後遺障害等級6級の主な症状と慰謝料相場を弁護士が解説
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「家族が交通事故に遭い後遺障害6級に認定されたけど、どういうことだろう」
「後遺障害6級って、どのくらい慰謝料がもらえるの」
突然の交通事故で重い障害を負ってしまうと、今後どうすれば良いのかわからず不安になる方もいらっしゃると思います。
今回は、後遺障害等級6級とはなにか、後遺障害等級6級の概要や認定要件、後遺障害等級6級に認定された場合に弁護士に相談するメリットついてご説明します。
後遺障害等級第6級には、視力や聴力の低下に、腕や足の欠損ないしは機能的な喪失など、日常生活に支障をきたす障害が含まれています。
本記事では、後遺障害等級第6級の症状がどんなものか、実際に認定を得るためにはどのような手順が必要なのかを説明しております。
この記事を読んで、交通事故に遭い後遺障害6級に認定された場合、今後のとるべき対応などに参考になれば幸いです。
1.後遺障害等級6級
(1)後遺障害等級6級とは
そもそも、後遺障害とは、交通事故が原因であると医学的に証明されるとともに、労働能力の低下(あるいは喪失)が認められ、さらに、その程度が自賠責保険の等級に該当するものをいいます。
そして、後遺障害認定を受けるためには、一定期間必要な治療を行ったにもかかわらず症状が残存し、これ以上治療をしても効果が認められず、病気や弊害が半永久的に続く状態(「症状固定」といいます)となっている必要があります。
申請を行うと、損害保険料率算出機構が、後遺障害診断書等の資料を確認・検討し、後遺障害等級の認定が行われます。
後遺障害等級は、後遺障害の慰謝料や賠償金の算定の目安となるもので、後遺障害の内容に応じて、重いものから順に1~14級が定められています。
後遺障害等級6級は、視覚や聴覚、その他の運動障害など、生活に密接に関連する障害が多く含まれます。
(2)後遺障害6級の認定条件
後遺障害6級に認定される主な条件(症状)は以下のようなものになります。
1号 両眼の視力が0.1以下になったもの
2号 咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの
3号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
4号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
5号 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6号 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
7号 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8号 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
(3)後遺障害等級6級となる各症状
#1:1号
交通事故によって、両眼の矯正視力が0.1を下回る状態になると、第6級1号が認定されます。
なお、矯正視力を基準としているため、眼鏡・コンタクトレンズ・眼内レンズを着用することで視力が0.1を超える場合は適用されません。
また、視力が片眼0.1以下でも他眼が0.1を超えていると、6級1号ではなく10級1号となります。
#2:2号
(ア)そしゃく機能の著しい障害
「そしゃく機能に著しい障害を残すもの」とは、粥食またはこれに準ずる程度の飲食物(おじや、やわらかいうどんなど)以外を食べられない状態をいいます。
また、「そしゃく」とは、食べ物を消化できる状態まで口の中で噛み潰す動作をいいます。
おじや、やわらかいうどん等であれば噛み潰す動作をほとんどしなくても消化することができるので、本人は食べることができます。
これら以外を食べることが難しくなった場合には、「そしゃく機能に著しい障害」があると疑ってもよいかもしれません。
(イ)言語機能の著しい障害
「言語の機能に著しい障害を残すもの」の主な症状は、以下の4種の語音のうち2種の発音ができないことです。
①口唇音(ま行・ぱ行・ば行・わ行の音、および「ふ」) ②歯絶音(な行・た行・だ行・ら行・さ行・ざ行の音、および「しゅ」「し」「じゅ」) ③口蓋音(か行・が行・や行の音、および「ひ」「にゅ」「ぎゅ」「ん」) ④喉頭音(は行の音) |
