過失割合が10対0の事故では示談金の相場は?請求する際の注意点

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

「過失割合が10対0の事故でもらえる示談金の種類が知りたい」
「示談金の相場について知りたい」

交通事故に遭われた時、示談金についてわからないことも多く、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、過失割合が10対0の事故の時に貰える示談金の種類や、その相場についてご説明します。

1.10対0の事故でもらえる示談金の種類とは

過失割合が10対0の事故とは、加害者側にすべての過失があり、被害者側には一切非がないケースを指します。

この場合、被害者は発生した損害の100%を加害者へ請求することができます。

では、賠償請求できる損害の種類についてご説明します。

(1)治療費・通院交通費

交通事故によって怪我をした場合は、治療にかかった費用も損害に含まれます。

相手方が任意保険会社に加入していれば、保険会社が病院に直接支払う形で治療費を負担することがほとんどです。

また、通院する際に交通費がかかっている場合には、これも損害として賠償を受けることができます。

(2)休業損害

交通事故による怪我や治療のために仕事を休んで減ってしまった分の収入や、有給休暇を利用した時の有給分について、休業損害として受け取ることができます。

(3)入通院慰謝料

交通事故によって怪我をした場合には、入通院の日数や期間に応じて慰謝料が支払われます。

(4)後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、一定期間治療したにもかかわらず怪我が完治せず、後遺症として残ってしまった場合に請求できます。

請求するためには、後遺障害の等級認定を受ける必要があります。

(5)逸失利益

後遺障害等級が認められた場合は、後遺障害慰謝料に加えて逸失利益を請求することができます。

逸失利益とは交通事故被害により後遺症が残ることにより、本来の労働能力が失われたことに対する補償のための示談金になります。

2.示談金の計算方法とその相場

示談金の計算方法には、自賠責保険が定める自賠責基準、任意保険会社が定める任意保険基準、過去の判例をもとに定められた弁護士基準の3種類があります。

ただし、弁護士基準を用いて示談金を算出するためには弁護士に依頼する必要があります。

各損害について、3つの基準ごとの計算方法についてご説明します。

(1)入通院慰謝料

#1: 自賠責基準

自賠責基準の入通院慰謝料は、4300円(※2020年3月31日以前の事故の場合は4200円)×算定期間で算出します。

算定期間には、入通院を開始した日から終了するまでの期間(通院期間)もしくは実際に病院に通院した日数(実通院日数)の2倍のどちらか少ない方を採用します。

#2: 任意保険基準

任意保険基準は、任意保険会社が独自に定めており、その計算方法は公開されていません。

ただし、任意保険基準を用いて算出した慰謝料は、多くのケースでは自賠責基準よりもやや高い程度と、高額の慰謝料は期待できません。

#3: 弁護士基準

弁護士基準では、原則として入院・通院した期間に応じて慰謝料が決まります。

さらに、怪我が軽傷か通常程度の怪我であるかどうかによって算定表が分けられています。

軽傷の怪我とは、画像での異常がみられないむちうちや軽度の打撲、擦り傷などを指します。

一方、レントゲンなど客観的な資料で怪我の原因を確認できれば、通常程度の怪我として扱い慰謝料を計算します。

(2)休業損害

#1: 自賠責基準

自賠責基準では、原則として休業日数×6100円(1日当たりの損害額)で求められます。

ただし、1日あたりの損害額が6100円を超える場合は、超えることを証明できれば1万9000円を限度に、実際の損害額を請求することが可能です。

#2:任意保険基準

任意保険基準では、実際に減少した分の収入をもとに休業損害を算出します。

弁護士基準と同様の考え方で計算されることが多いですが、計算方法は任意保険会社ごとに異なっており、内容も非公開とされています。

#3:弁護士基準

弁護士基準では、「1日当たりの基礎収入×休業日数」の式で金額を求めます。

ただし、給与所得者か・自営業者か等によって・家事従事者の三つのケースによって1日当たりの基礎収入の算出方法が異なります。

①給与所得者の場合

以下のどちらかの式によって休業損害の額を求めます。

  • 交通事故直近3か月の給与合計額 ÷ 90日 × 休業期間(土日祝を含みます。)
  • 交通事故直近3か月の給与合計額÷ 稼働日数 × 休業日数

②自営業者の場合

フリーランスなどの自営業者では、交通事故に遭った年の前年の所得額をもとに1日当たりの基礎収入額を算出し、以下の式によって休業損害額を求めます。

交通事故前年の所得額 ÷ 365日 × 休業日数

また、自営業者は前年の所得額をも証明するために、税務署の受付印が押された確定申告書の控えや課税証明書を提出する必要がある点に注意しましょう。

(3)後遺障害慰謝料

#1:自賠責基準

自賠責基準では、後遺障害等級に応じて受け取れる慰謝料の金額が異なります。

以下は後遺障害等級と、等級に応じた慰謝料の一覧です。

#2:任意保険基準

後遺障害慰謝料も、他の二つと同様にその基準は公開されていません。

慰謝料の額は自賠責基準よりもやや多い程度であると考えておきましょう。

#3: 弁護士基準

弁護士基準も認定された後遺障害の等級に応じて慰謝料の額が決定しますが、その金額は自賠責基準よりも高額です。

例えば、むちうちの場合は14級に認定されるケースが多いですが、自賠責基準を用いて算出した慰謝料は32万円であるのに対し、弁護士基準で算出すると110万円を受け取ることが可能です。

3.示談金を請求する際の3つの注意点

示談金を請求する際は、いくつか注意点があります。

ここでは、よく疑問点としてもあがる3点についてご説明します。

示談金を請求する際の参考にしていただけましたら幸いです。

(1)一見10対0でもそうではない場合がある

過失割合が10対0のケースは、例えば後方車が追突してきたり、被害者が歩行者や自転車である時です。

ただし、追突された車が不適切なハンドルやブレーキ操作による走行をしたり、歩行者が不用意な道路横断をした場合などは、被害者側にも過失が認められることがあります。

被害者側にも過失が認められれば、当然その分の損害額は減額されてしまいます。

自分には過失がないと思っていてもそうではないケースもありますので、示談金を請求する際は注意しましょう。

(2)10対0の事故では自身が加入する保険会社は示談交渉できない

過失割合が10対0の事故では、被害者が加入する保険会社は示談交渉を代わりに行うことができません。

加害者側の保険会社は、なるべく示談金を抑えようと低い金額を提示してくることがあります。

相手方の保険会社から提示された示談金の金額に納得がいかない時は、安易に応じないようにしましょう。

(3)過失割合で揉めたら弁護士に相談する

相手方と過失割合で揉めた場合は、保険会社に対して交渉する必要があります。

しかし、保険会社は過去のケースを例に加害者側に有利になるように話を進めることもありますので、被害者自身で交渉することは負担がかかります。

弁護士に依頼することで、適切な過失割合で示談交渉を進められますので、相手方と揉めてしまった場合は弁護士に相談しましょう。

まとめ

弁護士法人みずきでは、交通事故の被害者の方に特化して相談を承っています。

弁護士に相談することで、被害者に有利となる新たな証拠が見つかることもあります。

疑問に思うことや不安に感じることがあれば、どんなささいなことでもお話しください。

経験豊富な当事務所の弁護士が、相談者さまのお力になれるように親身に話を伺います。

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
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