢を足関節(足首の関節)以上で失うことを症状とします。
「下肢を足関節以上で失う」とは、以下のいずれかの場合をいいます。
・膝関節と足関節との間で下肢が切り離された
・足関節において、脛骨(けいこつ)
・腓骨(ひこつ)と距骨(きょこつ)とが距腿関節で切り離された
両下肢を足関節以上で失うと、立つ・歩くなど生活の基本動作ができなくなります。
2.後遺障害等級2級が認定されると請求できる賠償金の相場
(1)後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺障害が残ったことで、今後も受け続ける精神的苦痛に対する補償をいいます。
交通事故で被害にあったことによる慰謝料の金額を算出する際、以下の自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の三つの計算基準があります。
①自賠責基準
自動車やバイクを運転する際に加入が義務付けられている自賠責保険が定めている基準。
交通事故被害者のための最低限度の保障を目的とするものであるため、金額は低廉となる。
②任意保険基準
任意保険会社が定めている基準。
各社が任意に決めており非公開となっているため明確になっていないものの、自賠責基準と同程度か少し高めの金額であることが多い。
③弁護士基準(裁判基準)
過去の裁判例をもとに算出された慰謝料額の目安のことで、三つの中で慰謝料の額が最も高額となることが多い。
参考までに、後遺障害等級2級の慰謝料について、自賠責基準と弁護士基準を比較すると以下のとおりとなります。
(要介護後遺障害2級の場合)
自賠責基準 | 弁護士基準 |
1203万円 ※2020年3月31日までに発生した事故は1163万円 |
2370万円 |
(要介護なし後遺障害2級の場合)
自賠責基準 | 弁護士基準 |
998万円 ※2020年3月31日までに発生した事故は958万円 |
2370万円 |
弁護士基準(裁判基準)を用いると、自賠責基準の約2倍の慰謝料となることがわかります。
弁護士に依頼することで、弁護士基準で算出した慰謝料を相手方に請求することができるので、慰謝料の大幅な増額が期待できます。
(2)後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって失われる将来の収入のことです。
後遺障害逸失利益の計算式は以下のとおりです。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数
以下、各項目についてご説明します。
①基礎収入
原則として、事故前年の収入を用います。
主婦や学生等、収入を得ていない方でも、平均収入(賃金センサス)を用いて計算することが可能な場合があります。
②労働能力喪失率
後遺障害が残った場合、その等級に応じ、労働能力が制限されます。
自賠法上の後遺障害は、等級ごとに目安となる労働能力の制限の程度(労働能力喪失率)が定められています。
後遺障害等級2級の場合は、労働能力喪失率は100%とされています。
この労働能力喪失率にしたがって、将来の収入も減少すると考えて、逸失利益を計算することになります。
③労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数
まず、労働能力喪失期間は、原則として67歳までの期間を基準とします。
また、平均余命の2分の1と67歳までの期間を比較して平均余命の2分の1の方が長い場合は平均余命の2分の1の期間を用います。
67歳以上の方については、平均余命の2分の1となります。
逸失利益は将来にわたって発生するものです。
しかし、損害賠償の支払を受けるときには、これを前払いしてもらうことになります。
そのため本来受け取る時期までの利息(中間利息)を控除しなくてはなりません。
各年数に応じて中間利息を控除した金額を算出するための数字がライプニッツ係数です。
例えば、15年のライプニッツ係数は11.9379となっています。
この数字をかけることにより、中間利息が控除された金額を算出することができます。
以上に従い、例として、年齢52歳で事故前の年収が500万円の人が後遺障害等級2級の認定を受けた場合の逸失利益を計算すると以下のようになります。
500万円×100%×11.9379=5968万9500円
3. 後遺障害等級2級で弁護士に相談するメリット
弁護士に相談するメリットについてご説明します。
(1)交渉や後遺障害申請等の手続を一任
弁護士に依頼した場合、相手方とのやり取りは全て弁護士が行うことになります。
後遺障害等級2級は、後遺障害等級の中でもかなり重い部類に該当します。
ご家族による介助等が必要なケースも多く、それだけで負担が大きいにもかかわらず、慣れない保険会社との交渉手続に対応していくのは、精神的にも肉体的にもかなり負担が大きいと思われます。
しかし、弁護士に依頼すれば、それらの負担を抱える必要はありません。
依頼した後は治療に専念できるので、事故対応のストレスが軽減され時間の節約にもつながるでしょう。
(2)慰謝料の増額
弁護士が介入した場合、前述のとおり、後遺障害慰謝料の金額はおよそ2倍に増額します。
これは、弁護士が被害者の代理人として交渉する場合、交渉が決裂したときには裁判に移行する可能性が高くなるため、相手方も弁護士基準での示談に応じやすくなるからです。
このように、賠償額の増額が見込めることは弁護士に相談する大きなメリットと言えるでしょう。
(3)適切な後遺障害等級が認定される可能性が上がる
後遺障害等級の認定は、資料に基づく書面審査のため、提出書類によっては思うような認定結果が得られないケースが多々あります。
後遺障害申請の手続には、加害者の任意保険会社が主導する事前認定と、被害者自身が手続を行う被害者請求の2種類の方法があります。
事前認定では、被害者は後遺障害診断書を医師に作成してもらって加害者の任意保険会社に提出するだけでよく、後の書類は加害者の任意保険会社が収集し、提出してくれます。
しかし、その他の書類の内容を確認することはできませんし、十分に資料が集められているかを確認することもできません。
一方、被害者請求では、すべての書類を被害者が集めることになりますので、内容の確認漏れなどはなくなります。
しかし、そのための負担は大きいものとなってしまいますし、内容の確認のための知識がなければ結局十分に書類を集められないのと変わりありません。
このような場合、交通事故の案件を多く取り扱う弁護士に依頼すれば、手続を代行してもらうことができますし、適切な記載がされた後遺障害診断書を書いてもらえるよう医師に促してもらうことなどもできます。
弁護士に手続を依頼することにより、本来認定されるはずの後遺障害等級が認定されないリスクを抑えることができるでしょう。
まとめ
本記事では、後遺障害等級2級の概要や認定条件のほか、弁護士に相談するメリットなどをご紹介しました。
また、専門家である弁護士に相談することで、後遺障害等級2級が認定されることで生じるご不安の解決や慰謝料の金額が適切かどうかといった相談ができるでしょう。
後遺障害等級2級について懸念点などがある方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
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