他方で、3種の発音ができたとしても、語音をつなげること(綴音)ができないため、言葉による意思疎通ができない場合も、同様に「言語機能に著しい障害を残すもの」とされます。
例えば、口唇音「ぼ」、口蓋音「く」、歯絶音「ら」、口蓋音「が」と3種の音を別々に発音はできるが、つなげて「ぼくらが」と発音できない状態のことです。
言語機能の著しい障害が残ると、発音や意思疎通が難しく、他者とのコミュニケーションが取りづらくなってしまうので、お仕事への影響が生じやすいです。
#3:3号
左右両方の耳が、耳元での大声でなければ聞こえない状態です。
世界保健機関(WHO)の定めた難聴レベルの分類によると、以下の表のようになります。
難聴レベル | 平均聴力レベル | 聞こえの目安 |
軽度 | 26~40dB | 普段の会話には殆ど支障が無いが、小さな声での会話または 騒々しいところでの会話で聞き取れないことがある。 |
中 等 度 | 41~55dB | 普段の会話でも比較的大きめの声でゆっくり話せば聞き取れるが、少し離れるとあまり聞き取れない。 |
やや高度 | 56~70dB | 耳もとで大きな声で話すと聞き取れる。 |
高度 | 71~90dB | 耳もとで大きな声でやっと聞き取れる程度。 |
重度 | 91dB以上 | 普段の会話はほとんど聞き取れない。 |
両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上80dB未満であり、かつ、最高明瞭度(聞き分けることのできる音の種類の割合)が30%以下のものがこれにあたります。
検査数値を「平均」純音聴力レベルと呼ぶのは、聴力検査は日を変えて3回行われ、2回目と3回目の数値の平均をもって最終数値とするからです。
なお、左右いずれかの耳が、耳元での大声でないと話を聴き取れない場合、10級6号に当たることになります。
#4:4号
片耳の聴力を全く失い、他耳が40㎝以上離れた相手の普通の大きさの声が聞こえない状態です。
「聴力を全く失い」とは、90dB以上の音でないと聞き取れない状態(平均純音聴力レベルが90dB以上)をいいます。
90dB以上は、パチンコの店内や騒々しい工場の音などに匹敵するかなりの音量になります。
つまり、日常の音がほぼ聞き取れない状態が「聴力を全く失」った状態といえるでしょう。
「他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない」とは、40㎝先の相手の普通の声が聴き取れない(70dB以上の音でないと聴き取れない)状態です。
これは、掃除機をかけた音やセミの鳴き声に匹敵します。
なお、聴力障害は他に、9級9号(片耳の聴力のみを全く失い、他耳は聞こえる状態)、7級3号(片耳の聴力を全く失い、他耳は1メートル以上の距離では会話ができない程度になっている状態)などがあります。
#5:5号
脊柱(背骨)に著しい変形または運動障害を残すことを症状とします。
「脊柱に著しい変形」を残すの要件は以下の2つです。
1. X線写真・CT画像・MRI画像のいずれかにより、脊椎の圧迫骨折や脱臼を確認できる。 |
2. 次のいずれかが生じている。 ①-12個以上の椎体(脊椎を形作る椎骨の支柱となる部位)のお腹側の高さ(前方椎体高)が著しく減ったため、脊椎が背中側に曲がって突き出る(後彎(こうわん))。 ②-21個以上の椎体の前方椎体高が減ったため後彎が生じ、しかもコブ法(脊柱のうち最も傾いている頭側と尾側の各椎骨の角度が交わる点の角度(側彎度)を測定する方法)により50度以上の側彎(脊柱が左右に曲がって突き出る)が確認できる。 |
「脊柱に著しい運動障害を残す」とは次のいずれかを原因として、頸椎・胸椎・腰椎の全てが硬直すること(理学療法士による徒手的な改善が困難なほどの関節可動域制限)をいいます。
- 頸椎・胸椎・腰椎の全てに圧迫骨折や脱臼が生じていることがX線などの画像で確認できるもの。
- 頸椎・胸椎・腰椎の全てに脊椎固定術(頸椎から腰椎に至る脊椎全体をボルトと棒などを使って固定する術)が施されているもの。
- 項背腰部軟部組織(うなじ・背中・腰にある筋肉・血管・腱・靱帯などの軟らかな組織)に明らかな器質的変化(臓器や組織そのものが変化すること)が認められるもの。
なお、脊柱の変形や運動障害については、検査時の様子により、脊柱に「著しい」とまではいえない変形が残れば11級7号、脊柱に「著しい」とまではいえない運動障害が残れば8級2号に認定される可能性があります。
#6:6号
片上肢の三大関節(肩・肘・手首)のうち二つの関節の用を廃するのが6号の症状です。
「関節の用を廃する」とは、次のいずれかをいいます。
- 関節が強直する。
- 関節の完全弛緩性麻痺(麻痺により関節を動かそうとしても全く動かすことができない)、または自分で動かせる関節可動域が健側の10%程度以下。
- 人工関節(関節全部を人工物に置き換えた関節)または人工骨頭関節(関節のうち骨頭部分だけを人工物に置き換えた関節)の可動域が健側の半分以下。
上肢の三大関節の障害については、1級4号、5級6号、8級6号等もあります。
正確に関節の機能障害を判断してもらう必要がありますので、専門医にきちんと診察・測定してもらうことが大切です。
#7:7号
7号の症状は、片下肢の三大関節(股・膝・足首)のうち2関節の用を廃することとされています。
「関節の用を廃する」の意味は上肢の場合と同じです。
片下肢の2関節がこの状態になると、立つ・歩く・座るなどの動作が難しくなり、生活に大きな支障が生じます。
片上肢の場合と同じく、片下肢の三大関節の用を廃する状態によっては、次のような他等級に該当する可能性も考えられます(5級7号、8級7号等)。
#8:8号
8号は、片手について、5指全部または親指を含む4指を失うことを症状とします。
「手指を失う」とは、親指の第1関節(指節間関節)から先、その他の指の第2関節(近位指節間関節)から先をそれぞれ失うことをいいます。
片手とはいえ、指がこうした状態になると、物を掴むことがとても難しくなり、生活に不便が生じます。
特に、自動車のハンドルをしっかり握れずに操作しづらくなることで、交通事故の再発につながるおそれがあるので注意が必要です。
なお、手指を失う後遺障害については、状態によって、他等級に該当する可能性もあります(3級5号、7級6号、8級3号、9級12号、11級8号、12級9号、13級7号、14級6号等)。
2.後遺障害6級を認定されると請求できる賠償金相場
(1)後遺障害慰謝料
交通事故で被害にあったことによる慰謝料の金額を算出する際、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの計算基準があります。
1つ目は、自賠責基準です。
これは自動車やバイクを運転する際に加入が義務付けられている自賠責保険が定めている基準です。
交通事故被害者のための最低限度の保障を目的とするものですから、金額は低廉となります。
2つ目は、任意保険基準で、任意保険会社が定めている基準です。
各社が任意に決めているため一概にはいえませんが、一般的には自賠責基準よりも少し高めか同程度であることが多いです。
3つ目は、弁護士基準(裁判基準)です。
弁護士基準(裁判基準)とは過去の裁判例をもとに算出された慰謝料額の目安のことで、ほとんどの場合、3つの中で慰謝料の額が最も高額となります。
各基準の金額を表にまとめると以下の通りです。
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
512万円 ※2020年3月31日までに発生した事故は498万円 |
約600万円 | 1180万円 |
弁護士基準(裁判基準)を用いると、自賠責・任意保険各規準の約2倍の慰謝料となることが分かります。
弁護士に依頼することで、この基準で算出した慰謝料を相手方に請求することができるので、慰謝料の大幅な増額が期待できます。
(2)後遺障害逸失利益
交通事故が原因で後遺症が残った場合、仕事に様々な支障が生じます。
その支障を労働能力の喪失としてとらえ、それにより被害者が将来得られたであろう収入が失われたことによる損害を後遺障害逸失利益といいます。
後遺障害逸失利益は、交通事故前の収入(基礎収入)に、後遺障害による労働への影響(労働能力喪失率)と、労働能力喪失期間に対応した係数(ライプニッツ係数)を乗じて求めることができます。
なぜ、係数を用いるかというと、将来発生する損害を先にもらうことになるので、その分の利息を控除して計算する必要があるからです。
これを中間利息の控除といいます。
後遺障害逸失利益 = ①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
①基礎収入とは、後遺障害がなければ得られたであろう収入のことです。
原則として、被害者が交通事故に遭う前の収入を基準としていますが、現実収入のない主婦(主夫)や学生でも認められることがほとんどであり、その場合には賃金センサス(*)に基づき平均賃金を基準とすることもあります。
*賃金センサスとは、労働者の賃金の実態について、雇用形態・就業形態・職種・性別・年齢・学歴・勤続年数・経験年数等別に明らかにするため、厚生労働省が毎年行う「賃金構造基本統計調査」による結果のことをいいます。
②労働能力喪失率とは、後遺障害により労働能力が喪失した割合のことです。
自動車損害賠償保障法(自賠法)は、労働能力が喪失した割合を後遺障害の等級に応じて数値化して一律に定め、以下のように表にしています。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率(%) |
第1級 | 100/100 |
第2級 | 100/100 |
第3級 | 100/100 |
第4級 | 92/100 |
第5級 | 79/100 |
第6級 | 67/100 |
第7級 | 56/100 |
第8級 | 45/100 |
第9級 | 35/100 |
第10級 | 27/100 |
第11級 | 20/100 |
第12級 | 14/100 |
第13級 | 9/100 |
第14級 | 5/100 |
原則として、労働能力喪失率表に基づいた割合で後遺障害逸失利益を計算することになります。
後遺障害6級の労働能力喪失率は67%です。事故前の3割強しか働けなくなることを意味します。
③労働能力喪失期間とは、後遺障害が残ったことにより事故前と同じ仕事ができなくなるであろう将来の期間のことです。
就労可能年数ともいわれます。
一般的には67歳までとされることが多いですが、平均余命を用いて算出する場合もありますので、ご自身がどのくらいの期間になるかについては弁護士に相談しましょう。
3.後遺障害6級で弁護士に相談するメリット
弁護士に相談するメリットについてご説明します。
(1)交渉や後遺障害申請等の手続を一任
弁護士に依頼した場合、相手方とのやり取りは全て弁護士が行うことになります。
また、後遺障害申請手続も、加害者側保険会社に任せることなく弁護士が被害者請求という手続きで進めることができます。
加害者や保険会社とやり取りをする必要はなくなりますし、ご自身で手続きを進めるよりも手間と精神的な負担を軽減して進めることができます。
後遺障害6級は、後遺障害等級の中でも重い障害に該当します。
ただでさえ、交通事故後の治療で負担が大きいにもかかわらず、1人だけで不慣れな手続きに対応していくことは精神的にも肉体的にもかなり負担が大きいと思います。
しかし、弁護士に依頼をすることで、それらの負担を軽減し、治療に専念することができます。
(2)慰謝料の増額
「2.後遺障害6級を認定されると請求できる賠償金」の部分において、後遺傷害慰謝料の相場をご紹介しましたが、弁護士が介入した場合、慰謝料額が増額することが期待でき、2倍など大幅に増額されることもあります。
これは、弁護士が被害者の代理人として相手保険会社と交渉する場合、交渉が決裂すると裁判に移行する可能性が高くなるため、裁判で判断される賠償額を考えて、相手方保険会社も弁護士基準で示談に応じるためです。
そのため、慰謝料の増額は弁護士に依頼する大きなメリットと言えるでしょう。
(3)適切な後遺障害等級獲得のし易さ
後遺障害等級の認定は、資料に基づく書面審査のため、提出書類によっては思うような認定結果が得られないケースが少なくありません。
後遺障害申請には、医学的な視点だけではなく交通事故の賠償に関する実務や法律的な視点での検討も必要になります。
そのため、病院と保険会社に必要書類の作成や準備などの申請手続きを任せきりにしてしまうと、申請内容に不備が生じる可能性がどうしても出てくるのです。
しかし、交通事故の案件を多く取り扱う弁護士であれば、後遺障害診断書の適切な書き方や、証拠として役立つ書類、受けておいた方がよい検査などを熟知しています。
弁護士に手続きを任せることによって、本来獲得できるはずの後遺障害等級が認定されないリスクを抑えることができるでしょう。
まとめ
本記事では、後遺障害等級6級の概要や認定条件のほか、弁護士に相談や依頼をするメリットなどをご紹介しました。
また、専門家である弁護士に相談することで、後遺障害等級6級認定で生じたご不安の解決や慰謝料額の相談ができるでしょう。
後遺障害等級6級について懸念点などがある方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
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